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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第59話 帰らなきゃ!

 ある日の朝。


 シャルロット薬舗では、いつものように賑やかな朝食が始まっていた。


 焼きたてのパン。


 温かなスープ。


 ソレイユ特製のオムレツ。


「いただきます!」


 食卓には穏やかな笑い声が広がる。


 鉄ランクへ昇格して受けられる依頼が増えたこと。


 二日酔い薬が酒場で大評判になっていること。


 そんな他愛もない話で盛り上がる中、シャルロットはふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、エレナさん」


「こちらで一緒に暮らしていただいて、とても嬉しいのですが……」


「故郷の皆さんは、ご心配されていませんか?」


 その瞬間だった。


 エレナの手がぴたりと止まる。


「…………」


 静かな沈黙が流れた。


 皆が不思議そうにエレナを見つめる。


 やがてエレナは、ぎこちない笑みを浮かべた。


「あ……」


 さらに数秒の沈黙。


「…………」


「しておらんのじゃ」


 食卓が静まり返る。


「え?」


 ルークが思わず聞き返す。


「何を?」


 エレナは青ざめた顔で答えた。


「帰ることも……」


「手紙を送ることもじゃ……」


「えぇぇぇぇっ!?」


 全員の声が重なった。


 リュンヌは勢いよく立ち上がる。


「何も伝えてないの!?」


「……うむ」


 エレナはしょんぼりとうつむいた。


「シャルロットと出会った日に、そのまま一緒に暮らすことになってしまっての」


「毎日が楽しすぎて、気が付けばすっかり忘れておったのじゃ……」


 アマリリスは思わず額へ手を当てた。


「それは心配するわよ!」


 エレナは申し訳なさそうに肩を落とす。


「今頃、故郷では大騒ぎになっておるはずじゃ……」


「近衛隊総出で、人間の国中を捜しておるかもしれんのじゃ」


 ルークは苦笑した。


「それ、かなり大事件だよね……」


「うむ……」


 エレナは頭を抱える。


「最悪、お父様が怒って人間の国まで来てしまうかもしれんのじゃ」


 リュンヌが目を丸くした。


「そんなに怒るの?」


 エレナは真剣な表情で頷く。


「うむ」


「……一人で帰るのは、とても怖いのじゃ」


 その一言に、シャルロットは優しく微笑んだ。


「それでしたら、一緒に帰りましょう」


 エレナは勢いよく顔を上げる。


「え?」


「私もご一緒します」


「事情をきちんとお話しすれば、ご両親も安心してくださると思います」


 エレナの瞳が潤んだ。


「シャルロット……」


「本当によいのか?」


 シャルロットは優しく頷く。


「もちろんです」


「ご家族を安心させて差し上げましょう」


 エレナは何度も頷いた。


「ありがとうなのじゃ!」


 しかし、シャルロットは少し困ったように笑う。


「ただ、私が数日留守にすると、お店が……」


 するとルークが笑顔で手を挙げた。


「大丈夫だよ、姉さん」


「調合は僕がやるし、急ぎじゃない薬は帰ってきてからでも間に合うよ」


 ソレイユも胸に手を当てる。


「お店は僕に任せてください!」


「受付も、お会計も、一生懸命頑張ります!」


 リュンヌは力強く胸を叩いた。


「私は護衛と採集!」


「依頼もしっかりこなしてくるよ!」


 アマリリスはくるりと宙で一回転する。


「私は見張り役ね!」


「怪しい人が来たら、すぐに知らせるわ!」


 シャルロットは家族のような仲間たちを見渡し、自然と笑みがこぼれた。


「皆さん……」


 ルークは少し照れくさそうに笑う。


「家族なんだから、困った時はお互い様だよ」


 ソレイユも優しく頷いた。


「エレナさんのご家族を安心させてあげてください」


 リュンヌは満面の笑みで手を振る。


「お店のことは任せて!」


「いってらっしゃい!」


 アマリリスも笑顔で両手を振る。


「お土産話、楽しみにしてるわ!」


 エレナは仲間たちへ深々と頭を下げた。


「皆、本当にありがとうなのじゃ」


「必ず戻ってくるのじゃ!」


 シャルロットも一礼する。


「それでは、行ってきます」


「「「いってらっしゃい!」」」


 温かな笑顔に見送られながら、シャルロットとエレナは旅支度を始めた。


 目的地は、西方にそびえる巨大火山――マグナ火山を擁するフラム=ヴェル竜王国。


 そこで二人を待っているのは、娘の帰りを待ち続けた家族との、久しぶりの再会だった。

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