第二十九話 王との面会②
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「よく戻ったな、ロメリア殿よ」
アラタ王は鷹揚に頷く。
「急なお目通りを叶えていただき、ありがとうございます」
「なぜ戻った! ロメリア! お前には連合軍に派遣した遠征軍を、率いる役目があったはずだ! 帰国の命令を出した覚えはないぞ!」
頭を下げる私に対し、眉を逆立て声を荒らげるのは、そばに控えるアーカイト王太子だった。
以前はロメリア殿と最低限の敬称を付けていたが、もはやそれすらないようだ。
「そもそもお前の配下であるアルビオンとレイヴァンは、王家の許可なく出奔し、勝手に戦地に行った! よく顔を出すことが出来たな!」
睨むアーカイト王太子の目には憎悪があった。
二年前のガンガルガ要塞攻略戦において、アルとレイは私を助けに来てくれた。しかしこれは王家の許可を得ておらず、明確な命令違反。謀反や反乱に近い行動だった。
戦争には勝てたためアルとレイの行動は不問となったが、王家との確執は明らかとなった。私は対立を避けるため、アルとレイをライオネル王国に戻さなかった。さらに私自身も戦地に身を置き、帰国を出来るだけ控えた。遠く離れた戦地に居れば、私が謀反を起こす心配も減るからだ。しかし予定のない私の帰国に、アーカイト王太子は神経を尖らせている。
「申し訳ありません。緊急事態につき、王の裁可が必要な事態となりました」
私は頭を下げたまま、落ち着いた声で話した。
「許さん! これは明らかな命令違反だ! セルゲイ、この謀反人を捕らえよ」
アーカイト王太子が私に指を突き付ける。セルゲイはアーカイト王太子ではなく、アラタ王の顔を見る。王は右手を掲げセルゲイに動くなと命じた。
「やめよ、アーカイト。少し前にヴェッリ特別顧問から手紙が届き、状況は知っておる。魔王軍に動きがあり、連合軍はロメリア殿に対処を任せたようだな」
私は頷くが、アーカイト王太子の怒鳴り声は止まらない。
「そもそも、なぜ引き受けてきたのだ! 完全な貧乏くじではないか! この不始末! どう責任を取るつもりだ!」
アーカイト王太子は私の判断を叱責するが、これには答えない。
「やめよと言っている。ロメリア殿の判断は正しい。我らライオネル王国は、連合軍が編成している艦隊に船をあまり出していない。連合軍に対する貢献度、信頼を得るために、ここは戦わねばならん」
アラタ王はアーカイト王太子をたしなめた。アラタ王は猜疑心こそ強いが、損得を理解する頭脳を持っている。今回のギレ山砦攻略戦は、必要な戦いであると認識してくれていた。
「それで追加の援軍が欲しくて来たのか? だがそれは出来んぞ、我が国にその余裕はない」
「大規模な軍勢を求めてはおりません。その代わり、お願いしたいことが三つございます」
「なんだ、申して見よ」
「一つ目の願いですが、ライオネル王国に残っている、オッテルハイム将軍とカイルレン将軍。そしてベン、ブライ、ゼゼ、ジニ、ボレル、ガットを派遣していただきたいのです」
私は俗にロメリア二十騎士と呼ばれる、将軍や指揮官達の名前を挙げた。優秀な彼らが兵士を率いれば、少ない兵力でも戦い抜ける。
「いけません父上! ロメリアに子飼いの兵士を与えれば、いつ謀反を起こすか分かりません」
アーカイト王太子は、私に対する敵意を隠そうともしない。アラタ王は左手を掲げて、アーカイト王太子を制する。
「二つ目は? その程度の頼みのために、戦地を離れたのではあるまい」
「はい。新型攻城兵器の使用許可を頂きたく」
「ふざけるな! 我が国の国家機密だぞ!」
アーカイト王太子は、ありえんと首を横に振った。
攻城兵器は、どの国でも国家機密として扱われている。巨大な建築物である攻城兵器は、その国の技術力の高さと戦力を示す指標となるからだ。
「それにあれは、グラナの長城攻略用の決戦兵器でもある。それを今使うだと? そんなことをすれば、魔王軍に対策される! そんなことも分からんのか!」
アーカイト王太子は、私を面罵する。
グラナの長城攻略は、魔王軍を滅ぼす決定的な戦いとなる。ここで大きな手柄を立てれば、ローバーンを手に入れた際に、我がライオネル王国の取り分も多くなる。新型攻城兵器の存在は、ライオネル王国の将来にも関わるのだ。
「……三つ目は? 最後の願いは何だ?」
アラタ王は、二つ目の願いに対しては何も言わなかった。
一つ目の願いと二つ目の願いは、私にとって都合のいいものだ。私を潜在的な敵だと認識しているアラタ王が、すんなりと許可するはずがない。もちろんアラタ王も、私がそう考えていることを予想している。三つ目の願いこそが重要だった。
「三つ目の願いですが、ホヴォス連邦と軍事同盟を結んでいただきたいのです」
私の言葉にアラタ王は目を細め、アーカイト王太子は逆に目を広げた。
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