表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
103/109

第101話 旅立ち

 数日後。


 シャルロットとエレナは再び王都ルミエールを訪れていた。


 ルミエール大聖堂。


 応接室にはサンセリテとソフィアの姿がある。


 誰もが理解していた。


 今度の旅は、百五十年前から続く使命に終止符を打つためのものだと。


 サンセリテは静かに口を開く。


「封印の綻びは日に日に大きくなっています」


「もはや猶予はありません」


 シャルロットは静かに頷いた。


「分かっています」


「行きましょう」


 ソフィアも力強く頷く。


「私も同行します」


「聖女として、この使命を見届けたいのです」


 しかし次の瞬間、サンセリテはふと困ったように眉を下げた。


「ですが……」


「旧魔王城までは馬車でも一か月近くかかります」


「時間がありませんね」


 封印は今も綻び続けている。


 一か月もの時間をかけている余裕はなかった。


 その時だった。


 エレナが当然のように言う。


「ならば、我の背に乗ればよい」


 一同がエレナを見る。


「我が飛べば数日もかからぬ」


「半日ほどで着くじゃろう」


 あまりにも当然のような口調だった。


 しかし、サンセリテとソフィアは固まった。


「…………」


「…………」


 シャルロットは苦笑する。


「そうなりますよね」


 エレナは首を傾げた。


「何じゃ」


「何か問題でもあるのか?」


 サンセリテは珍しく表情を引きつらせる。


「いえ……」


「紅竜の背に乗るなど、普通は一生に一度あるかどうかの経験ですので……」


 ソフィアも青い顔で頷いた。


「そ、そうですよ……」


「高い所は、少し苦手で……」


 エレナは呆れたように鼻を鳴らす。


「情けないのう」


「落としたりせぬ」


「安心せい」


 そう言うと、エレナは外へ出る。


 眩い紅い光が身体を包み込む。


 次の瞬間。


 巨大な紅竜がルミエール大聖堂の前へ姿を現した。


 陽光を受けて輝く真紅の鱗。


 広げられた翼。


 見る者を圧倒する神々しい姿。


 ソフィアは思わず息を呑む。


「きれい……」


 サンセリテも感嘆の声を漏らした。


「これほど近くで見るのは初めてです」


 エレナは少し得意そうに胸を張る。


「当然じゃ」


「我は紅竜じゃからのう」


 だが、いざ乗る段階になると話は別だった。


 シャルロットは慣れた様子で背へ飛び乗る。


 しかしソフィアは足を震わせていた。


「た、高いです……」


「本当に大丈夫でしょうか……」


 サンセリテも笑顔こそ保っているが、どこか顔色が悪い。


「神よ……」


「どうか無事に着きますように……」


 エレナは思わず吹き出した。


「まだ飛んでもおらぬぞ」


 ようやく全員が乗り終える。


 エレナは大きく翼を広げた。


「しっかり掴まっておれ」


「振り落とされても知らぬからのう」


「ひっ……」


 ソフィアが悲鳴を上げる。


 力強い羽ばたき。


 一度。


 二度。


 三度。


 巨大な紅竜の身体がゆっくりと浮かび上がる。


「きゃあああああっ!」


「お、おおおお落ちませんよね!?」


 ソフィアは半泣きだった。


 サンセリテも必死に鱗へしがみついている。


「ええ、大丈夫です」


「多分……」


「多分!?」


 シャルロットは思わず笑ってしまった。


 そんなやり取りをよそに、エレナは青空へ向かって一気に加速する。


 目指すは旧魔王城。


 百五十年前に始まった戦いへ、終止符を打つために。


 こうして四人を乗せた紅竜は、大空の彼方へ飛び立つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ