35 勇者と荷物番
────……コシコシコシ……。
サラサラと穏やかに流れる川の横で、俺は洗濯物を丁寧な手付きで洗っていた。
そしてそれが洗い終わると、洗い物カゴの中にポイっと放り込みそれを持って拠点にしていた所へと戻る。
グツグツと煮物を煮込んでいる鍋の横を通り過ぎ、木と木の間に結ばれている紐に洗濯済みの服達を括り付けた。
「洗濯物よ〜し!後はお昼の時間だぞ〜!」
ウキウキしながら煮物を煮込んでいた鍋の蓋を開けると、フワッと香るカボチャのいい香りに、自然と笑みが溢れた。
直ぐに出来上がったカボチャの煮物を棒で突いてみたが、煮崩れはせずに力を入れると抵抗なく入る。
「フッ……我ながら天才的な出来だ。美味しそ〜……。」
棒に刺したカボチャをすぐにでも食べたかったが、必死で我慢しながらせっせっとお皿に盛りつけた。
そして、続いて別のお皿に山菜の醤油スープ、鶏肉のチーズホイール焼き、毟ったレタスとトマトのサラダに、キノコの炊き込みご飯をよそう。
「よしっ!完成〜。じゃあ、そろそろかな〜?」
それらを全て木製のテーブルに置いて席に座ると、予想通りある人物が背後から現れ、覆いかぶさる様に抱きついてきた。
「美味しそうな匂い。今日のご飯は何?イシ。」
幸せそうに笑うヒカリ君は、俺の後頭部に顎を擦り付けながらそう言った。
俺が本日のメニューを教えてあげると、パァ!とこれまた嬉しそうに隣の椅子に座って、『待て』をする。
少し離れた後ろをチラッと見れば、俺の身長より大きな霜降り肉の固まりがドドンッ!と置かれていて、ヒカリ君が、どうやらそのお肉のモンスターを狩り調理しやすい肉の固まりにして持ち帰ってくれた様だ。
お腹一杯の霜降り肉!
俺は異世界にて、また一つ夢を叶えてしまった様だ。
ニコニコしながら、夕飯は霜降り肉に塩コショウ、そしてサラダを添えて〜と次に献立メニューを考えながら、二人揃って両手を叩く。
「「頂きます!」」
同時にそう言って眼の前の美味しいご飯を食べ始めた。
『見たことのない景色を見続けたい』
そんな俺の願いと『ご飯が食べたい』ヒカリ君の願いが奇跡のマッチングをし、その2つを叶えるために俺たちの旅は続く事になった。
王様やシンさん、その他の財産とその他を吹き飛ばされた人達は喜んで顔を縦に振り、快〜くそれを承諾してくれたのだが、アイリーン達はまだまだ諦めない!
そのため俺は、手に持つアイリーン達のパンツをヒカリ君に渡し、遥か彼方まで飛ばして貰った。
そのままスゴイ勢いで追いかけていったから、多分見つかるまでは邪魔してこないだろう。
ツンツン期を見事に卒業したヒカリ君は、食に貪欲になっていき、アレヤコレヤと様々なモノを食べたがるし、素材を取りに行かない時は一緒に料理を作るまでになった。
この世界は広く、俺が見たことない景色もヒカリ君が食べたことがないモノもまだまだ沢山ある。
だからもしかしたら一生旅は続くかもしれない。
パクパクと美味しものを食べながら、俺とヒカリ君はその美味しさに感動し同時に震えた。
勇者ハーレムパーティー改め、勇者ヒカリ君と荷物番のイシ。
これはそんな俺達のお話。




