第64話 竜王の褒美
宴もたけなわ。
玉座の間には豪快な笑い声が響き渡り、葡萄酒の香りと焼きたての料理の匂いが広がっていた。
ヴォルカンは大樽の葡萄酒を豪快に飲み干すと、満足そうにシャルロットを見つめる。
「うむ!」
「ますます気に入ったぞ!」
シャルロットは少し照れくさそうに頭を下げた。
「ありがとうございます」
するとヴォルカンは勢いよく立ち上がる。
「よし!」
「シャルロット!」
「褒美に、ワシの自慢の息子をやろう!」
玉座の間が、一瞬静まり返った。
「……え?」
シャルロットは思わず固まる。
隣ではレオンが静かにため息をつき、慣れた様子で一歩前へ出た。
「申し訳ありません」
シャルロットへ軽く頭を下げる。
「父は昔からこうなのです」
「気に入った方を見ると、すぐ家族に迎えようとする癖がありまして」
ルベリアも困ったように微笑んだ。
「あなた」
「突然そのようなお話をされても、お二人が困ってしまいますわ」
エレナも苦笑しながら頷く。
「お父様は昔から変わらないのじゃ」
「気に入った相手には、すぐ『家族になれ』と言い出すのじゃ」
ヴォルカンは腕を組み、大きく頷く。
「うむ!」
「シャルロットなら大歓迎じゃ!」
「優しい!」
「強い!」
「飯もうまそうに食う!」
「こんな娘が家族になってくれたら、これ以上嬉しいことはないではないか!」
「ガッハッハッハ!」
レオンは苦笑しながら肩をすくめる。
「……このように、父は思い立ったら一直線なのです」
「どうかお気になさらないでください」
「私たちも、もう慣れておりますので」
その言葉に、シャルロットは思わず吹き出した。
「ふふっ……」
エレナもつられて笑う。
「本当に困ったお父様なのじゃ」
ルベリアも上品に口元を隠しながら微笑み、玉座の間は和やかな空気に包まれた。
ヴォルカンだけは豪快に笑いながら、大きく頷く。
「ガッハッハッハ!」
「笑うということは、賛成ということじゃな!」
「違います」
レオンが即座に言い切る。
あまりにも息の合った親子のやり取りに、玉座の間はさらに大きな笑い声に包まれた。
シャルロットも笑いながら、その光景を見つめる。
(本当に賑やかなご家族ですね……。)
百五十年前と何一つ変わらない。
豪快で、温かく、笑顔の絶えない竜王家。
その笑い声を聞きながら、シャルロットは懐かしさと安らぎに満ちた笑みを浮かべるのだった。




