↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラ・ライゼンは諦めない~スーパーロボットが作りたいので魔法世界も魔改造していきます~  作者: アラタアケル
第三章『リックドラック・サンディルムは屈さない』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/188

3-18「護衛依頼」

「……あー、改めて今回は本当にご苦労だった。お前たちの尽力に感謝してもしきれん」


 リリディア神聖国との戦争を勝利で飾ってから二日。

 サンディルム卿は主要メンバーであるレイニー、キミーク、アイザーに我を加えた四人を招集していた。

 主題についてはぼかされていたが、戦闘後に何事かの決心を口にしていた事を思い返せば自ずと内容は推察できた。


「さて、その一大決戦を経て、俺から皆に二つ、伝える事がある」


 サンディルム卿の発言に、我を含め皆が耳を傾けていた。

 半ば部外者たる我以上にレイニーたちの方が真剣なのは当然だろう。


「まずコンラッドの処遇だが、リリディア神聖国に還す事にした」


 初っ端から爆弾発言が飛び出し、周囲に動揺が広がった。

 我も正直驚いていた。苦労して捕えた敵の大将をあっさり逃がすとは、流石に想像していなかった。


「は? 本気ですか!?」

「何故です!? 彼奴はル・ロイザの宿敵とも言える敵ですよ!」


 少なからぬ因縁を持っているであろうキミークやアイザーが我以上の驚愕と反対を示すのは当然の事だろう。

 レイニーさえ沈黙を保ちながらも、サンディルム卿の発言に不満を抱いている様子だった。

 当のサンディルム卿はといえば周囲の反感もどこ吹く風、何故か我と目を合わせていた。


「……今回の勝因の一つは、そこにいるサクラだ。純粋な俺たちの勝利とは言えない。

 それに命の保障をした相手をいつまでも飼い殺しにするほど余裕があるわけでもないからな。

 とっとと返して身代金の一つも貰う方が得だろう。兵達に払う給金も必要だしな」


 兵隊を動かすのにも金がかかる。行軍だけでも食糧を筆頭に物資は必要になってくるし、兵士も慈善行為で戦ってくれるわけではない。故に給金の捻出手段を模索するのはわかる話ではある。

 敵の大将首……それも有用な存在ならば、相応の価値で取引できる事も想像に難くない。


 だが。

 此度の戦はあくまで戦争だったはず。そこに大義や信念を持ち込むのはともかく、誇りは不要のはずだ。


「……我を体のいい理由に仕立て上げるのはやめい。主の本心を話せばよかろう。

 少なくとも、ここにいる連中はそれを受け入れぬ小さき度量の持ち主ではあるまい?」

「分かってるよ。だが、建前も一応言っとくべきだろ」


 ダシに使われた不満を述べると、サンディルム卿は苦笑しながら軽い謝罪の仕草で返してきた。

 別に我も本気で苦言を呈しているわけではない。建前が求められるのも分からぬではない。


「もっと上手くやれと言っているのだ」

「あー、そういうのも含めて、俺には才能がねぇって事だな」


 我の不満を端的に語ると、サンディルム卿は痛い所を突かれたといった風に頭を掻いた。

 話についていけないのかキミークは困惑した様子で我とサンディルム卿の会話を見守っていた。


「ええっと……」

「おっと、話が逸れたな。まぁ、サクラの言う通り今のは建前だ。

 本音を言えば、アイツと戦うのが楽しくなっちまった。だから返す」

「それはあまりに無責任では!?」


 あまりに軽々しく本音を投げかけられ、キミークは少し怒り気味に声を荒げた。

 アイザーは何を思っているのか表情を見せず、レイニーはどちらかといえばキミークに同調するように眉根を寄せている。

 問題発言をした当の本人はといえば、あっけらかんとした態度で続く言葉を繰り出した。


「そうだな。だから、俺はその責任を取って領主の座を降りる事にした」

「はぁぁ!?」


 さらりと述べられた辞意表明を受け、キミークの驚嘆の叫びが室内に反響する。


「……なるほど、それこそが本心ですか」


 一方で、アイザーは合点がいった様子で頷いていた。レイニーもまた、嘆息しつつも状況を理解したようだった。


「この五年、お前たちを頼って何とか形を保ってきたつもりだが、やっぱり俺は心の底から傭兵らしい。

 だから昨日、本国に領主を辞める旨と代わりの領主を連れてこいって手紙を送っといた」

「な……」


 既に結論は覆らない事を強調する。

 そう簡単に撤回できるようなものなのか、とも思うがアルディス竜帝国は強者こそ尊ばれる国だとすれば、案外認められるものなのかもしれない。何せ、サンディルム卿自身あまりに貴族らしくない貴族なのだから。


「あぁ、安心しろ。引き継ぐまではちゃんと仕事はするし、お前たちの今後についても希望は極力叶えられるよう尽力する。だから今の内にどうするかは考えておけよ」

「……大将はどうするおつもりで?」

「レーミアの生まれたこの地を守る……それは変わらねぇ。だが、領主としてじゃなく傭兵として全うするつもりだ」


 つまる所、領主に飽きたという話なのだろう。

 才能が無いというのも責任云々もひっくるめて建前だ。

 でなければ五年もの月日、市民から然したる不満が出る事もなく国境都市を守り抜く事など出来はしまい。


 愛した妻の為に街を守る意思はある。しかし、その為に街の全てを率いるのではなく、個として戦いたいというのがサンディルム卿の本音なのだ。


「……そういう事であれば、私も変わりませんね。今まで通り、大将の下で戦うだけです」


 逸早く事態を受け入れる事を示したのはアイザーだった。


「お前は変わらんなぁ」

「道は違えましたが、私もリーベンも本質は一緒ですよ。大将の強さに惚れた。だから傍にいるんです」


 そういえば裏切ったリーベンも、サンディルム卿の強さに尊敬と失望を抱いたような事を話していた。それほど人を惹きつけるものがあったのだろう。実際、傍で見ていた我もサンディルム卿の強さには舌を巻いた。我のフォローもあったとはいえ、ほぼ無傷で数百人と相手取ったのだ。しかも我と違って余力もまだまだあったように見えた。


 そこまでの強さ、戦士であれば惹かれない方がおかしい。


「ま、好きにしてくれ。キミークはどうだ?」

「わ、私は……今まで通り、この街を守る騎士であり続けます」

「おう。立場は変わるが、これからもよろしくな」


 次いでキミークは急に話を振られ、つっかえながらも変わらない事を告げる。

 サンディルム卿の視線は我へと移った。


「サクラはこの街を出るんだろ?」

「そうだの。少々騒がしくなりそう故、ここらが潮時と考えておる。

 当てはまだ無いが、急ぐ旅でもなし。行き先はのんびり決めるつもりよ」


 我もまた既に結論を出している。

 竜人である事が広く知れ渡った今、外野が騒ぐのは仕方ないが煩わしいのも事実。

 それに、ル・ロイザに引きこもっていてもスーパーロボットは完成しない。ならば進展を求めて新たな地を目指すのは必然だった。


「そうか。お前さんには世話になった。この腕とかな。

 だから困った時はいつでも助けに行ってやる」

「なに、気にする事は無い。我が好きでやった事よ」


 義理堅い言葉は嬉しくあるが、我はあくまでスーパーロボットの開発の試験的な意味合いで作ったに過ぎない。

 スーパーロボットと言えば、やはり内蔵武器だ。それも腕が飛ぶというのは古典にして至高。ロボットらしさと力強さを一発で表現する最高の武器といえよう。

 これを単純に巨大化すれば完成、とはいかない。重量や出力などの問題もあるし、何より今回作成したのはあくまで魔道具。魔力を用いない事を絶対条件と定めた以上、このままではダメなのだ。


 だが、だからといって全く無意味だったわけではない。

 今回こうしてサンディルム卿の役に立った事は勿論、スーパーロボットの素晴らしさの再確認もできたし、スーパーロボットの完成へと至る可能性も垣間見れた。

 我としては非常に満足のいく結果だったといえる。


 それ故の本心からの返答だった。

 サンディルム卿がどこまで我の思惑を理解しているかは分からなかったが、一先ず納得した様子で最後の一人に目を向けた。


「んで、レイニー……お前はどうする? 答えは決まってるんじゃないのか」

「私は……」


 レイニーは言葉を詰まらせていた。


「ちなみに、新しい領主には権謀術数が上手いやつを頼んである。お前の出番はもう無いかもな」


 レイニーからの返答が無いのは織り込み済みと言わんばかりに、サンディルム卿は追い込むような言葉を追加した。

 その話がどこまで事実かは分からないが、まるでレイニーを辞めさせたいとでも言いたげだ。


 レイニーはただじっと俯きがちに佇むだけだった。

 キミークはおろおろしながら口を挟むべきか迷っているようで、アイザーはただ推移を見守っている様子。

 我も二人と同じで、事態を静観するに留めた。


 サンディルム卿が悪意でこんな発言をする人物でない事は既に十全と分かっている。

 ならば、何かしらの意図があると見て然るべきだ。

 それが分からない内は、下手に口を挟んでも無駄な混乱を招くだけだと思われた。


 しかして、レイニーはそれ以上発する言葉を持ち合わせていないように、沈黙を続けた。

 先に痺れを切らしたのはサンディルム卿だった。


「……まぁ、とにかくこれで俺からの話は終わりだ」


 話の終わりを告げられる。レイニーとの話は途中だったが、先延ばしにするつもりのようだ。

 それならそれでよし。このまま沈黙を続けるだけでは空気が悪くなる一方だった事もある。


「解散しよう。皆、ご苦労だった。今日は自由にしてくれ」


 そうして、サンディルム卿は全員の退室を促す。キミークがレイニーを連れて先に、アイザーがその後へと続く。

 我も出ようとしたところで、背後から声をかけられた。


「おっと、サクラ。お前に話がある。残ってくれないか」


 アイザーがぺこりとお辞儀をし、扉を閉めた。部屋には我とサンディルム卿のみとなる。

 サンディルム卿は隠そうともせず大きなため息を吐いた。緊張の糸が切れたようだ。

 その様子から、話の内容は優に推察できる。


「ふむ。話とはレイニーの事かの?」

「察しが良いな……と、言いたいがそれはアイツの問題だ。俺が関与する事じゃない」


 おや。

 推察は外れていたらしい。

 今の流れからして、間違いないと思ったのだが。

 そうなると心当たりがまるで浮かばず、首を傾げるしかなくなる。


「む。ならば何だ? その腕のメンテナンスに関してなら書類を用意してあるはずだぞ」


 旅立つに当たって他に問題になりそうな事と言えば、我の設計したブースターストームナックルくらいだが、メンテナンスの方法は既に書面に記してある。レイニーなら容易だろうし、街の魔道具屋でも十分にできるくらい詳細に記載したはずだ。


「違う違う。それも有難いが、話って言うのはミリーの事だ」

「主の娘か……はて、話が見えんぞ」


 ミリーと言えば先日人質となったサンディルム卿の娘だ。我が関わったのもその時だけでしかない。

 このタイミングで話題になる理由は皆目見当がつかなかった。


「率直に言う。お前の旅にミリーを連れて行ってやってくれないか」

「……うん? いや待て。何故そうなるのだ?」


 別に同道を拒否したいわけではない。本人とは面識が無いと言っても過言ではないが、サンディルム卿とはそれなりに付き合いが出来た以上、信頼を得ているのも分からなくもない。

 だが、だからといって一人娘を赤の他人においそれと預けられるものだろうか。

 ましてや、我は旅も不慣れ、行く当てもなく、魔法という万能の力も使えない。大切な娘を預ける相手としては不足が過ぎると思うのだが。


「ミリーがそれを願ってる。厳密には、各地を旅する事をだな。そうなると当然、護衛が要る。

 で、一番信頼できそうな相手がお前ってわけだ」


 身内にさえ裏切られた今となっては、周囲に疑いの目を向けてしまうのも分からなくはない。

 下手な冒険者を雇うよりは見知った相手の方が安心できるというわけか。

 サンディルム卿にはブースターストームナックルを与えた恩恵もあるが、その分以上に世話になってもいる。恩を返すという意味では、我にとっても都合がいいかもしれない。


 話しぶりからして、我を候補の一人として選んでいる事は当人にも伝わっているのだろう。それで断られていないのならば、引き受けるのはやぶさかではなかった。


「話は分かった。我としては、別に構わんが……本当に良いのか?

 可愛い子には旅をさせよとは言うが、幾らなんでもまだ幼かろう」


 ただ懸念はあった。それを率直に訊ねてみる。

 ミリーはまだ、前世の感覚で言えば小学生か中学生に上がる頃合いの子どもだ。旅に出るとなれば危険が付きまとう。魔物だけでなく、盗賊などの人災もあり得るだろう。守る為には戦うしかない。人が傷つき、死する姿を間近で見る衝撃は如何ほどの物か。

 いつかは経験することかもしれない。だが、早すぎるのではないか。


 我の問いかけに、サンディルム卿は口元を苦々しく歪ませた。


「それは……そうなんだが、言い包められた。実際、俺が傭兵になるって家を飛び出したのも同じくらいの頃でな、それを思うと強く言えん」


 サンディルム卿自身が成功した証明になってしまっているという事か。

 もしミリーがその経歴を知っていたら、尚更強く出られなかったのも頷けなくはない。


「……主とミリーが納得しておるなら、我がどうこう言う事ではないか。

 だが、責任は持てんぞ? 知っての通り、我は出来ない事の方が多い」


 あとは確認だけだ。本当に我を頼る事に後悔は無いか。我としても協力を惜しむ気は無いが、万能ではないと知っているが故に責任は持てない。


 サンディルム卿には不安をぶちまける事となったはずだが、何故か彼はニヤリと笑っていた。


「十分だ。それに、出来ない事のフォローには打ってつけのやつがいるだろ」


 まるで『そちら』の方が本命と言わんばかりの口調だ。

 その発言に我は嘆息する。我の推察は正しかったと言う事だ。


「なんだ、結局そうするつもりなのではないか」


 それ以上の確認は必要なかった。

 我とサンディルム卿は互いに微笑み合い、この話は終わりを告げた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。