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1章 1話 「イセカイ」

「イセカイ?一体なんだそりゃ?」

おっさんが間の抜けた顔で聞き返す。


あぁ、なるほど…

どうやらこの世界では異世界人というのは世間一般で知られている存在ではないらしいな。



「あぁいや、気にしないでくれ。それより聞きたいことがあるんだ。ここはなんていう国なんだ?」



ひとまずこの世界についての情報が欲しい。このおっさんは人も良さそうだし、聞いても大丈夫だろう。



おっさんは怪訝な目で俺をじろじろと見てくる。



「なんだって?お前自分がどこにいるのかわかってないのか?…………ここはラルドリア王国の城下町、リアスだ。頭でも打ったんじゃないのか。」



ラルドリア王国…リアス…なるほど、

さっぱりわからん。正真正銘ここは異世界みたいだ。



「いや、俺は至って健康だよ。心配してくれてありがとうな、おっさん。」


「おっさんって…俺ァまだ32だ!ったく……ま、何事もないならいいんだけどよ。気をつけろよ!馬に轢かれて死んでも知らねぇからな。」


「すまない、ありがとう!」


おっさんが馬車に乗って去っていく。第一村人があのおっさんでよかった。どういう世界観なのかわからないけど、これでもし盗賊だとかと出会ってしまっていたら今頃俺は殺されていたかもしれない……というのは考えすぎだろうか。





ひとまず俺は歩き出すことにした。立ち止まっていても何も始まらない。少し歩くと人も建物も増えてきた。城下町と言うだけあって、ここはかなり発展しているようだ。それにしても……周りを見渡すと獣人だったり、エルフだったりと、多種多様な人種が歩いている。まさに異世界って感じだ。



そんなことを考えながら歩いていると、誰かにぶつかった。


「っと、すんません。」


咄嗟に謝りつつ、相手の方を見ると───

決して綺麗とは言えない服に、目つきの悪い顔。チンピラという言葉がこれほど似合うヤツも中々いないだろう。


「おいおい、それが人に謝る態度かよ??」


まずい、キレてる。俺は喧嘩なんて当然したことないし、神様からチート能力を授かったという感じもしない。ここで喧嘩になれば間違いなくボコられる。


「いや、本当にすみません。これから気をつけますので…」


頼む、このまま見逃してくれ。喧嘩なんてしたくない。勝てる気もしない。


「気をつける気をつけないの問題じゃないんだよなぁ〜?俺が不快な思いをした、それが問題なんだよ。それなりの誠意を見せて貰わないとなぁ?」



あぁ、こりゃダメだ。完全にこいつ俺の事殴る気だ。




俺は人気のない路地裏に連れ込まれた。

これが可愛い女の子だったらよかったんだが…いや、それはそれで美人局かもしれないしダメか。



「おうおう、誠意を見せるにはどうすればいいかわかるよな?金、出せや。」


まずい。異世界の金なんて持ってる訳がない。俺は一か八か、ポケットに偶然入っていた63円をチンピラに差し出してみる。


「すみません、本当にこれしか持っていないんです。どうかこれで勘弁してくれませんか…?」


チンピラの顔が真っ赤に染まる。どうやら自分が馬鹿にされているんだと受け取ったようだ。


「……………どういうつもりだ……舐めてんのかテメェ!?」


チンピラの拳が俺の左頬へと炸裂する。


痛い。熱い。初めて殴られた。殴られるとこういう感じがするのか、なんて呑気なことを考えていると──


2発目、3発目、その後も拳の雨が降り注いでくる。俺を殴りながらチンピラが叫ぶ。


「偽モンの金を出せば喜んで帰るとでも思ったか!?残念だったな、俺はそこまで馬鹿じゃねぇんだよ!」


痛い。痛い、痛い、痛い、痛い。どうして俺がこんな目に遭っているんだ。大人の言うことも親の言うことも聞かずに、自堕落な生活を送っていた報いということか。わからない。それがそんなに悪いことなのか?どうして俺なんだ。どうして俺だけなんだ。わからない、わからない。痛い、痛い。辞めてくれ。頼む辞めてく──────


みぞおちに1発。強烈な一撃を喰らった。そこで俺の意識は闇へと沈んでいった。

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