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第18話 冒険者ギルド

 フルールの街へ辿り着いてから数日。


 シャルロットは宿の窓から差し込む朝日を浴びながら、静かに身支度を整えていた。


 追放されたあの日は、明日さえ見えなかった。


 けれど今は違う。


 前世の記憶を取り戻し、自分自身のために生きると決めた。


 だからこそ、今日という日を大切にしたい。


「まずは、仕事を見つけましょう」


 小さく微笑み、宿を後にする。


 朝のフルールは活気に満ちていた。


 市場には採れたての野菜や果物が並び、焼きたてのパンの香りが街中へ広がっている。


 商人たちの威勢の良い声。


 荷馬車の車輪が石畳を転がる音。


 人々の笑い声。


 その穏やかな日常を眺めながら、シャルロットは自然と笑みを浮かべた。


「素敵な街ですね」


 前世でも、この街は大好きだった。


 そして今世でも、その想いは変わらない。


 やがて一軒の大きな建物が見えてくる。


 入口には剣と盾を描いた木製の看板。


 ――冒険者ギルド。


 魔物討伐や薬草採集、護衛、運搬など、さまざまな依頼を仲介する冒険者たちの拠点である。


 シャルロットは意を決して扉を開いた。


 途端に賑やかな空気が押し寄せる。


 依頼掲示板の前で話し合う冒険者たち。


 酒場では依頼帰りの戦士たちが豪快に笑い合っている。


 受付では職員たちが慌ただしく手続きを進めていた。


 活気に満ちたその光景に、シャルロットは少しだけ目を丸くする。


「思っていたより賑やかなんですね」


 深呼吸を一つすると、受付へ歩み寄った。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付の女性が優しく微笑む。


「冒険者登録をお願いしたいのですが」


「かしこまりました。それでは、こちらの用紙へお名前とご年齢をご記入ください」


 差し出された書類を受け取り、シャルロットは丁寧にペンを走らせる。


 ――シャルロット・メシャント。


 その名前を書き終えた瞬間、胸の奥に小さな温もりが広がった。


 伯爵令嬢でもない。


 大聖女でもない。


 これは、一人の少女として歩み始める新しい人生。


 自分自身の意思で選び、自分自身の力で切り開いていく未来だった。


 職員は書類へ目を通すと、笑顔で頷いた。


「登録は完了しました。本日よりあなたも冒険者です」


 そう言って、小さな銅製の冒険者証を差し出す。


「シャルロットさんの現在のランクは、青銅ブロンズランクになります」


「依頼を達成して実績を積むことで、アイアンランク、カッパーランク、シルバーランクへと昇格していきます。昇格にはギルドの査定や試験が必要になりますので、頑張ってくださいね」


「はい。ありがとうございます」


 シャルロットは両手で冒険者証を大切に受け取った。


 決して豪華なものではない。


 けれど、それは誰かから与えられた地位ではなく、自らの意思で手にした最初の証だった。


 シャルロットは胸元へ冒険者証をしまい、小さく微笑む。


「よろしくお願いします」


 こうして、一人の青銅ブロンズランク冒険者が誕生した。


 第二の人生は、まだ始まったばかり。


 その小さな一歩が、やがて多くの仲間と出会い、新たな家族を築いていくことになる。


 この時のシャルロットは、まだそのことを知らなかった。

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