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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第29話 シャルロット薬舗

 新しい屋敷での暮らしが始まってから数日。


 掃除や修繕も終わり、一同の生活はようやく落ち着きを見せていた。


 そんなある朝。


 シャルロットは皆を居間へ集め、穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「この屋敷で、薬舗を開こうと思います」


 その一言に、ソレイユの瞳がぱっと輝く。


「薬屋さんになるの?」


「はい」


 シャルロットは優しく頷いた。


「病気や怪我で困っている方々の力になりたいのです」


「私には、そのために学んできた知識がありますから」


 ルークは嬉しそうに微笑む。


「僕も手伝うよ」


「薬草の管理や在庫なら任せて」


 リュンヌも元気よく手を挙げた。


「荷物運びなら得意!」


「重い薬草も全部運ぶよ!」


 エレナも静かに頷く。


「我は店番を務めよう」


「困っている者がおれば、力になればよい」


 アマリリスも元気いっぱいに両手を挙げた。


「私はお掃除担当!」


「毎日ぴかぴかにするね!」


 実体を持たない幽霊ではあるが、生前の未練から生まれた”念”の力によって物を動かすことができる。


 掃除や片付けくらいなら、お手のものだった。


 その一言に、一同は思わず笑みをこぼした。


 こうして屋敷は、少しずつ薬舗へと姿を変えていく。


 居間には薬棚が並び、大きな調合台が置かれる。


 壁には乾燥させた薬草が整然と吊るされ、棚には大小さまざまな薬瓶が並んだ。


 そして入口には、新しい木製の看板が掲げられる。


 ――『シャルロット薬舗』


 それは、この家族が力を合わせて築く、新しい未来の始まりだった。


 そして迎えた開店初日。


 ソレイユは少し緊張した面持ちで入口に立つ。


「い、いらっしゃいませ!」


 ぎこちない挨拶だったが、その一生懸命な姿に、訪れた客も自然と笑顔になる。


 最初の患者は、一人の老婦人だった。


「腰が痛くてねぇ……」


 シャルロットは椅子を勧め、穏やかに微笑む。


「どうぞ、お掛けください」


「いつ頃から痛みますか?」


「朝起きた時が一番つらくてねぇ」


 生活習慣。


 食事。


 普段の仕事。


 身体の状態。


 シャルロットは一つひとつ丁寧に話を聞き、原因を探っていく。


 やがて薬棚から薬草を取り出し、その場で調合を始めた。


 無駄のない、美しい手つき。


 ほどなくして、一つの薬が出来上がる。


「こちらを毎日服用してください」


「それと、お身体を冷やさないよう気を付けてくださいね」


 老婦人は何度も頭を下げた。


「ありがとう」


「ここまで親身になって話を聞いてくれる薬師さんは初めてだよ」


 その評判は口コミで瞬く間に街中へ広がっていった。


「よく効く薬があるらしい」


「しかも値段が良心的なんだ」


「先生が最後まで話を聞いてくれるそうだよ」


 翌日には、店の前へ小さな行列ができるようになっていた。


 ソレイユは受付で患者を笑顔で迎え、


 ルークは薬草や薬の在庫を管理する。


 リュンヌは薬草や荷物の運搬を引き受け、


 エレナは店番をしながら困っている客へさりげなく手を貸す。


 そしてアマリリスは、誰にも見えないまま店内を隅々まで掃除し、皆を支えていた。


 それぞれが自分にできる役目を果たし、この薬舗は家族みんなで守る場所になっていく。


 夕方。


 営業を終えた店内には、心地よい疲労感が漂っていた。


「今日もたくさんのお客さんが来てくれたね!」


 ソレイユが嬉しそうに笑う。


 リュンヌも大きく伸びをした。


「忙しかったけど、楽しかった!」


 ルークも満足そうに頷く。


「みんなでやると、あっという間だったね」


 エレナも穏やかに微笑む。


「良い一日じゃった」


 シャルロットは入口に掲げられた看板を見つめ、小さく微笑んだ。


「これからも、この場所で一人でも多くの人を笑顔にしていきましょう」


「「「はい!」」」


 家族の声が一つになる。


 こうして『シャルロット薬舗』は産声を上げた。


 それはやがて辺境都市フルールの人々に愛され、多くの命と笑顔を支える薬舗となっていく。


 その輝かしい第一歩が、静かに刻まれたのだった。

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