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20、*初顔合わせ 1




「はぁ…。シェロに笑顔で行ってらっしゃいと言われてしまった…」


僕はため息を吐きながら窓の外を見た。


正直行きたくない。

なんで好き好んでわざわざ王宮に行かないといけないんだ…。


「ルセット様?ため息はよろしくありませんわよ」

マリア先生に注意されてしまった。


「わかってます…。でも、ため息を吐きたくなるのです」


王宮なんて行かないで、シェロと一緒に居たかった。

…これからの人生の為の人脈作りが大事なのはわかってる。

あと2年で学校が始まる。

知らない人だらけよりも、1人でも知っている人がいる方がいい。

…1年後に来る、シェロの為に色々な地盤作りをしないといけないのもわかってる。

コレ、やっておかないとヴィル様に怒られるヤツ。

わかってはいるんだけど、王宮に向かう腰が重たい。


「…王弟がいい人だったらいいなぁ…」




同時刻*王宮


「どうしよう。どうすればいい?」


俺は久しぶりに焦っていた。

今日はシェロの兄上、ルセットがやってくる日だ。

今日、失敗したらシェロに会う日が何歩も遠ざかる。


部屋の片付けはーー元々何もない。

お茶にお茶菓子はーークレアが美味しいものを用意してくれた。


「ノア様?何をそんなにバタバタしているのですか?もうすぐカトラリー様と家庭教師様がいらっしゃいますわよ?」

クレアが目を細めて言い放った。


「クレア。何か変な所やおかしな所はないか?」

「…ノア様。変な、もおかしな、も一緒ですわ。強いて言うなら、ノア様の頭がおかしいのですわ…あぁ、コレは前からですわね」

「なっ!ぼっ俺はどこもおかしくない!」

「ご自分の事を僕、と言えばいいのに」

「うるさい。別に無理して俺と言っているわけではない!」

ふふっとクレアに笑われた。


「焦っているノア様は久しぶりに見ましたわ。

…でもそろそろ落ち着いてくださいね?第1位印象は大事ですわよ」

「そんなのわかってる」


ここでルセットと仲良くなっておかないといけないのである。

学校で会えるとしても、カトラリー家のガードが緩くなるわけではない。

ルセットと一緒に入れれば会える回数が多くなるのだ。


「ねえ クレア。一緒に居てくれない?(俺1人じゃ何かやらかしそう)」

「え、嫌ですわ。カトラリー様を一目見たら帰りますわ。(1人でどうにかしてくださいまし)」


クレアが優しくない。


「ヴィノア様。カトラリー様、マリア様がご到着致しました。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」

扉の向こうから、カトラリー様、家庭教師様が到着したと言われた。


「あぁ、よろしく頼む」


何もよろしくないけどな。


「…ルセット、いい人だといいなぁ」




「この度はお越し頂きありがとうございます。

カトラリー様、マリア様」


お城の人に連れてこられた扉の先に居た、目み麗しい人が頭を下げている。


カトラリー様なんて言われた事ないから慣れないな…。


金髪碧眼……。

この人が、王弟。僕の、従兄弟にあたる人。


「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。王弟様」


名前は知らないので、王弟としか呼べないけど。


シェロ。兄さん頑張るよ。仲良くなれるように…。




王弟…。あぁ、そうか。名前、言ってないな。

ノアはそんな事を考えながらルセットを見ていた。


うん。やっぱり整った見た目をしている…。

シェロはルセットの事が好きなんだろうか。

いや、カトラリー…シャルルヴィ様か?


「…ノア様?自己紹介をしなくて良いのですか」

クレアに耳打ちされてハッとした。

そうだ。名前言わないと…。

自己紹介なんてずっとやってないから忘れてた。


「失念しておりすみません。

私の名前はヴィノア・エンフィーダ。気軽にノアとおよびください」

俺は言い終わったと同時に頭を下げた。

完璧じゃね?


「….ノア様、ですね。僕の名前はルセット・カトラリーです。ルセットとおよびください」


…素敵な笑顔を向けられてしまった。

王子様スマイル、というやつだろうか。

よくクレアにそれくらい出来るようになってくださいと言われる笑顔。

シェロに向けてなら絶対できるのに。


「ルセット様。よろしくお願いします」

俺も負けじと笑顔を向けた。


「ルセット、でいいですよ。様はいらないです」

「では私もノアで良いですよ。よろしくルセット」


クレアをチラッと見たら、合格ですというような笑顔を浮かべていた。


「えっと、そちらの方は…?」


ルセットは俺の後ろにいるクレアに目線を向けた。

クレアは1歩前に出て1礼した。


「私は、クレア・ベネットです。…クレアとお呼びくださいませ」


「クレア様、ですね。よろしくお願い致します」

ルセットは笑顔をクレアに向けた。


「はい。ルセット様。よろしくお願い致します」

クレアは一度ニコッと笑ってから、

「では、ノア様。私はこれで失礼致します」

と言うと、部屋から出て言った。


…少し、顔が赤かった気がしたけど、気のせいだろうか…?




コツコツコツ…

珍しく靴の音を響かせてクレアは長い廊下を歩いていた。


「…なんてこと、なんてことなの…」


ルセット様があんなにカッコいいなんて聞いていない。

それに、あの笑顔。

私に、私だけに向けられた、あの笑顔と、私の名前を呼ぶ声。


"クレア様"


落ちてしまった。


あーーーーっ。どうしましょう…。

顔があつくて仕方ないわ。

これが、これが一目惚れと言われるものなのでしょうか…?


クレアは髪と同じ色に顔を染め、頰に両手を当てて、廊下の隅にうずくまっていた。




ここまで、マリア先生、空気です。

ルセットの後ろでずっとにこにこしてます。

「ルセット様。成長しましたわ」と、思いながら。

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