第二十八話 王との面会①
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すでに外は陽が暮れ、星が瞬いていた。月がかかる城の尖塔に向かって馬車を走らせる。篝火が焚かれた城門の前では、衛兵が警備についていた。また衛兵のほかに蒼い鎧を着た騎士が門のかたわらに立っている。竜舎で別れたレイだ。
「ロメリア様、お待ちしておりました」
馬車を降りた私に、レイが駆け寄ってくる。
「レイ、いろいろありがとうございました」
将軍だというのにあちこち走らせてしまい、すまないと思う。
「いえ、この程度。兵舎にカイルやオットー達を集めています」
「ありがとう。アラタ王との会談が終われば、そちらに向かいましょう」
私はレイと共にラクラーナの門に向かうと、衛兵が城門を開けてくれた。
ラクラーナは石造りの武骨な城だ。内部は赤い絨毯が敷かれ美しい調度品が並んでいるが、王が住むにはいかめしい造りだった。防衛力は高いが、美しくはない。ほかの列強各国では、王が住むのは壮麗な宮殿であるのが普通だ。
「ロメリア様ですね。アラタ王がお待ちです」
ラクラーナに入った私に、赤と黒の服に身を包んだ青年が歩み寄る。赤と黒の意匠は王の侍従だ。手を差し伸べて案内する侍従の後に、私とレイは続く。
「ロメリア様。アラタ王は頼みを聞いてくれるでしょうか?」
「連合軍の危機ですから、アラタ王も納得していただけるでしょう」
侍従の耳があるため、私は慎重に言葉を選んだ。だがアラタ王は簡単に私の願いを聞いてくれないだろう。何故ならアラタ王は私を信じていないからだ。王の猜疑心は、居城であるこのラクラーナにも表れている。
以前、アラタ王が住むにふさわしい、宮殿を建設しようという話があった。しかし国庫を圧迫すべきではないと、アラタ王が断った。
国を第一に考える名君のようにも思えるが、実際のところは反乱を警戒して、守りに強い場所を選んでいるのだ。そしてアラタ王が最大の仮想敵と見ているのが、何を隠そうこの私だ。
アラタ王は私が謀反を起こすことを警戒していた。もちろん私にそんな野心はない。アラタ王自身も私に野心がないことを知っている。だが私は軍の実権を握り、国民の人気も高い。お父様は宰相として、王国の内政も握っている。私は手を伸ばせば王座を奪える位置にいるのだ。それ故にアラタ王は私を警戒している。
アラタ王との話し合いは、この猜疑心と私に対する警戒をいかに克服するか、あるいは利用するかというものになるだろう。
侍従に案内され、ラクラーナの内部を歩く。そして謁見の間の前に到着した。
私とレイが扉の前に立つと、案内をした侍従がレイに目を向ける。
「申し訳ありません。レイヴァン将軍。アラタ王がお会いになるのは、ロメリア様だけです」
侍従の言葉に、レイが眉間に皺を寄せる。だがこれは予想出来たことだ。
「レイ、ここで待っていなさい」
命じるとレイは素直に頷いた。そして扉が開かれ、私は一人で進み出た。
謁見の間に入ると、上座の一段上がったところに玉座が置かれ、そこに三人の男性がいた。
白髪に王冠を戴き、玉座に座るのがアラタ王である。その右隣には獅子の鬣の如き金髪をしたアーカイト王太子が立っている。左隣には立派な髭を蓄えた兵士がいた。銀色の全身鎧に槍を携えるのは、親衛隊の隊長を務めるセルゲイである。
私は赤い絨毯が伸びる謁見の間を進んだ。
謁見の間の両壁は、赤い布が天井から床まで垂れ下がっている。私は真っ直ぐアラタ王だけを見て進む。視界の端では、風もないのに壁際の布が僅かに揺れた。おそらく兵士を配置しているのだろう。アラタ王の指示一つで兵士達が飛び出し、私を殺す用意が出来ている。
実に無駄なことをすると思う。そもそもアラタ王は私を殺すことが出来ない。
王国を差配する宰相は私の父であるグラハム伯爵だし、教会で指導的な立場にあるノーテ枢機卿は、私の個人的な友人だ。ほかにも私の支援者は多いし、連合軍に対しても信頼を勝ち得ている。私を突然処刑すれば、国の内外から多くの批判が寄せられるだろう。下手をすれば反乱が起きてもおかしくない。
私を殺せば、ライオネル王家が滅ぶ現状があるのだ。
それに私を殺すだけなら、こんなに多くの兵士を揃える必要がない。そばに立つセルゲイ一人で十分だ。それはアラタ王も分かっているだろう。だがそれでも兵士を配置するのは、親衛隊長のセルゲイをも信じていないからだ。
私は進みながら、親衛隊長のセルゲイを見た。セルゲイとは四年前におきたセメド荒野の戦いで、戦場を共にした戦友である。おそらくアラタ王は、その過去を警戒しているのだ。私を処刑するとなった時、万が一にもセルゲイが私を助けるかもしれないと見ている。
かわいそうな話である。セルゲイは王家に忠誠を尽くし、先王であるアンリ王のために命を懸けて戦った。王家に対する忠誠心に疑う余地はない。私を殺せと命じれば、セルゲイは必ず実行する。アラタ王もセルゲイの忠誠心を理解しているが、私と通じているかもしれない可能性があるだけで、信じ切ることが出来ないのだ。
ならばセルゲイを隊長から罷免すればいいのに、アラタ王はそれも出来ない。セメド荒野の戦いでは、親衛隊の多くが死んでしまった。そのため隊長を務められる者がいないのだ。
これもまた王を取り巻く現状だ。アラタ王は猜疑心と現状の間で揺れている。信じていなくとも使える者を使わねばならない。
私はアラタ王の前に進み出て膝をついた。
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