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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第58話 二日酔い薬

 ロシェから冒険者の流儀を教わってから数日後。


 シャルロットは薬舗の調合室で、一冊のノートを開いていた。


 そこには酒場で耳にした冒険者たちの声が細かく書き留められている。


『翌朝まで頭が痛ぇ』


『気持ち悪くて依頼どころじゃねぇ』


『酒は好きなんだが、二日酔いだけは勘弁してほしい』


『もっと効く薬があれば助かる』


 シャルロットは静かに頷いた。


「皆さん、本当に困っていたんですね」


 ソレイユがノートを覗き込む。


「シャルロットさん、何を作るんですか?」


「二日酔い薬です」


 シャルロットは穏やかに微笑んだ。


「皆さんのお話を聞いていたら、もっと良い薬が作れる気がしたんです」


 ルークも興味深そうに近づく。


「改良するんだね」


「はい」


「薬草の配合を一から見直してみます」


 エレナも頷いた。


「困っておる者の声を、そのまま薬へ生かすのじゃな」


「それが薬師ですから」


 その日から試作が始まった。


 薬草を刻み。


 煎じ。


 配合を変え。


 味や香りも何度も調整する。


「うーん……」


「もう少し苦味を抑えましょう」


 試作品を口にしたソレイユが顔をしかめた。


「に、苦いです……」


 シャルロットは苦笑する。


「では、蜂蜜を少しだけ加えてみましょう」


 試作を重ねること十数回。


 ようやくシャルロットは満足そうに頷いた。


「できました」


「新しい二日酔い薬です」


 翌朝。


 冒険者ギルドを訪れると、ロシェが頭を押さえながら歩いてきた。


「うぅ……」


「昨日は飲み過ぎた……」


 いつもの豪快さは影を潜め、足取りも重い。


 その姿にシャルロットは思わず微笑んだ。


「ロシェさん」


「ちょうど良かったです」


「新しい二日酔い薬が完成したので、試していただけませんか?」


 ロシェは苦笑した。


「なんだその絶妙なタイミングは……」


 周囲の冒険者たちが吹き出す。


「ははは!」


「ロシェ、実験台だ!」


「ちょうどいいじゃねぇか!」


 ロシェは肩をすくめ、薬瓶を受け取った。


「まぁいい」


「銀ランク冒険者として協力してやる」


 そう言って一気に飲み干す。


 しばらくすると――。


「……お?」


 ロシェは目を見開いた。


「頭が軽い」


「気持ち悪さも消えたぞ!」


 何度も首を回し、身体を動かす。


「おい!」


「本当に効いてる!」


 周囲の冒険者たちが一斉に集まってきた。


「俺にも売ってくれ!」


「昨日飲み過ぎたんだ!」


「こっちにも一本!」


 その日だけで、用意していた薬はすべて売り切れた。


 翌日も。


 その翌日も。


 評判は酒場から酒場へ、冒険者から冒険者へと広がっていく。


「二日酔い薬ならシャルロット薬舗」


 いつしか、それがフルールの冒険者たちの合言葉になっていた。


 依頼前に一本。


 宴会前に一本。


 常備薬としてまとめ買いする者まで現れる。


 ソレイユは空になった棚を見て嬉しそうに笑った。


「また売り切れです!」


 リュンヌも目を丸くする。


「すごい人気!」


「こんなに売れるなんて!」


 ロシェは豪快に笑った。


「はっはっは!」


「酒場で生まれた薬だからな!」


「冒険者が本当に欲しかった薬だ!」


 シャルロットは少し照れながら微笑む。


「皆さんのお話を聞かせていただいたおかげです」


 ロシェは満足そうに頷いた。


「覚えておけ」


「良い薬師ってのは、机の上だけで薬を作る奴じゃねぇ」


「困ってる人の声を聞いて、その声に応える奴が本物だ」


 シャルロットは静かに頷く。


「はい」


 その時、アマリリスが嬉しそうに手を挙げた。


「これでロシェさん!」


「安心していっぱい飲めるね!」


 一瞬、酒場が静まり返る。


 ロシェは慌てて両手を振った。


「違う違う!」


「そうじゃねぇ!」


「飲み過ぎねぇのが一番だからな!」


 酒場中から大きな笑い声が上がる。


「はっはっは!」


「その通り!」


「薬を過信するなよ!」


 アマリリスは首を傾げた。


「あれ?」


「そうなの?」


 エレナはくすりと笑う。


「何事もほどほどが一番じゃ」


「酒も薬も、上手に付き合うことが大切なのじゃ」


 リュンヌも笑顔で頷く。


「うん!」


「何でもやり過ぎは良くないもんね!」


 シャルロットたちは顔を見合わせ、思わず笑い合った。


 薬は困っている人を助けるもの。


 だからこそ、その薬が必要にならない毎日こそが、一番幸せなのだ。


 シャルロットは改めて、薬師として大切なその想いを胸に刻むのだった。

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