1章 2話 「デアイ」
「う、うぅ…………」
目を覚ますと、そこはベットの上だった。偶然通りかかった人が、俺のことを助けてくれたのだろうか。起き上がろうとしたが全身が痛み思うように体が動かない。顔を触ると、包帯が巻かれている。───これは。包帯の上からでもわかる。決して良い訳ではなかった俺の顔が、コブで大変なことになっている。あのチンピラめ、恨んでやる……と思っていその時。
*ガチャリ*
ドアの開く音が聞こえた。体が動かないので顔だけを向ける。そこに立っていたのは、腰に剣を携え、細身ながらも筋肉質で、凛々しい顔をした白髪の男だった。
「おや、気がつきましたか。怪我は大丈夫ですか?最低限の手当てはしたつもりなのですが…」
この包帯は彼が巻いたものらしい。異世界に来て不安だらけだった俺にとって、たとえ最低限の手当てだとしても、そこから彼の優しさを感じることができて心に染みる。
「あぁ、お陰様でそこまでひどくはないよ。あんたが手当てをしてくれたんだな、ありがとう。」
俺がお礼を言うと、彼は少し照れくさそうな顔をする。かと思うと、すぐに先程の凛々しい顔に戻った。
「さて、目覚めたばかりで申し訳ないのですが…なぜあなたがああなったのか、事情を詳しくお聞かせ願えますか?」
なるほど、目の前の彼は善意の一般市民、という訳ではなく、王国の騎士、と言ったところのようだ。市民が俺のことを見かけて報告してきたということなのだろう。
「あぁ、大丈夫だ。」
俺は彼に事情を話す。道を歩いているところをチンピラに絡まれ、ボコボコにされた、という情けなさすぎる話を。
「なるほど………申し訳ありません、あなたがこんな目に遭ったのは、私達騎士団の力不足故です。もっと治安維持に尽力していれば……」
「いやいや!そんなことはないだろう。頼むから謝らないでくれよ。倒れていた俺のことも助けてくれたんだし。」
「…………あなたは優しいのですね。」
その言葉、そっくりそのままあんたに返してやりてぇよ!こんなに良くしてくれて、俺はもう既に涙が出そうだ。
「ところで、お互い自己紹介がまだでした。
───────僕はラルドリア王国騎士団所属、テレグ・アルフォンスです。以後、お見知り置きを。」
「俺は朝霧隼だ。本当に色々ありがとう、テレグ!」
俺が自分の名前を名乗る途端、テレグの顔色が変わった。その目には警戒心があらわになっている。
「………アサギリ、シュン……?
失礼ですが、あなたの出身は一体どちらでしょう…?」
俺は答えに詰まった。俺はこの世界にどんな国があるかなんて知らない。ラルドリア王国出身を名乗っても、騎士団でこの国と関わりの深い彼にはすぐに見破られるだろう。
「………えっと、ここから遥か遠く、かな…?」
彼の顔が更に険しくなる。どうやら警戒度が上がったようだ。どういうことだ?俺の名前になにかあるのか?
「………………………」
テレグは黙ったままだ。先程までの優しい青年はどこへやら、今俺の目の前にいる彼は、優しさではなく明確な敵意を俺に向けている。
「俺の名前、なんかおかしいか……?」
「………申し訳ないのですが、あなたを牢屋へ連行しなくてはいけません。副団長に会わせないといけなくなったので。」
理解ができなかった。どうしてそうなる?俺は何もしてないし、何かできるわけがないだろう。さっきまでチンピラにボコボコにされてぶっ倒れてたんだぞ?そんなことを考えている間に、俺はテレグに牢へと連行されるのだった。




