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スモール4  作者: 木下すいか
1章
14/24

飛行船への乗船

 次の日、魔法学校の保有している飛行船で俺たちはワイバーンの出現したとされる場所へと向かうこととなった。

 そんな船内に乗り込んだ矢先。

 うちの女神がまた一段と騒がしかった。


「なんで、こんな大所帯なんだ。私が最初にクエストを受注したのに。他の奴らは一体何なんだ」


 先ほどからずっと同じようなことに文句を言っているのはやはりネメシス。

 俺はさっき知ったのだが、ワイバーン討伐戦は危険なクエストのため、学校側は俺が今まで受けたことのあるような普通のクエストと違い、受注可能人数に制限をかけていないそうだ。

 そのため、現地へと赴く冒険者見習がっこうのせいといの数は多かった。


 そして、討伐報酬として、多くの賞金をもらえる人は最後のとどめを刺したパーティーのみ。

 後は、クエストに参加した報酬として、討伐報酬と比べると、少し見劣りがするクエスト報酬が与えられるとのこと。

 しかも、冒険者見習がっこうのせいといというのはクエスト報酬が本来の冒険者の報酬よりも大幅に少ない。


 もとの世界でいうところの税金として徴収される仕組みと似たようなものだ。

 冒険者に昇給しない限り、報酬は5割学校側に差し引かれる。

 差し引かれた分が、安全面や、授業の費用にあてがわれるらしい。


 飛行船の維持費や運送費などもそれにあたるのだとか。

 だから、ネメシスは家賃の月収を払う必要があるのに、それが厳しいと分かった現実に直面して心中、穏やかじゃないと見える。


「おい、このままだと、私の家賃代の工面はどうなるんだ。工面くめんしようにもラストアタックを勝ち取らないと私の家がなくなってしまう。女神なのにホームレスだぞ?」


 か、かわいそう……。

 貧乏女神にも程があるだろ。


「大丈夫よ、私がいるから、とどめだろうが、なんだろうが、余裕よ」


 自信満々に言い張るのは俺とネメシスの後ろから飛行船に乗ってきた天王院。

 船内にはすでに数十名の魔法学校の生徒がいた。


 この中には妹たちの姿もいるのだろう。

 彼女たちとは別々で飛行船に乗り込んで船内で合流することになっていた。

 俺はマレアと天王院と女神ネメシスとの4人と一緒に船へと乗り込んだ。


「それに多くの生徒は見たところCやD階級相当のやつらよ。雑魚がいくら集まっても雑魚に変わらないわ」


 おいおい、それは言いすぎじゃないですか天王院さん。

 しかも小声で俺に囁くように言ったのではなく、私がなんで遠慮しなくちゃならないのというくらいの態度と声量で言うもんだから、彼女の特徴である良く通る声と相まって周りの生徒たちに丸聞こえである。


 案の定、それに反応した生徒がいた。


「おいおい、お姉ちゃん、よく言ってくれるじゃねえか。こんな大人数にケンカ売って大丈夫なのか?」


 なんだか聞き覚えるがある声だと思ったら、昨日のパンケーキ屋で絡んできたC階級の生徒だった。

 まずい、この状況は。


「って、おい、あいつ昨日の奴じゃねえか」


 パンケーキ野郎の周囲には同じく昨日と同じ取り巻きがいた。

 あ、気づかれたわ。


「なんだと?……ホントだ。しかも昨日とまた違った女を二人も連れてやがる。くそっ、ハーレム野郎め」


 そう言って、男は昨日と同じように突っかかってきた。

 昨日の同じように俺の前には妹に代わって天王院が出てきた。


 ただし、昨日とは違うのは、彼女は俺をかばうというよりかは突っかかってきた男に突っかかり返そうとしている点だ。

 目には目を歯には歯を、って感じ。


「あら、私達に何か用かしら?」


 天王院が薄い微笑みを浮かべながら男に声をかける。

 場の温度が下がりそうなくらい冷えついた声色。


 しかし、彼女は男とは交錯しなかった。

 第三者が現れたからだ。


「ちょっと、ちょっと、これからみんなで仲良く冒険に出ようって時にいさかいなんて、ダメだよー」


 軽い調子の声音で人だかりの野次馬の中から現れたのはまさかの人物だった。

 それを見たパンケーキ野郎は顔をひきつらせた。


「って、おい、やべーぞ。山内サクラだ。あいつには嫌われたくねえ」


 男の取り巻きが言った。


「ちっ、しょうがねえ、今回は見逃してやる」


 パンケーキ野郎が悔しそうに言うと、その連れと共に飛行船のどこかへと消えて行った。

 野次馬もそれに合わせてりに去って行く。


「あら、私の向けた視線だけでビビって逃げたのかしら」


 天王院がこちらに振り返ってから目をつぶって、ふっと鼻で笑った。

 いや違うだろ、男たちの言ってた名前を聞いてなかったのか、名前。


「やー、やー、昨日ぶり、これで3日連続だね」


 サクラが手を振りながら俺の方へとやってきた。

 マレアの方にも彼女は目を向けてから言った。


「ワイバーンクエストに行くって聞いたから私も来ちゃった」


 彼女はそう言って、俺の連れであるネメシスと、天王院にも目を向けた。


「私、和人君とマレアちゃんのクラスのリーダーを受け持っている山内サクラといいます。苗字がこの世界のっぽくないことから分かるように私は異世界出身です。初めまして。よろしくね」


「よろしく」

「ああ」


 天王院とネメシスが順に応じた。


「サクラは転生者らしいんだ。俺達とは違って、転移じゃない。こっちはネメシスと天王院琴葉。こっちの彼女はaクラスの生徒だ」


 最初はネメシスの方が気になったっぽかったサクラだが、天王院がaクラスの生徒だと、俺が言うと感嘆の声をあげた。


「あー!天王院さんって和人君が言っていた、一緒にこっちの世界に来たって子だよね?aクラスだなんて、すごいなー。ちょっと、けちゃうかも。ねえ、私のこともサクラって呼んでくれていいから、私も琴葉ちゃんって呼んで良い?」


 初対面の天王院に一気にまくし立てて喋るサクラ。

 その調子にさすがの天王院も少し気圧けおされたのか、ちょっと、戸惑っているようだ。

 返事にもそのうろたえは現れていた。


「え、ええ、よろしく。サクラさん」


「よろしくねー、琴葉ちゃん」


 彼女らが自己紹介をした後、俺とサクラは今後の予定だとかを少し話し、その後、彼女と俺たちは別れた。


「なんだか、とても押しの強い子だったわね」


「おまえにそう言わせるだけなんだから相当なのかもな」


 俺は少し疲れた様子の天王院にそういった。




 しばらくしてから、俺たちは船内の散策で、飛行船の甲板に出ていた。

 生徒の数が多いとネメシスが先ほど嘆いていたが、そうはいっても、魔法学校の生徒と一部の関係者しかこの船には乗っていない。

 そのため、甲板に出てもほとんど人影はなかった。


「うわー、広いんだな」


 俺は甲板の広々とした空間と、外の景色の雄大さに感嘆の声をあげた。


「和人は初めてなのかしら」


 天王院はあまり興味がないといったふうで一応聞いてきた。

 彼女はaクラスの生徒のため、何度か遠方へ高難度のクエストを受けてきたことがあるらしい。

 その時にでも何度か飛行船を使ったことがあるのだろう。


「私はよく天界から見ている景色だから特に何も感じないな」


 これはネメシスの言葉。

 まあ、神なんだからそうなんだろう。

 それにしては、下界の持ち家の家賃の支払いに苦悩しているみたいだが。

 スケールが大きいのか小さいのかわけがわからないやつだな。


 すると、残ったマレアはどうなんだろうと思って、俺が目を向けると、マレアは何か俺達とは違う方向を見ていた。

 彼女の視線の先は物陰へと向かっていた。

 俺も何かあるのかとそちらに目を凝らしてみる。


「あれ、カルバとモドリ―?」


 マレアが言った。

 そう、なんだろうか?

 その割にはなんか様子がおかしいような。


「行ってみようか」


 俺はマレアに問いかけて二人で行ってみることにした。




 カルバがモドリ―にちょっかいを出しているところだった。

 というよりも、正しく言うならセクハラ?に近いような。

 何をしているのだというのか。


「モドリ―!ねー、いいでしょう?神楽が兄を探しに行ってるおかげであなたをもてあそぶすきが出来たんだから」


 そういって、モドリ―がカルバの胸元辺りを抱きしめていた。

 こ、これは話に聞く百合、なのか?

 おいおい、妹の神楽と同じパーティーの二人が百合だというのなら、俺の妹にもその気質があるというのか?


 しかし、俺の心配はおそらく杞憂だったよう。


「ダメ―、カルバ落ち着こう。昼間から酒に酔って、絡まないでよ」


 そういって、モドリ―はカルバに抵抗していた。

 カルバの足元には酒瓶が転がっていた。

 彼女は酔っているようだ。


「いいじゃん、減るもんじゃあるまいし。私モドリ―が好きなのは変わらないよー。モドリ―だけが、私を認めてくれるの、モドリ―がいなくなったら私おかしくなっちゃいそう」


 もうすでにおかしいんですが。

 俺はそう思って止めに入ることにした。


「おい、何してるんだ?」


「んー?だーれー?」


「あ、神楽の兄の和人さん!良かったら、この子を私から引き離してください」


「なんでー?どうしてー?私が嫌いなの?ねえ、モドリ―?」


「そうじゃないけど……。離れてくれないと嫌いになっちゃうかも」


 モドリ―がそういうと、俺が手を貸す必要もなく、カルバはモドリ―から手を離した。

 そのまま、床に突っ伏すと、寝こけてしまった。

 大丈夫か?この子。


「あ、ありがとうございます。和人さん」


 俺はどうしてこうなったのかを聞いてみた。




 話を聞くところ、彼女は自身よりも冒険者として優秀な妹と比較され、両親にほとんど見捨てられたような状態らしい。

 それによって、その分の心の拠り所がモドリ―の肩にのしかかっているとのこと。

 優秀な妹がいるという点は俺と同じだろうか。


 カルバは冒険者としては見放され、商人の道に進むことを強いられているらしく、いくつかの商店の運営や管理を、押し付けられ始めているそう。

 本当は冒険者としてやっていきたいのをめさせられそうになって、みかけているみたい。


 ちなみにカルバの妹は今この学校のaクラスにいるそうで。

 というか、俺たちの所属している魔法学校のある町ブレイキでは正規の冒険者ギルドは存在していないらしい。


 なんでも、魔法学校があれば、周辺のクエストの処理などはそれだけで間に合うからとのこと。

 だから、この街に冒険者として住むためには魔法学校に所属している必要があるらしい。

 卒業したら、より魔王軍との距離が近い別の街へと旅立たないといけないのだとか。


 そのため、この街にいることが住み心地が良いだとかいう理由で、わざと卒業せずに留年している生徒も中には入るらしい。

 え、そんな奴いるんだ。

 金がかかりそうだけど、この街に両親がいる人だとかはそうしている人もいるのだろう、と俺は思った。


 カルバやカルバの家族もそうらしい。

 カルバは親に学費を援助してもらえないため、冒険者としてやっていくにはこの街の魔法学校で、自ら稼いだお金を使い、学費を支払い続ける必要があるらしく、働いたり冒険したりで寝不足になるほど忙しいのだとか。

 だから、なんだかカルバはみ気味だったのか。

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