Episode 34 アンバーはサヤンを口説く計画を立てる
アンバー:「へぇ、そうだったのね。最初からおじさんなわけないって思ってたわ。リリー、あなたが私の言うことを聞いてなかっただけじゃない!」
リリー:「そうなの……サヤン。サヤンっていうの、彼の名前。」
アンバー:「じゃあ、もう告白(propose)しちゃったの? で、彼は何て?」
リリー:「いいえ……告白はしたけど、彼は今のところ、自分の名前を教えてくれただけ。」
アンバー:「もう愛を伝えたのね? 大丈夫、私に任せて! 二人でプランを立てましょう。すぐに彼があなたに夢中になるようにしてあげるわ!」
作戦タイム
アンバー:「まずはロマンチックなシチュエーションを作るわよ!」
プランA:
「歩いている時にふらついて、サヤンが手を掴むの。『サヤン……私、大丈夫』って言って、指を絡ませるのよ。これでもうイチコロ!」
リリー:「いやいやいや……想像しただけで吐き気がするわ。アンバー、サヤンがそんなことするわけないでしょ!」
プランB:
「じゃあこれ! 階段から落ちそうになったところをサヤンが抱きとめるの。数秒間、見つめ合ってから『サヤン……私を離さないでくれる?』って言うのよ。きっと『君の告白を受け入れる』って言うはず!」
リリー:「オーマイガー……アンバー、そんなキザなセリフを言わせるくらいなら、いっそ階段から突き落とされたほうがマシだわ! サヤンなら、そんな甘い言葉を口にするより、私を階段から突き落とすほうを選ぶはずよ。」
プランC:
「じゃあ、これでどう? 本に何か書いていて、彼が覗き込んできた瞬間にわざと本を落とすの。拾おうとして顔が近づいたところで、『私のボーイフレンドになってくれる?』って聞くのよ。」
リリー:「ストップ! ストップ!! ……アンバー、あんた、私のサヤンを射止めるっていう希望を、その手で完全に絞め殺す気!? もういい、そんなのじゃなくて、もっと私にできて、かつ素敵に見える作戦を教えてよ!」
アンバー:「うーん……それなら、これはどう?」
リリー:「わぁ……! これならいけるかも!」
(アンバーは、リリーがこれから実行する「新しいプラン」を耳打ちする)
(リリーは日曜日の夜、作戦を実行に移そうとしていた)
サヤン:「レモン、エヴァ・グリーンが仕事を完璧にこなしていると聞いて嬉しいよ。」
(レモンはいつものように、サヤンの家で夕食を共にするためにやってきた)
サヤン:「エナ・ママ、今日はオニオンスープを飲みたい気分なんだ。」
レモン:「俺のパニール(チーズ料理)も忘れないでくれよ。」
サヤン:「エナ・ママ、今日はリリーが来ていないのか?」
エナ・ママ:「あの子なら自分の部屋にいるわよ。」
サヤン:「……部屋にいるなら、もう降りてきているはずだが。」
(その頃、別の場所で)
リリー:「アンバーは言っていたわ。サヤンの初恋の人のようになればいいって。彼女の写真が見つかればいいんだけど……あの日の箱が見当たらない。二つあったはずなのに。」
サヤン:「部屋にいないなら、一体どこにいるんだ?」
レモン:「庭にもいなかったぞ。」
サヤン:「まさか……あそこか!」
(サヤンとレモンは急いで図書室へ駆け込んだ。そこには、まさにあの箱を開けようとしているリリーの姿があった。サヤンはリリーから箱をひったくった)
サヤン:「リリー! 何度言えばわかるんだ! 一度言ったことが、どうして理解できないんだ!」
(今回のサヤンは怒ったふりをしているのではない。彼の瞳には本物の怒りが宿り、リリーに対して心底失望しているかのように見えた)
(リリーはあまりの剣幕に言葉を失い、ただ目から涙をこぼした。この数年間で、サヤンがこれほどまでに本気でリリーを怒ったのは初めてのことだった)
リリー(泣きながら):「……どうすればいいの? どうすれば私の告白(proposal)を受け入れてくれるの? 私はただ、あの人の写真が見たかっただけ……彼女のようになりたかったのよ! あなたが好きだから……あなたと恋人(relationship)になりたいだけなのに!」
(しかし、今回のサヤンはあまりにも激昂していた)
サヤン:「……いいだろう。大晦日の夜、Opéra de Paris(パリ・オペラ座)で踊ってみせろ。もしそれができたら、君との結婚を考えてやる。」
レモン:「サヤン! 正気か!? 彼女にそんなことできるわけないだろう。リリー、サヤンも少しすれば落ち着くから、後でゆっくり話そう、な?」
(しかし、リリーのショックはあまりにも大きく、レモンの言葉も耳に入らないまま、彼女は自分の部屋へと走り去った)
レモン:「サヤン……! お前、どうかしてるぞ。リリーにあんなに怒鳴り散らすなんて。」
(サヤンは自分の過ちに気づき、力なく椅子に腰を下ろした)
サヤン:「……分からないんだ。一瞬、彼女が僕の知っているリリーではないように見えた。僕の大切なリリーの場所を、無理やり奪おうとしているように感じて……怒りを抑えられなかったんだ。」
サヤンの突きつけた条件は、リリーの心に消えることのない情熱の火を灯しました。今までのリリーにとってバレエは楽しみの一つでしたが、今は違います。Opéra de Parisでの敗北を味わうくらいなら、死んだほうがマシだとさえ思っていました。
サヤンへの想いを証明するため、彼女はどんな困難も乗り越える決意を固めたのです。
(朝食の時間……)
空気はひどく冷め切り、静まり返っていました。リリーとサヤンは一言も交わさず、リリーはコップ一杯のミルクだけを飲み干すと、すぐにバレエクラスへと向かいました。
これまでの彼女はただの「バレリーナ」でしたが、今の彼女を動かしているのは、サヤンを手に入れるという唯一無二の「夢」でした。
数日が過ぎ、周囲はあの夜の騒動を忘れかけていました。リリーも少しずつサヤンと話すようになりましたが、その裏では壮絶な痛みに耐えていました。足の指は腫れ上がり、激痛が走ります。それでも彼女は毎日何時間も猛練習を重ね、朝早くに出かけ、日が暮れてから帰宅する日々を繰り返しました。
リリー:「エナ・ママ、今夜は庭で2時間トレーニングするわ。」
サヤン:「……だが、風邪を引いてしまうよ。」
リリー:「サヤン、私を止めないで。私はもう、子供じゃないのよ……。」
彼女の努力は、誰の目にも明らかなほど過酷なものでした。
イザベラ:「リリー、転んだ時の痛みなんていつか忘れるわ。でも、二度と立ち上がって踊れなくなる痛みは、一生忘れられないものよ。」
(Théâtre Antique de Lyon でのコンクールまで、あと2ヶ月に迫っていました。イザベラはリリーの中に眠るバレリーナとしての真の才能を見抜いていました。今のリリーは、勝つためならどんな犠牲も厭わない覚悟でした。)
イザベラ:「明日からは朝4時に来なさい。特別特訓を始めるわよ。」
リリー:「どんなに厳しい練習でも耐えてみせます。……必ず、Opéra de Parisで勝ってみせるから!」
リリー:「サヤン、何してるの?」
サヤン:「大事な仕事中だよ……。」
リリー:「ねえ、ひとつ質問してもいい?」
サヤン:「ああ……。そうしないと、仕事をさせてくれそうにないからな。」
リリー:「サヤン……もし私が一羽の鳥だったら、あなたは私を鳥かごの中に閉じ込めておく?」
サヤン:(困惑して)「……一体、どこの教科書に載ってる質問だい、それは?」
リリー:「……心の教科書よ。」
(サヤンは何も答えられなかった。ただ心の中でこう思った。――『この子は、一生このまま(お調子者)なんだろうな』と。)




