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スモール4  作者: 木下すいか
1章
23/24

VSドラゴン 後半戦

 倒れてきたドラゴンの図体を俺は連撃を途中で止めて一歩退くことでかわす。

 さすがは俺の大臀筋。

 スクワットやデッドリフトで何年も鍛えた甲斐かいがあるというもの。

 倒れてきただけの相手をなんなくかわせた。


 俺たちはその身を地面へと落とした相手に向かってひたすら斬撃をくらわせる。


「ヴォオオォォォォォォォォォッ!?」


 なんか、2対1で一方的に集団暴力リンチしているみたいでちょっと、申し訳なさ感じるんだけど、果たしてこんなんでいいのだろうか。

 まあ、種族が違う敵同士、さすがに仕方ないだろう。


 やらなきゃこっちがやられるんだから。

 しばらくしてからやっと、その身の翼をはばたかせて、俺たちの攻撃から身を逃れたワイバーンは上空へと高度を上げる。


 あぶねー、ワイバーンがブレスを吐けないドラゴンで良かった。

 上空に行かれたら、俺の攻撃手段なんか何かしらの道具に頼るくらいしかないだろうし、ドラゴンのブレスなんて物騒なものを一方的に浴びせられるなんて恐怖体験をする覚悟は今のところは御免被ごめんこうむりたい。


 すると、上空へ飛んだワイバーンは身体の向きを変えて、岩場の方へと向かってしまった。


「あら、拍子抜けね。きっと、第8地区に向かったんだわ。第7地区も近くにはあるけれど、そこにはモンスターは入れないでしょうからね」


 最悪の想定として、ワイバーンからうまく逃げるために、第7地区のモンスターが入れない洞窟のような場所に逃げ込むことも二人で打ち合わせておいたが、そこは使わずとも済みそうだ。

 まあ、近いと言っても、他の地区に移動するよりかは近いというだけあって、ただ一目散に敵から逃げようとして、果たしてそこまで逃げきれていたかは甚だ怪しいくらいの距離があったが。


 今も水浴びしているスライムがいる湖の近くに洞窟へとつながる入口がある。




「しばらく待って、ワイバーンが眠ったところを爆弾でとどめを刺すか」


 俺はワイバーンが油断して体力を回復するため眠りにつくまで少し待つことを提案した。

 そうなると先ほどと同じように体力の回復をしながらも持て余した時間をつぶすためにトークタイムに移ることになる。

 俺の爆弾発言に琴葉は嫌な顔をした。


「また、あれをやるのね。あんまり趣味じゃないのだけれど」


「そうか?俺は好きだぞ。爆裂。それも、かなりな。さっき話した、町田と一緒に俺が小さい頃読んだって言った本あるだろ?あれのタイトルが『このズバ?』ってやつでな、そこの攻撃しか能がないドS女魔法剣士が使った爆裂パンチっていう必殺技が最高だった」


 俺は妹に一度したきりで封印していたオタク語りを数年ぶりに唐突に始めた。

 今ならしても良いだろうと思ったからだ。


「……。剣士なのに、パンチなのね」


「ああ、自分の身体など顧みずに、自身のその攻撃で殴った相手を爆裂させ、その衝撃波で自分も瀕死の重傷を負う。だから、その技は一回の戦闘で一度しか使えないんだ。そこまで含めてのその必殺の一撃に当時の俺は恍惚エクスタシーを感じた」


「なんだか無茶苦茶なようにも聞こえるけれど、きっと面白いのでしょうね。あなたがそんなにも嬉しそうな顔をして話すのだから……。私が見た中では、今のあなたが今までで一番楽しそうよ。私も少し興味を感じちゃうじゃない」


「元の世界に戻ったら、布教用の一冊をあげようか?」


「結構よ、さすがに自分のものは自分で買うわ。まあ……、どうしてもというのなら、受け取らない訳にもいかないのだけれど」


「いや、別に無理やりではないのだが」


「……そう。でもあれね。元の世界に戻れるとしても、それは果たしていつのことになるのでしょうね」


 そういって、天王院は遠くの空を見上げた。


「別に今すぐでも良いんだぜ?」


「は?あなた、何言って、まさかあなたが魔王だとでもいうのかしら?今すぐ串刺くしざしにされる覚悟があるのでしょうね」


 そう言うと、琴葉は鞘に入れた剣を抜きだそうと柄を握った。


「やめてっ!やめてね!人を魔王扱いするのやめてね?そんな身近なところに危ない奴がいたら、心臓に悪いでしょうが」


「じゃあ、一体なんだというの。ネメシスにお使いでも頼むのかしら?」


「あー、その手もあるのか。なんか頑張って、恩を売り込めばお使いくらいならあの女神だったらしてくれそうかもな」


 下界に降りることが出来るのならそれも不可能ではなさそうだ。


「考えついた私が言うのもアレだけれど、それはいかがなものかしらと思うのだけれど」


「でも俺が言ったのは『今』だぜ?ちゃんと言葉の意味を受け止めましょう、琴葉さん。国語の成績も学年一位なのでしょう?」


 俺は挑発した。


「なんなのかしら、生まれてから今までで一番腹が立ったのだけれど……」


 琴葉の髪が逆立っていた。

 こわっ!こわいよっ!それは怖すぎだよ。


 あ、風魔法発動させているだけか。

 まあ、それもそれで怖いのだが。


「お、落ち着いてくれ、俺がすぐにその小説の話を体験させられるというのはだな、俺がお前に読み聞かせるからだ」


 俺は必死に言葉を紡ぎ、鬼の形相をした彼女の怒りをなだめる。

 おかげで幾分か落ち着いてくれた。

 といっても風魔法を止めてくれただけで、彼女が放つ怒りの雰囲気はあまりうすらいでる感じはしない。


「どういうことかしら?その本がここに無いっていうのに。まさかあなた、愛読書過ぎて、姫花を助けに泳いでいる時にもその本を抱えていたとでもいうの?」


 俺は琴葉のことを、バカを見るような眼で、馬鹿にしようかと思ったが、その言葉を口に出した瞬間、俺はこの世界から強制ログアウトさせられそうな気がしたため、すんでのところで踏みとどまる。

 しかし、俺の態度は口を割らずとも伝わってしまったようで。


「なんなのかしら、その腐った目、まさか私のことを腐ったものを見るかのように見ているわけではないでしょうから、あなたの目は腐っているということにしておきましょう」


 何その分かりにくい言い回し。

 言語エラーでもしたのかな?

 でも俺は不思議とその言葉を聞いて少しクスっとさせられたため、平静を取り戻せた。


「俺が言いたいのは、本一冊くらいなら暗記しているから、一巻だけなら今からでも暗唱して聞かせられるってことだよ」


 やっと言えたわ。

 なんてまわりくどかったんだ、俺は。


 そしてその「言葉ことば」をきいた「ことは」は絶句。

 どうして?


「……呆れたわ。私の人生における一番の感情をこの短期間に二つも味わわされるなんてね。まさか一冊丸暗記だなんて。どれだけその物語に夢中なのよ。でも、まあ私もそういう熱中できるものがあるというのにはあこがれるわね。あら、また言ったわね。私はあなたに憧れてばっかりなのかしら」


「まあ、隣の芝生は青いって言うしな」


「はあ……。何というか、あなたと話していると退屈しないわね。それにさっきはレベル4のドラゴンにも対等にやりあえていたじゃない。形式上だとしてもあなたは一応Dランカーだっていうのに。まあ、私も負けるわけにはいかないから、もっと強くなるけれど、あなたも今の私と同じくらいの力を持っているってわけね。強くて、しかも一緒に話していると面白い……。それに私のコンプレックスまで聞いてもらってしまった。もう……、私あなたのこと──────わ」


 風が強く吹きつけた。

 最後の琴葉の言葉が上手く聞き取れなかった気がする。


「おい、今なんて?」


「ごめんなさい。私同じことを二度は言わないタイプなの」


 何そのめんどくさいこだわり。

 俺も一時期似たようなこだわりを持っていたことがあるから共感できちゃって、否定できない。

 それに、風のタイミング悪すぎるだろ。


 くそ!風め!


「そろそろ、行きましょうか。クエスト達成のためにドラゴンを倒しに行きましょう?」


「……ああ、わかった。行こうか」


 俺は少しのやりきれなさと、不思議な満足感を感じながら、先に歩き始めた琴葉の背を追うことにした。






 ズガ――――――――――ン!!!


「なんだかあっさりした終わりだったわね」


「まあ、俺たちが強かったってことで良いんじゃないのか?」


 ワイバーンは爆発でその命の鼓動を途切れさせた。

 さっきの中ボスとは違って、肉体が丸ごと消し飛ばず、多少残ってはいたが、皮膚は焼け焦げ、肉が所々消し飛んで、骨も一部が見え隠れしている状態だ。


 間違いなく倒した相手を見て、琴葉が言った。


「あなたのさっき言っていた本もこんな感じの冒険はあったかしら?」


「いや、こんな順調なのは無かったと思うな。まあ、でも他の異世界無双系は大体あっさり勝って終わるものだと俺は思うぞ?ちなみに『このズバ?』に関しては何もかも上手くいくという話は最後の最後までなかったな」


「そう……。でもまあ、今回のように、私は強いから、そんな展開は経験できそうにないかしらね。あなたには悪いのだけれど……。今回も無傷だったわけだし」


 え?マジ?無傷?さすがにそれは強すぎ。

 まあ、俺も最後の戦いが一番楽だった感はあるのだが。


「なにより私は、お互いが無事であるのならそれだけでも満足よ?」


「はっ、それは嬉しいことを言ってくれるじゃないですか。今のは、デレ成分ということでよろしくて?」


 俺はこれまでひたすらツンドラ気候にも、負けず劣らずにツンツンしていた彼女の態度がいくらか暖かいものになったのだろうかと期待を寄せる。


「でれ……、とは何なのかしら?ごめんさない。私もそれほどオタクというわけではないから分からないことも多いのよ。勉強しておくわ」


 違った。

 というか、知らなかったみたいだ。


「いや、別にわざわざ勉強せずとも……。というか、暗に自分とは違って、俺をオタクだって決めつけるようなその物言いはいかがなものでしょうか?まあ、別に呼び方なんて何でもいいけども」


「私は相対的な話をしただけで、決めつけてはいないのだけれど、やっぱり言葉の使い方はまだまだみたいね?私が教えてあげましょう」


 彼女は有無を言わさぬ態度で微笑むと俺に詰め寄って宣言した。


「決定事項かよ。まあ、ありがたいのでお願いするわ」


「それくらい、お安い御用よ」




 俺たちはクエストの達成を報告しにみんなのもとへと向かった。


ブクマ、評価ありがとうございます。

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