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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第51話 鉄ランク昇格試験

 鉄ランク昇格試験当日。


 まだ朝靄の残る早朝。


 フルール冒険者ギルドの前には、多くの受験者たちが集まっていた。


 青銅ランクから鉄ランクへの昇格を目指す冒険者たち。


 誰もが緊張した面持ちで、出発の時を待っている。


 シャルロットたちも装備を整え、受付前へ並んでいた。


「いよいよですね」


 シャルロットが静かに呟く。


 その隣で、リュンヌは優しく微笑んだ。


「大丈夫」


「いつも通りやればいいよ」


 シャルロットは小さく頷く。


「はい」


 リュンヌは四人を順番に見渡した。


「私はここまでしか一緒に行けないけど、みんななら絶対合格できる」


 ルークは笑顔で頷く。


「行ってくるね」


 ソレイユは元気よく拳を握った。


「絶対合格してくる!」


 エレナも力強く頷く。


「良い報告を持って帰るのじゃ!」


 その時だった。


「もちろん、わたしも一緒だからね!」


 元気いっぱいの声とともに、アマリリスがシャルロットの隣へふわりと現れた。


「壁も岩も自由に通れるんだから!」


「危ないことがあったら、すぐ知らせるね!」


 シャルロットは優しく微笑む。


「ありがとうございます」


「頼りにしています」


「えへへ、任せて!」


 アマリリスは胸を張った。


 リュンヌはそんな仲間たちを見渡し、最後に力強く頷く。


「焦らないこと」


「仲間を信じること」


「それだけ忘れなければ大丈夫」


「行ってらっしゃい!」


「行ってきます!」


 四人とアマリリスは元気よく返事をした。


 その時。


 ギルドマスター・オーギュストが受験者たちの前へ姿を現した。


 ざわついていた広場が静まり返る。


「諸君」


「本日は鉄ランク昇格試験へ参加してくれてありがとう」


 低く響く声が広場全体へ渡る。


「試験会場は、この先にある巨大ダンジョンだ」


「ダンジョン内部で指定された課題を達成してもらう」


 受験者たちは真剣な表情で耳を傾ける。


「昇格試験は、強さだけを見るものではない」


「仲間との連携」


「状況判断」


「危険への対応」


「そして、生きて帰る力」


「そのすべてを評価する」


 オーギュストは受験者たちをゆっくり見渡した。


「無理はするな」


「危険と判断したら撤退も立派な選択だ」


「命を落としてまで合格する試験ではない」


「健闘を祈る」


「出発!」


 受験者たちは一斉に歩き始めた。


 街道を進むこと約一時間。


 やがて巨大な岩山の麓へ辿り着く。


 そこには、大きく口を開けた巨大な洞窟が広がっていた。


 ダンジョン。


 魔素が長い年月をかけて集まり、大地そのものが変質して生まれた巨大迷宮である。


 内部は外界よりも魔素濃度が高く、多くの魔物が棲みつく危険地帯として知られていた。


 一方で、希少な薬草や魔鉱石などの貴重な資源も眠っており、多くの冒険者が命を懸けて挑む場所でもある。


 今日の鉄ランク昇格試験は、この巨大ダンジョンを舞台に行われるのだった。


 シャルロットは洞窟を見上げ、小さく息を呑む。


「これが……ダンジョン」


 洞窟の奥から吹き抜ける冷たい風が頬を撫でる。


 その奥には、底知れぬ静寂が広がっていた。


「じゃあ、ちょっと先を見てくるね!」


 アマリリスは笑顔で手を振ると、岩壁をすり抜けながらダンジョンの奥へ飛んでいく。


「無理はしないでくださいね」


「うん! すぐ戻る!」


 その姿を見送り、シャルロットたちも慎重にダンジョンへ足を踏み入れた。


 薄暗い通路。


 入り組んだ分岐。


 湿った岩肌。


 最初の課題となるゴブリンの群れも、これまで培った連携で危なげなく討伐する。


 リュンヌから教わった陣形。


 何度も繰り返した訓練。


 そのすべてが確かな力となっていた。


 休憩中。


 ソレイユが嬉しそうに笑う。


「私たち、前よりずっと強くなったね!」


 ルークも頷いた。


「うん」


「ちゃんと連携できてる」


 エレナも胸を張る。


「この調子なら合格なのじゃ!」


 シャルロットは仲間たちを見渡し、穏やかに微笑んだ。


「皆さんのおかげです」


「最後まで気を抜かずに頑張りましょう」


「はい!」


 元気な返事がダンジョンへ響く。


 試験は順調だった。


 すべてが予定通りに進んでいるように思えた。


 ――その頃。


 誰よりも先へ偵察に向かっていたアマリリスは、ダンジョン最深部近くで思わず足を止めた。


「……え?」


 ゾクリ、と全身を悪寒が駆け抜ける。


 幽霊である自分にさえ圧し掛かる、凄まじい魔力。


 空気が震え、岩壁が低く唸り始める。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


 地の底から響くような重い地鳴りが、静かな迷宮を揺らした。


「な、何……?」


 暗闇の奥から押し寄せてくるのは、息が詰まるほど濃密な魔力だけ。


 姿は見えない。


 それなのに、本能だけが警鐘を鳴らしていた。


「う、うそ……」


「こんなの……初めて……」


 ズシン――。


 再び大地が揺れる。


 まるで巨大な何かが、一歩踏み出したかのようだった。


 ダンジョン全体が軋み、天井から小さな石がぱらぱらと落ちてくる。


 何かが目覚めた。


 それだけは、間違いなかった。


 決して目覚めてはならない存在が――。


「シャルロットちゃん!」


 アマリリスは青ざめた表情のまま、全速力で仲間たちのもとへ飛び出した。

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