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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第48話 鉄ランクの先輩

 初めてのパーティー依頼を終えた翌日。


 この日は薬舗の営業を午前中で切り上げ、午後から訓練を行うことになっていた。


 シャルロットたちはフルール郊外の草原へ集まる。


 青空の下、心地よい風が草原を吹き抜けていた。


 リュンヌは愛用の戦槌を肩に担ぎ、皆を振り返る。


「今日は依頼じゃないよ」


「鉄ランク冒険者の私が、冒険者としての基本を教えてあげる!」


「よろしくお願いします!」


 シャルロットたちは揃って頭を下げた。


 リュンヌは一本の枝を拾い、地面へ簡単な陣形を書いていく。


「まず、一番前に立つのは私」


「前衛は敵の攻撃を受け止めて、みんなを守る役目だからね」


 続いて後方を指差す。


「ルークとエレナは後衛」


「魔法は強いけど、近付かれると弱いの」


「だから絶対に前へ出過ぎちゃ駄目」


「はい!」


 二人は真剣な表情で頷いた。


 さらに中央へ丸を描く。


「シャルロットはここ」


「回復役はパーティーの要」


「誰が怪我をしても、すぐ動ける場所にいること」


「分かりました」


 シャルロットは静かに頷いた。


 リュンヌはソレイユを見る。


「ソレイユは荷物と回復薬の管理」


「それから仲間全員を見る役目だよ」


「必要な物をすぐ渡せるように準備してね」


「任せて!」


 ソレイユは元気よく答えた。


 そして最後に、ふわりと宙に浮かぶアマリリスへ視線を向ける。


「アマリリスは索敵担当!」


「幽霊だから高いところから周りを見られるし、壁や木もすり抜けられる」


「それって私たちには真似できない、すごい才能なんだから」


 アマリリスは少し驚いたように目を瞬かせた。


「私も……役に立てるの?」


 シャルロットは優しく微笑む。


「もちろんです」


「昨日もアマリリスのおかげで、ゴブリンを先に見つけられました」


「私たちにとって、とても大切な仲間です」


 アマリリスは胸へ手を当て、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう」


「みんなが危険な目に遭わないよう、しっかり見張るわ」


 エレナも笑顔で親指を立てる。


「頼りにしてるぞ!」


 役割が決まり、訓練が始まった。


 リュンヌは木剣を構える。


「さあ、かかっておいで!」


 するとエレナが魔力を集め始めた。


「まずは我の火球で――」


「待った待った!」


 リュンヌが慌てて止める。


「訓練で本物の魔法は禁止!」


「草原が燃えちゃうよ!」


「あっ……」


 エレナは照れ笑いを浮かべながら魔力を引っ込めた。


「危うく丸焼きにするところだったのじゃ」


 皆から笑いがこぼれる。


 代わりに木の枝を手に取り、模擬戦が始まった。


「ルーク!」


「もっと距離を取って!」


「後衛は敵との間合いが命だから!」


「はい!」


「シャルロット!」


「怪我人ばかり見ちゃ駄目!」


「周りもしっかり見て!」


「回復役が不意打ちされたら大変だからね!」


「はい!」


「ソレイユ!」


「荷物は取り出しやすい場所へ!」


「必要になってから探してたら遅いよ!」


「なるほど!」


 その頃、上空ではアマリリスが草原をゆっくり旋回していた。


「リュンヌ!」


「左からウサギが一匹!」


「……あっ、違った。ただのウサギだったわ」


 皆が思わず吹き出す。


「アマリリス、それも立派な訓練だよ!」


 リュンヌは笑いながら答えた。


「敵と動物を見分けるのも索敵の仕事だからね!」


「う、うん!」


 アマリリスも少し照れながら頷いた。


 何度も訓練を繰り返すうちに、最初はぎこちなかった連携も少しずつ形になっていく。


 休憩中。


 ルークが水筒を片手に尋ねた。


「リュンヌさんは、どうしてそんなに詳しいの?」


 リュンヌは少し照れくさそうに笑う。


「私も昔、鉄ランクの先輩たちに教えてもらったから」


「最初は失敗ばっかりだったよ」


「仲間を危ない目に遭わせたこともあるし」


 そう言って空を見上げる。


「でも、その時に教わったんだ」


「冒険者は、一人で強くなるものじゃない」


「仲間を信じて、生きて帰ること」


「それが一番大事なんだって」


 その言葉に、シャルロットは静かに頷いた。


 前世では、一人で世界を救おうとしていた。


 けれど今は違う。


 支え合える仲間がいる。


 守りたい家族がいる。


 それだけで、心はこんなにも強くなれる。


 夕方。


 訓練を終えたリュンヌは、皆を見渡した。


「最後に、一つだけ」


「これから先、ダンジョンへ行くこともあると思う」


 全員の表情が引き締まる。


「その時、一番大事なのは強さじゃない」


「危ないと思ったら逃げること」


「依頼はまた受けられる」


「でも命は一つしかない」


 シャルロットは静かに頷いた。


「生きて帰ることが、一番大切……ですね」


 リュンヌは満足そうに笑う。


「その通り!」


「それが冒険者の一番大事な心得!」


 夕焼けに染まる草原。


 笑い声を響かせながら歩く六人の姿があった。


 昨日より少しだけ強く。


 昨日より少しだけ息の合った仲間になれた。


 その積み重ねは、やがて鉄ランク昇格試験へ挑む大きな自信となり、『シャルロット薬舗』というパーティーをさらに成長させていくのだった。

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