第三十話 王との面会③
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私が切り出したホヴォス連邦との同盟に、アーカイト王太子は動揺の声をあげた。
「なっ、同盟だと!」
「はい、アーカイト王太子。我が国は海軍力が遅れております。海洋国家であるホヴォス連邦と同盟を組み、最新の造船技術や操船技術を得るべきです」
続く私の言葉に、アーカイト王太子が鼻で笑った。
「馬鹿馬鹿しい。同盟を組むのはいいとして、ホヴォス連邦が最新技術を教えるわけがない」
アーカイト王太子の断言は当然だった。造船技術は重要な機密だ。簡単に教えてはもらえない。教えてもらうにしても、対価が必要となる。
「おそらくホヴォス連邦は造船技術と引き換えに、翼竜とその飼育方法を求めるでしょう」
「それは出来んな。それを教えるぐらいなら、自分達で船を造ったほうがましだ」
アラタ王も、ホヴォス連邦が出してくると予想される条件を一蹴した。これもまた当然である。現在翼竜は我がライオネル王国しか所有していない。空を自由に飛ぶ翼は、今のところ魔王軍とライオネル王国だけに許された特権なのだ。
造船技術は地道に研究していればいつかは獲得出来るが、翼竜はそうではない。取引の天秤に釣り合わないのだ。
「私もそう思います。そうなると翼竜以外で、ホヴォス連邦が造船技術と引き換えにしてもよいと思える技術を作らねばなりません。たとえば……グラナの長城を破壊出来る兵器など」
私の言葉に、アラタ王が瞼を僅かに動かす。
「……続けろ」
「はい。開発中の新兵器でギレ山砦を攻略し、その威力を連合軍に見せつけます。そしてこの兵器を揃えれば、グラナの長城を攻略出来ると思わせるのです。さすればホヴォス連邦は造船技術と引き換えに、攻城兵器の技術を欲するでしょう」
私の説明を聞き、アラタ王は顎を撫でる。
「長城攻略の手柄を、ホヴォス連邦も欲しいはずです。我らに対する借金がありますので」
私は二年前のガンガルガ要塞攻略戦を思い出した。あの戦いではホヴォス連邦を率いていたディモス将軍が、スート大橋を爆破して連合軍全体を危険にさらした。ホヴォス連邦はこの不始末に対して、賠償金を払っている。支払はまだ完済されておらず、ホヴォス連邦の国庫は火の車だ。グラナの長城を攻略し、その手柄で賠償金を相殺したいだろう。
「戦争で価値を高め、そのうえで高く売る。其方らしい考えだな。ロメリア殿」
アラタ王が口の端を歪めて私を見下ろす。
「確かに悪い考えではない。新型の攻城兵器は重要な技術だが、いずれほかの技術にとって代わられるだろう。ならば廃れる前に高く売りつけ、遅れている技術を補うのも悪くはない。だがそれをする理由がどこにある? 確かに造船技術は必要だ。しかし無理に手に入れなければならないものではない。むしろ其方が欲しいだけなのではないか? 魔大陸にいくために」
アラタ王に問われ、私は言い返さなかった。全て事実であるからだ。
私の目的は、魔大陸と呼ばれる魔族が住むゴルディア大陸に赴き、奴隷となって囚われている人々を救うことにある。カシュー地方に赴き軍隊を編成したのも、軍勢を率いて魔王軍と戦っているのも、全てはそのためだ。私はもっともらしい理由をつけて、国家や人々を自分が望む方向に誘導しているに過ぎない。
「其方の願いは崇高ではある。だが我らが付き合ってやる理由がどこにある?」
「あります。造船技術を得れば、ライオネル王国は千年の繁栄を誇るでしょう」
私は図々しくも言ってのけた。
「千年の繁栄だと? 大それたことを!」
アーカイト王太子が語気を荒らげる。千年の繁栄と言われても、すぐに頷けないだろう。
「アラタ王。魔王軍を倒した後、世界がどうなると思われますか?」
「さて、どうなるだろうな。細かい予想など出来ん。しかし魔王軍を倒した連合軍が、次は互いに争い合うことは間違いなかろう」
アラタ王の答えに、私も首肯する。ヒューリオン王やグーデリア皇女と戦うのを想像したくはないが、人類は常に争い合ってきた。魔王軍という脅威がなくなれば、今度は互いを脅威として戦争をするだろう。
「私もそう考えております。ですが戦いの舞台は、海の上へと変化するでしょう」
「海の上だと?」
「はい。現在列強各国は、魔王ゼルギスが造った魔導船の研究を行っております」
私はかつて密航して乗り込んだ、魔王ゼルギスが建造した魔導船を思い出した。いかなる魔導の秘術が使われているのか、風もないのに進む奇妙な船だった。
魔族は蜥蜴のような風貌をしているが、その技術は人類を超えている部分がある。列強各国は、魔族に追いつくべく日夜研究に励んでいる。もちろん我がライオネル王国もその一つだ。
「まだどの国も、魔導船の完成には至っておりません。しかしいずれは到達するでしょう」
私は断言した。未来の予想は難しいが、絶対確実なことも存在する。これはその一つだ。
魔導船がどのような構造をしているのかは、誰も知らない。だがすでに完成品は存在したのだ。ないものは作れないが、あると分かっている物ならば人類はいつか必ず作る。ゼルギスがなしえた魔導の神秘は、いずれ白日の下にさらされるのだ。
「これまで海は未開の世界でした。海はあまりにも大きく、嵐に凪、複雑な海流が行く手を阻んでいます。しかし魔導船があれば、それらを乗り越えることが出来ます」
私は拳を固めた。海の向こうには、見たこともない新世界が広がっているのだ。
「大海へと乗り出した列強各国は、行く先々で自国の旗を立てて、島や土地を自分達の物にするでしょう。多くの国々が版図を広げるために船を出す、大航海時代の幕開けとなるのです」
私の説明に、アーカイト王太子が固唾を呑む。しかしこの大航海時代は、当然争いの火種にもなる。発見した島や土地の領有権をめぐって各国は争い、もともと住んでいた原住民を迫害するだろう。決してよいことではないが、止められない流れでもある。たとえ今起きなくとも、いつか同じことが必ず起きる。
「この大航海時代の波に、我が国も乗り遅れるわけにはいきません。今のうちに、高い造船技術を得ておく必要があります」
「なるほど……確かにそれは一考に値する話だ。魔導船が完成すれば、いずれそうなることだろう。そして其方は魔導船を引き連れて、魔大陸に乗り込むというわけか」
「はい、それがよろしいかと。何せ海を渡った先に、大きな大陸があることは判明しております。魔族を倒し奴隷となった人々を解放して労働力とすれば、国の礎は簡単に築けるでしょう」
私は臆面もなく言ってのけた。私にとって都合のいい答えだが、ライオネル王国にとっても益のある話だ。
「そしてアラタ王。もしそれが成った暁には、一つ褒美を約束していただきたい」
「褒美だと?」
「はい。奴隷を解放し魔族の土地を切り取った暁には、私を王としてその土地の支配を認めていただきたいのです」
私は王の前で、王になりたいと言ってのけた
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