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12A_鷺ノ宮さんは観察する

 鴉羽さんほど目立っているわけじゃないけど、鷺ノ宮さんもクラスの人気者だ。


 真面目で成績も良く、誰に対しても人当たりが柔らかく、頼られればしっかり応えてくれる面倒見のよさもある。


 そんな鷺ノ宮さんだけど、このところ僕に対してだけ様子がおかしい。


 例えば廊下でばったり出くわしたりすると、ちょっと驚いたあとでむっとした表情になり、僕が通り過ぎて見えなくなるまでじーっとこちらを見ていたりする。


 まるで僕が何かとんでもないことをやらかさないか見張っているみたいだ。

 どうやら先日の一件以来、僕は鷺ノ宮さんの中で警戒すべき相手になってしまったらしい。

(校外学習の時もなんか視線を感じてたし)


 鴉羽さんとのこともあるし、仲良くできたらいいんだけど……。


 そんな僕と鷺ノ宮さんの様子を見かねたのか、とある日の放課後。


「古内裏ぃ、今日は三人で帰ろうぜ♪」


 と鴉羽さんが僕の席までやって来た。


 その後ろにはじつに嫌そうな表情をした鷺ノ宮さんの姿もある。僕はテレパシーが使えるわけじゃないけど、「断れ断れ断れ~~~」という念が伝わってきそうだ。


 でもせっかくの鴉羽さんといられる時間だし、(多分)気を利かせて作ってくれた鷺ノ宮さんと交流する機会。無駄にするのは忍びない。


 僕が何食わぬ顔で「うん、構わないよ」と返事をすると、鷺ノ宮さんはガーンとショックを受けた後で、すぐに拗ねたような表情になったのだった。


 この人、コロコロ表情が変わって結構面白いな……。



   ◆



 そして帰り道。


「そういやもうすぐ球技大会があるんだっけ。古内裏は何に出るか決めた?」

「うん。実は一緒にバスケやらないかって幡谷くんに誘われたんだ」

「お、いいねぇ。だったらアタシも久々にバスケやろうかな。マリはどれにするの?」

「えっ?」


 急に話を振られた鷺ノ宮さんははっとして「あっ、聞いていなかったわ……ごめんなさい」と肩を落とした。

 それもそのはず。彼女は鴉羽さんと僕が話してるあいだも、じ~っと何か言いたげに僕のことを見ていたのだ。


「どしたんマリ? さっきからず~~~っと古内裏のこと見て……もしかしてホレた?」

「惚れません!」


 にししと笑いながら冗談めかして言う鴉羽さんと、それを速攻で否定する鷺ノ宮さん。


「もう! そうやってからかうなら私は先に帰らせてもらうわよ?」

「あはは、ゴメンって。今日は三人で遊びたくて誘ったんだから、帰らないでよ~」


 拗ねる鷺ノ宮さんの後ろから肩に手を置き、鴉羽さんが宥めるようにくっついた。鷺ノ宮さんも「まったく……」と言いつつも実際に帰る気配はなく、きっとこんなやり取りは二人の日常なんだろう。


 何となく微笑ましいものを眺めてる気分になりながら、話題が変わったことタイミングで僕は気になっていたことを鴉羽さんに訊いてみた。


「鴉羽さん、この三人でどこか行きたいところでもあるの?」


 僕と鷺ノ宮さんを同時に誘ったということは、何か仲良くさせる秘策があるんだろうか?


「いんや、特に何も考えてないよ。二人はなんかある?」


 しかし返って来た答えはまさかのノープラン……!

 能天気に答える鴉羽さんに、僕だけじゃなく鷺ノ宮さんまで唖然とした表情になっている。


 どうやら単に僕らを引き合わせるまでが鴉羽さんの計画だったらしい。


 でも困ったな。僕と鴉羽さんの二人だけなら適当なカフェで駄弁ったり、その辺をぶらぶらするだけで時間を潰せるんだけど……この三人で会話が弾む未来が見えない。

(鴉羽さんが取り持ってくれるから、お通夜にはならないだろうけど)


 う~ん……。


 悩んだ挙句、何も適当な案が浮かばないので「僕はどこでも構わないよ」と鷺ノ宮さんに選択を委ねることにした。


 途端、


「古内裏選手、減点1!」

「え~……」


 びしっと鴉羽さんに指さされ謎の減点を食らう。


 彼女はそのままひとさし指を僕の額にぐりぐり押し付け、「あのねぇ古内裏、こういう時『どこでもいい』は一番言っちゃダメなやつだよ?」と呆れたように口にした。


「そ、そうなんだ。鷺ノ宮さんが自分で行きたいところ選べたほうがいいかなと思ったんだけど……」


 どうやらその考えはハズレだったらしい。

 溜め息と共に僕を解放した鴉羽さんは、


「では次にそんなマリ選手、どうぞ~?」


 と言ってエアマイクを鷺ノ宮さんに向ける。


「……と言われても、困ったわね。いつもなら適当なところでお茶したり、その辺でお買い物したりするところなんだけど……」

「お、いいね♪ せっかくだし夏に着る服買っちゃう? 二人で色々試着してさぁ、古内裏にどれがいいか選ばせようよ」

「絶 対 嫌 !」


 うきうきな鴉羽さんの提案を、鷺ノ宮さんは顔を赤くして断固拒否した。


 別に水着ってわけじゃないんだし、そこまで恥ずかしがらなくても……と思ったけど、そういえば以前鴉羽さんに見せてもらったコスプレ写真でも鷺ノ宮さんは恥ずかしそうにしていたっけ(露出の少ないセーラー服だったのに)。


 察するに、誰かに注目されるのがあまり好きじゃないんだろう。


 結局鷺ノ宮さんも碌な案を出すことができず、鴉羽さんは「マリ選手も減点!」と公正かつ手厳しい評価を下すと、しゅんとする僕らの前で呆れた様に「ちっちっち」と指を振った。


「も~、二人とも仕方ないなぁ。そんな難しく考えなくていいんだよ……そうだなぁ、えーっと」


 と軽く周囲を見渡した鴉羽さんは、すぐに「あ、あれなんかどう?」とある建物を指さした。


 その先にあったのはアミューズメントパーク。そしてその一階に並んでいるのはプリントシール機、所謂プリクラだ。


「え、ヒナ……もしかしてこの三人で撮るつもりなの……?」

「それ以外何があるのさ。ほら二人とも行くよ~」


 当然と言わんばかりな鴉羽さんの答えに、蒼白な表情になる鷺ノ宮さん。

 まぁ気持ちは分かる。まだまだ仲がいいとは言えない僕らが一緒に撮ったって、微妙な一枚になることは間違いないだろう。


「待って鴉羽さん、陰キャがプリクラ撮るのは違法だって知らないの?」

「古内裏こそ知らないの? 碌な遊び先も出せないヤツが文句言ったら死刑になるんだよ?」


 せめてもの抗議を口にしたけど、そう言われたら僕も鷺ノ宮さんも黙るほかない。


 こうして僕と鷺ノ宮さんは鴉羽さんにずるずる引っ張られ、プリ機の中へと連れ込まれていったのだった。


 どう考えても波乱の予感しかしない……!



―――――――


一話完結型ラブコメ!


……とか銘打っておきながら……すみません、続きます!!


次回、プリで仲良し大作戦!!

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