第70話 15歳の朝
収穫祭が終わり、フルールの街にも穏やかな日常が戻ってきた。
秋も深まり始めた、ある朝。
シャルロット薬舗では、いつものように皆で朝食を囲んでいた。
「そういえば、今日だったね」
ソレイユが笑顔でルークを見つめる。
ルークは少し照れくさそうに頷いた。
「うん」
「今日で十五歳になるんだ」
「おめでとう!」
リュンヌが真っ先に声を上げる。
「ありがとうございます」
ルークは嬉しそうに笑った。
エレナも穏やかに頷く。
「もう成人なのじゃ」
アマリリスは宙でくるりと一回転した。
「おめでとー!」
シャルロットも優しく微笑む。
「お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございます、お姉ちゃん」
ルークは少し表情を引き締めた。
「それと今日は、成人の儀があるんだ」
その言葉に、食卓が静かになる。
成人の儀。
十五歳を迎えた者が神殿で受ける、人生に一度だけの儀式。
神官が魔導具を用いて魔法適性や属性を測定し、その結果は神殿を通して正式に登録される。
測定が終われば成人を祝福する祈りが捧げられ、それをもって一人前の大人として認められる。
そのため人々にとっては、「魔法適性を調べてもらう日」という認識が強い儀式だった。
シャルロットは静かに頷いた。
「そうでしたね」
胸の奥に、十五歳の頃の記憶がよみがえる。
成人の儀。
魔法適性なし。
その一言で、伯爵家を追放されたあの日。
今でも忘れることのできない出来事だった。
けれど、後悔はしていない。
あの日があったからこそ、今の家族と出会えたのだから。
シャルロットは穏やかに微笑んだ。
「ルークなら大丈夫です」
「自信を持って行ってきてください」
ルークも安心したように笑う。
「うん」
「行ってくるよ」
ソレイユが元気よく手を振る。
「頑張ってください!」
リュンヌは力強く親指を立てる。
「応援してる!」
エレナも笑顔で頷いた。
「立派な魔法使いになってくるのじゃ」
アマリリスも両手をぶんぶん振る。
「いってらっしゃーい!」
皆に見送られながら、ルークは神殿へ向かって歩き出した。
十五歳。
人生の新たな一歩を踏み出す日。
そして、この成人の儀が、ルークの魔法使いとしての未来を大きく切り開く始まりとなるのだった。




