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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第43話 最終公判

 数日後。


 フルール地方裁判所。


 シャルロット薬舗事件、最終公判の日。


 法廷には朝早くから多くの傍聴人が詰めかけていた。


 街の人々。


 冒険者たち。


 薬師たち。


 そして、辺境伯エリアスの姿もあった。


 静まり返る法廷。


 やがて裁判長が木槌を打ち鳴らす。


「これより、最終公判を開廷します」


 担当騎士が静かに立ち上がった。


「新たな証拠を提出いたします」


 法廷へ運び込まれたのは、中央医療院地下文書庫から押収された証拠だった。


 本物の納品台帳。


 本物の受領書。


 本物の処方記録。


 本物の廃棄記録。


 担当騎士は一冊ずつ示しながら説明する。


「地下文書庫より押収した帳簿と、第一公判で提出された帳簿を照合しました」


「納品先、数量、日付、そのすべてが一致しません」


「第一公判で提出された証拠は、偽造されたものです」


 法廷がどよめく。


 続いて、辺境伯エリアスが証言台へ立った。


「証言をお願いします」


 裁判長の声に、エリアスは静かに頷く。


「提出された契約記録は偽造です」


「我が家はシャルロット薬舗と一度も取引しておりません」


「契約台帳、受領記録、商業ギルドの取引記録、すべて確認済みです」


「間違いありません」


 証言が終わると、法廷はさらに騒然となった。


 テオドールは青ざめた顔で立ち上がる。


「ち、違う!」


「何かの間違いだ!」


「私は知らん!」


「誰かが勝手にやったことだ!」


 ルシアンも慌てて続く。


「そ、その通りです!」


「あの帳簿は我々のものではありません!」


「誰かが我々を陥れるために持ち込んだのです!」


 担当騎士は冷静に告げた。


「地下文書庫の鍵を管理していたのは、お二人だけです」


 二人は言葉を失った。


 しかし次の瞬間。


「貴様だろう!」


 テオドールがルシアンを指差す。


「帳簿を隠したのは貴様だ!」


「違う!」


 ルシアンも怒鳴り返した。


「全部お前の指示だ!」


「私は従っただけだ!」


「嘘をつけ!」


「貴様が勝手にやったことだ!」


「私は被害者だ!」


 醜く責任を押し付け合う二人。


 裁判長は何度も木槌を打ち鳴らした。


「静粛に!」


「静粛に!」


 それでも二人は止まらない。


「私は悪くない!」


「全部こいつがやった!」


「私は何も知らん!」


 追い詰められたテオドールは、震える指でジュリアンを指差した。


「そ、そうだ!」


「すべてジュリアンが独断でやったことだ!」


「私は何も知らん!」


 ルシアンも必死に頷く。


「その通りです!」


「我々もジュリアンに騙されていたのです!」


「あの男が勝手に証拠を改ざんしたのです!」


 法廷中の視線が、一斉にジュリアンへ向けられた。


 ジュリアンは俯いたまま、小刻みに肩を震わせている。


 その時だった。


 静かに椅子が引かれる音が響いた。


 シャルロットがゆっくりと立ち上がる。


「違います」


 静かな声だった。


 しかし、その一言だけで法廷は水を打ったように静まり返る。


 シャルロットは真っ直ぐジュリアンを見つめた。


「ジュリアン先生は悪い人ではありません」


「先生は、誰かを守るために苦しんでいたんです」


「本当は、真実を話したかったはずです」


「第一公判で先生のお顔を見た時から、私はそう思っていました」


「だから……もう、ご自分を責めないでください」


 ジュリアンの肩が大きく震えた。


 誰にも気付かれていないと思っていた。


 誰にも理解されないと思っていた。


 それなのに――。


 自分が傷つけたはずの少女だけが、自分を信じてくれていた。


 堰を切ったように涙が溢れ出す。


「もう……」


 震える唇が動く。


「もう……やめてください!」


 その叫びは、法廷中へ響き渡った。


「第一公判で私は偽証しました!」


「提出された証拠は、テオドール院長とルシアン調薬院長が改ざんしたものです!」


「私は脅されていました!」


「三年前の診療ミスを公表すると、恩師も、母も、妹も人生を終わらせると脅されたのです!」


 法廷内は騒然となる。


 ジュリアンは涙を流しながら、事件のすべてを語った。


 証拠改ざん。


 偽造された帳簿。


 偽証を強要されたこと。


 そして、自分が沈黙を選んでしまった理由を。


 誰一人、法廷で言葉を発する者はいなかった。


 やがて証言を終えたジュリアンは、その場へ崩れ落ちるように膝をつき、声を上げて泣いた。


 こうして長く続いた冤罪事件は、ついに真実が白日の下に晒された。


 一人の少女の優しさが、一人の青年の勇気を呼び覚ました瞬間だった。

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