妹の仲間の冒険者たち
パンケーキ屋の店内、マレアと二人で武具屋へと訪れた後に訪れた場所、なぜかバイトとしてこの店で働いていた妹と会話をしていた俺に向かって、いちゃもんをつけてきた冒険者のうちの一人が俺へと殴り掛かってきた。
俺は殴られるわけにもいかないため立って応戦しようとしたが、それよりも早く動いた者がいた。
妹の神楽だ。
「やめなさい!出禁にしますよ」
妹が俺の前に立って、両手を広げて俺をかばうように俺と男との間に立ちふさがる。
男は殴り掛かるのを止めた。
「おいおい、メイドの店員さんよ。お痛をすると危ないぜ。しょうがねえ、おい、お前外に出な」
俺は妹の働く店に迷惑をかけるわけにはいかないと仕方なく立ち上がろうとした。
「お兄様」
妹は俺を引き留めようとする。
「ちょっと、ちょっと、何の騒ぎ?」
これから俺が外に出て行こうとしていたところで店の奥から店員と思わしき二人の少女が出てきた。
「神楽ちゃん、どうしたの?」
「お、他にもいい姉ちゃんたちがいるじゃねえか」
俺を外に連れ出そうとしていた男が立ち止まってそちらを伺う。
「おい、お姉ちゃんたち、今暇なんだろ?俺たちと一緒に食事しねえか?」
「はあ、そういわれましても」
「おいおい、つめてえじゃないか。そこのメイドさんはそこの奴にずっとつきっきりだったぜ?」
「神楽ちゃん、そうなの?」
店員の一人に問い詰められる神楽。
「はい、しかし、お客さんだからではなく、私の兄だからです」
「神楽ちゃんのお兄さん?」
「あー、前に神楽ちゃんが話してた人!」
妹の同僚の店員たちは興味を持ったのか俺の方へと駆けてきた。
「おい、俺のことを無視してんじゃねえぞ。兄弟だか何だか知らねえが、そういう接待を他のお客様に見せつけたんだったら、他の客にも対応するのがこういうお店ってもんだろうが!」
どういう店だよ。
「うちのパンケーキ屋はそういう店とは違います。騒ぎ立てられては他のお客様に迷惑なので黙るか、出て行くかお選びください」
銀髪の店員さんが言った。
「はあ?そりゃないぜ、そんなこと言うなら俺はそこのハーレム野郎にケリつける必要が出てくるってことになるが、いいのかい、妹さんよぉ?」
すると、もう一人の店員がやれやれといった顔をした。
「お客さん、困りますよ。うちの大事な仲間のことを脅しつけちゃってくれて。いいよ、私が代わりに相手してやる。そしてお客さんが勝ったら私でも、もう一人の銀髪の彼女でも良いさ。あんたらの席についてパンケーキをあーん、してやる。それでどうだ?」
「いいね、お嬢ちゃん、強気な娘は好みだよ。でも銀髪の子もかわいい顔をしてやがる。いいぜ、外に出ろや」
男が店員の一人を外へと呼びつける。
一戦やろうってわけだろう。
銀髪のメイドさんが勝負を受けたメイドに縋りつく。
「ちょっと、カルバ。私を出汁にしないでよ」
「大丈夫だって、モドリ―。あいつらみたところCの冒険者見習いよ。余裕、余裕」
そういって、カルバと呼ばれていたメイドが外に出た男について行った。
「よお、来たかよ。勝負は相手に尻もちを着かせた方が勝ちだ。武器は、ハンデとして俺の剣を貸してやるよ」
そういって、Cランク見習い冒険者らしき男が剣をさやに入れたままカルバに投げ渡した。
俺やマレアは妹とその同僚と一緒に外に見に来ていた。
カルバはその剣を受け取って、しばらくそれを見た後、剣を地面に置いた。
「いいや。私、剣は振ったことないから扱えないだろうし」
「ほう、そうかい、なら俺も素手で行かしてもらうぜ。覚悟しな」
そういって、男はメイドへと距離を詰め、拳を突き出した。
「武器も持たないメイドに襲い掛かる男なんてサイテー」
妹が野次る。
男が拳を広げてつかみかかろうとしたところをカルバは軽い身のこなしでかわす。
カルバは男から距離を取ってから口を動かした。
「大地の聖霊よ。我が呼びかけに応えよ。サンドブレス!」
すると、風が地面辺りに吹き起こり、男の両目を砂が襲った。
「グッ、魔法だと!?」
男はとっさに腕で目をかばう。
そのせいで男は隙を晒した。
「一昨日きやがれ!」
そう叫んでカルバは股間を蹴りつけ、それでも後方へと倒れずに片膝をついてなんとか耐えた男。
「へえ、意外としぶといんだね。これでも食らって帰るんだな」
そういうと、カルバはメイド服のポケットからなぜか折りたたんだパンケーキを取りだすと、目に砂が入ったせいか瞼を開けられずにいる男の口の中に無理やり押し込んでそのまま後方へと突き飛ばした。
「はあー、終わったわ」
かったるそうに片方の肩を回しながら、カルバがこちらへと戻ってきた。
「さすが、カルバ。それにしてもどうして、パンケーキなんてポケットに入れていたの?」
モドリ―が驚いた顔でカルバを向かい入れる。
「いやー、つまみ食いしようとしたら、キッチン長に見つかりかけちゃって、クリームとかついてないし、ポケットに隠しちゃえって思って、入れといたんだけど、あいつに食わせちゃったから私の分なくなっちゃったわー、くそー」
カルバは頬をムク―っと膨らませた。
ちょっと可愛らしい。
「なら、あげなかったらよかったのに」
妹があきれ顔をした。
「ただ追い返したら、恨み買われそうだろ。それに一応うちの店のパンケーキを食おうとしてきた客っぽかったし」
カルバがそう言って後ろを振り返ると、こちらに負けたのが恥ずかしいのか、やられた男の連れが男を担いでそそくさと退散していく姿が見えた。
「なにも注文しないで帰っちゃったね」
モドリ―が最後にポツンと呟いた。
店内に俺たちと店員たちが戻ってきた。
「うちの店に来たほかの客が迷惑かけちゃって申し訳ありません」
モドリ―が俺とマレアに頭を下げた。
「大丈夫だよ。うちのお兄ちゃんはこんなこと気にしないからさ」
妹は同僚のモドリ―の右肩に手をおいて頭を下げるのを止めさせる。
「そういえば、神楽ちゃんの兄なんだってね。見たところ、すごく良さそうな剣を持ってるじゃないか」
この店に来る前にクラスのリーダーに買ってもらった剣をカルバは俺に断りを入れた後に手にして眺めた。
「これ、金貨20枚」
マレアが表情はあまり変えないままだが誇らしげにそう言って、腕を腰に据えて胸を張った。
おい、なんでマレアが偉そうなんだ。
いや、俺も買ってもらった手前、何も言えないんだが。
「はあー?金貨20枚の剣だって?どんだけ、凄いの買ってるのよ。あんたのお兄さん」
「さすがは我が兄といったところです」
そんでもって、なんでお前まで威張ってるのか俺には分からない。
妹は両目を閉じて頬を緩ませてマレアと同じく胸を張っていた。
「へえー、凄いんですね。神楽のお兄さんは」
モドリ―が驚いている。
「今度、うちの兄はワイバーン討伐クエストに行くらしいんだ。私、良かったらついて行きたいなって思ってたんだけど、カルバとモドリ―も一緒に行かない?」
「え、二人とも神楽の冒険仲間なのか?」
「そうよ、私とモドリ―はbクラスよ」
なにやら、話を聞くと、カルバとモドリ―は妹のクラスメイトにして、3人組の同じパーティメンバーらしい。
カルバが実家のこのパンケーキ屋で時々店の手伝いをしているのを知って、モドリ―と妹が興味を持って、それからたまに一緒になって働いているとのこと。
なるほど、妹がどうしてここにいたかが分かった。
それと、カルバの先ほどの戦闘慣れの所以も納得である。
「ほえー、良い話じゃん。行こうぜ、モドリ―。こんな凄そうな剣をもった冒険者と一緒に出掛けられるなんて、良い機会じゃねえか」
カルバがモドリ―に話を振った。
「まあ、カルバがそう言うんなら。私はそれでいいよ」
そんなこんなで、彼女らが俺とマレア、そしてこの場にはいないが、女神ネメシスと天王院の4人パーティーと同行することが決まった。
bクラスの3人が加わって、けっこう強そうになったじゃんね。




