第38話 面会
第一公判から二日後。
フルール拘置所。
石造りの面会室には、重苦しい空気が漂っていた。
厚い鉄格子を挟み、シャルロットとソレイユたちが向かい合っている。
その少し後ろでは、アマリリスも静かに様子を見守っていた。
幽霊である彼女は誰にも咎められることなく拘置所へ入ることができた。
しかし、看守たちに姿を見せれば大騒ぎになってしまう。
だから壁際で、ただ黙って皆を見つめることしかできなかった。
ソレイユは俯いたまま、小さく拳を握り締めていた。
「……ごめんなさい」
震える声が漏れる。
「私、何もできなかった」
その一言で張り詰めていた糸が切れた。
ソレイユの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
「お姉ちゃんを助けられなかった……」
シャルロットは優しく微笑んだ。
「ソレイユ」
「謝ることなんてないわ」
「あなたは十分頑張ってくれているもの」
その優しい言葉に、ソレイユはさらに涙を溢れさせた。
ルークは唇を強く噛み締める。
「姉さん」
「僕がもっと早く証拠の矛盾に気付いていれば……」
「こんなことにはならなかった」
悔しさで拳が震えていた。
シャルロットは静かに首を横へ振る。
「ルークのせいじゃないわ」
「自分を責めないで」
リュンヌも静かに俯いていた。
「私は強いはずなのに」
「結局、何も守れなかった」
その言葉には、自分への悔しさが滲んでいた。
シャルロットは優しく笑う。
「リュンヌ」
「私を守る方法は、剣だけじゃないのよ」
その言葉に、リュンヌは小さく目を見開いた。
その時だった。
「我は納得できぬ!」
面会室へエレナの声が響く。
怒りに満ちた瞳で鉄格子を見つめる。
「シャルロットは何も悪くない!」
「あやつらの言うことを信じるなど、おかしいではないか!」
「我が中央医療院へ乗り込み、院長もあの薬師たちもまとめて叩きのめしてやる!」
今にも飛び出していきそうな勢いだった。
リュンヌは苦笑しながらエレナの肩へ手を置く。
「落ち着いて」
「落ち着いてなどおれぬ!」
「シャルロットがこんな所にいるなど、絶対に間違っておる!」
怒りに震えるエレナを見つめながら、壁際にいたアマリリスも悔しそうに拳を握り締める。
(私も……)
(シャルロットを助けたい……)
だが、今は何もできない。
その無力さだけが胸を締め付けた。
……。
面会終了を告げる鐘が鳴る。
看守が静かに声を掛けた。
「時間です」
ソレイユたちは何度も振り返りながら面会室を後にした。
アマリリスも最後にもう一度だけシャルロットを見つめ、小さく拳を握る。
(絶対に助ける)
(私にも、きっとできることがある)
その決意が、やがて事件の真相を暴く大きな一歩となることを、この時はまだ誰も知らなかった。




