第67話 薬草料理大会
収穫祭二日目。
フルールの中央広場は、昨日にも増して大勢の人で賑わっていた。
広場の中央には大きな特設会場が設けられ、多くの料理人たちが腕を振るっている。
「さあ始まりました!」
司会者の声が広場中へ響き渡る。
「毎年恒例! 薬草料理大会です!」
大きな拍手が沸き起こる。
薬草料理大会。
フルール近郊で採れる薬草や山菜を使い、味だけでなく栄養や薬効も競い合う、収穫祭名物の催しである。
「面白そうですね」
シャルロットは興味深そうに会場を眺めた。
すると司会者が続ける。
「飛び入り参加も大歓迎!」
「料理に自信のある方は、ぜひご参加ください!」
その瞬間、観客席のあちこちから声が上がった。
「シャルロット先生!」
「出てください!」
「薬草なら先生の右に出る人はいないでしょう!」
「ぜひ見てみたい!」
一斉に集まる視線。
シャルロットは少し困ったように笑う。
「わ、私ですか?」
ソレイユは目を輝かせた。
「せっかくですし、参加しましょう!」
リュンヌも元気よく頷く。
「絶対優勝できるよ!」
ルークも笑顔を向けた。
「お姉ちゃんなら大丈夫」
エレナも穏やかに微笑む。
「薬草の知識なら、シャルロットに敵う者はおらぬのじゃ」
アマリリスは両手を上げた。
「応援するー!」
シャルロットは少し照れながら一礼する。
「それでは……参加させていただきます」
会場から大きな歓声が上がった。
「おおーっ!」
「シャルロット先生だ!」
制限時間は一時間。
参加者たちは思い思いの料理を作り始める。
シャルロットが選んだのは、薬草と旬の野菜、鶏肉を使った温かな薬膳スープだった。
薬草を刻みながら、その香りや効能を一つひとつ確かめる。
「この薬草は火を通し過ぎると薬効が落ちます」
「こちらは苦味が強いので、先に下茹でをしてから加えましょう」
その手つきは、まるで薬を調合しているかのように正確だった。
観客たちも思わず見入ってしまう。
「さすが薬師先生だな」
「薬草の扱いが全然違う」
やがて料理が完成する。
優しい香りが辺り一面に広がり、審査員たちは期待に胸を膨らませながら一口味わった。
「……これは!」
一人の審査員が目を見開く。
「薬草の香りが見事に調和している!」
「苦味はほとんど感じないのに、身体が温まる!」
「美味しいだけではない……」
「食べる薬と言っても過言ではありません!」
審査員全員が満場一致で高得点をつけた。
そして司会者が高らかに宣言する。
「今年の薬草料理大会、優勝は――」
「『シャルロット薬舗』、シャルロットさんです!」
会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「おめでとう!」
「さすがシャルロット先生!」
「薬師の知識は伊達じゃないな!」
ソレイユたちも嬉しそうに駆け寄ってくる。
「優勝です!」
「やりましたね!」
リュンヌは飛び跳ねて喜び、ルークも誇らしそうに笑った。
エレナは満足そうに頷く。
「やはりシャルロットはすごいのじゃ」
アマリリスは宙をくるくる回りながら叫んだ。
「シャルロットが一番ー!」
シャルロットは照れくさそうに微笑み、観客へ向かって一礼する。
「ありがとうございます」
「この料理は、私一人では作れませんでした」
「この街で育った薬草と、新鮮な食材があったからこその一皿です」
「フルールの恵みに、心から感謝いたします」
その言葉に、会場から再び大きな拍手が送られた。
収穫祭は、人々の笑顔と祝福に包まれながら、ますます賑わいを見せていく。
そして『シャルロット薬舗』の名は、薬だけでなく薬草料理でも街中へ広まり、人々からさらに愛される存在となっていくのだった。




