表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

1章 4話 「ギワク」

「要するに、だ。」


情報が頭に入ってこず、混乱している俺にサーベスは続ける。



「ワシ達はあんたと奴らの関係を疑ってる。血縁関係か、それともまた別の関係か……そこはわからねぇが、あんたらの姓はおそらく同郷のものだろう?残念だが、奴らと似たような姓を持つものは、お前以外に1人も見つかっていない。つまり容疑者は今のところあんた1人だけってことだ。」



俺は震えた。冗談じゃない。俺が異世界に飛ばされたのは、4日ほど前のことだ。数週間前の襲撃に関与できるはずがない。それに、その2人のアサギリを名乗る者達にも覚えは無い。俺の親族で数週間前から行方がわからない人なんていなかったし、学校にもどこにも、同じ姓を持つ人は俺の知る限りいなかったはずだ。


テレグが口を開ける。


「最も、あなたと襲撃犯の容姿は、黒髪だという点しか共通点がありません。疑わしいことに間違いはないのですが、あなたと言葉を交わした僕には、犯人だとはあまり思えない。ですが、疑惑を晴らす証拠がない以上、このままあなたを無罪として解放することはてきないんです。」


不服だが納得せざるを得なかった。やった証拠もやっていない証拠も無い以上、そう容易には決められない。今のところは、姓が同じというところしか疑う理由はないのだが、犠牲者が多く出ているからこそ、怪しいものは全て疑う必要があるのだろう。


サーベスの険しい目つきが次第に、見定めるような、俺を吟味するような、そんなものへと変わる。


「ワシはな、目を見りゃそいつの人となりがなんとなーくわかる。伊達に長生きしてねぇからな。─────あんたはやってねぇ。少なくともワシはそう思う」


俺は胸をほっと撫で下ろした。よかった、このまま容疑者として一生疑われるのかと思った。自分のことを信じて貰えないというのは辛いものだ。俺は安堵のため息をつく。


「よかったぁ………お前たちは、俺を犯人だと思ってるわけじゃないんだな。」


テレグとサーベスが頷く。しかし、テレグもサーベスもばつの悪そうな顔をしている。


サーベスが苦しそうに話す。


「ワシ達はそうなんだが………国のお偉いさん達がな、あんたが犯人だと決めつけてかかってる。全く、金と権力に溺れたクズはマトモな判断のひとつもできやしねぇ!」


「副団長、言葉を慎んでください。その意見には僕も激しく同意しますが。」


どうも彼らに指示を出している貴族や王族は、私腹を肥やしてばかりで腐ってしまっているようだ。


「というわけで、だ。」


サーベスが俺を真っ直ぐ見つめる。


「ワシ達が何とか上に掛け合って、あんたの容疑を晴らす為の条件を取り付けた。何か一つでもいい。あんたが無実である証拠を持ってくれば、無実として解放するそうだ。」


「は?証拠??」


俺は面食らった。何を言っているんだ。証拠を持ってこれるならとっくにそうしてる。一体どうやって、自らの無実を証明すればいいんだ?俺がこの世界に来る以前に起こったことは何1つわからないというのに……


サーベスが忌々しいと言わんばかりの顔で話す。


「あんたが怖くて堪らねぇんだよ、あいつらは。だからこそ、持ってこれるはずもない証拠を要求してきて、あんたを処刑しようとしている。」



「っ………そんなのって、ありかよ………?」


どうすればいいのかわからなかった。証拠を見つけられる気など全くしない。俺はこのまま処刑されて死ぬのだろうか。嫌だ。死にたくない。どうして俺がこんな目に遭わなくてはいけないのだ。


顔も気分も、暗く深くへ沈んでいく。そんな俺とは対照的に、テレグが微笑みかけてきた。


「安心して下さい。一人で行かせるわけないじゃないですか。僕も着いて行きますよ。」


「何だって?それ、本当か!」


俺は喜んだ。当然だ。この世界についてよく知っている者、しかも騎士が着いて来てくれるのだ。その安心感は半端じゃない。


「えぇ。あなたを監視する、という名目ですが………素性が不明な点は怪しいです。でもあなたは、路地裏で輩に絡まれて伸びていたんですよ?」


テレグがクスッと笑う。


「そんな人が、村の襲撃犯の仲間だなんて考えられません。」


俺は猛烈に恥ずかしくなった。


「そ、そのことには触れないでくれよ!自分が情けなくなってくる…」


「ふふっ……とにかく、です。僕も力を貸します。だから、僕にあなたの事を信じさせて欲しい。一緒に証拠、見つけてやりましょう!」


「────!あぁ!!」


俺が異世界に来て、最初に出会ったのが彼でよかった、と本当に心の底から思う。彼にはずっと世話になりっぱなしだ。


そんな俺たちを、サーベスが羨ましそうに見つめる。


「クソぅ………ワシも一緒に行ってやりたかったんだがなぁ……クソったれどもに止められちまった。あいつらからしたら、あんたには死んで欲しいだろうからな。ワシには手伝わせたくないんだろう。」



確かに、サーベスが着いて来てくれたら更に楽になるだろう。だがその一方で、粗雑な彼と一緒に無実の証拠を探すとなると、かなり苦労しそうなのも事実。


「サーベスには悪いが、一緒に来るのがテレグでよかったよ。」


と、ニヤリと笑みを浮かべながら言う。するとサーベスもそれを返してくる。


「ほーーーう?それはどういう意味だァ?小僧…」


「ははっ、冗談だよ!2人には本当に感謝してるさ。」


ふんっ、とサーベスが笑いながら鼻を鳴らす。


「期限は72時間だ。それまでに無実の証拠を見つけて来い。あんたが晴れて無罪になったら、飯でも奢らせてくれや!」


本当に、この2人には感謝してもしきれない。会って間もない俺にここまでしてくれたのだ。なんとかして無実を証明しなければ。



「あぁ、任せろ!必ず証拠を掴んで、疑いを晴らしてやる。さぁ行こうぜ、テレグ。まずは情報収集だ!」


「えぇ!」


そうして俺とテレグは、72時間以内に無実の証拠を掴み、疑いを晴らすため外へと歩き出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ