唯我
あとがきに大切なお知らせがあります!
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「おらあっ!」
その想像に胸を膨らませたシヴァは、ノリノリでアルフレッドの肉体に致命傷を与え続ける。
首をねじ切り、動脈を絶ち、上半身と下半身を泣き別れさせ、頭から股下までを力任せに引き裂く。
だがどんな殺し方をしても、アルフレッドは必ず一瞬で全回復をしてみせる。
ゴーレム種やスライム種などのように体内に核となる部分があるのかと思い身体を百を超える数まで千切ってみたが、そうではない。
それならあの光に秘密があるのではと思い回復の瞬間を邪魔しようとしても、それはできなかった。
数多の相手を倒してきたシヴァであっても、相手の能力の性質が掴めない。
これほどの能力となればなんらかの強い制約があるはずだが、皆目見当がつかなかった。
魔力や体力の消費という線も考えたが、それにしては相手に疲弊している様子がないのが気がかりだ。
だとすれば無限に回復が可能ということになるが……果たしてそんなむちゃくちゃな芸当が、可能なのだろうか?
(まあ俺の肉体の性能を考えれば、ないとは言えないが……)
自身の性能がむちゃくちゃであることを考えればそこまでおかしなことでもない気がするが、とにかく相手の能力に当たりをつけることは重要だ。
今後戦うことになる混沌迷宮の軍団長達もおそらくは、このような特殊な力を持っていると考えるのが妥当だろう。
倒すことが困難であるという事実が、シヴァに面白さを感じさせる。
アルフレッドの戦いもいつもと同じく一方的なものではあるのだが、過程が大きく違うおかげで楽しさを感じることができた。
「――らあっ!」
不可視の速攻であるシヴァの一撃。
けれど幾度も攻撃を食らい続けたアルフレッドは、それに徐々にではあるが対応することができ始めていた。
先ほどまでであれば間違いなく頭が吹き飛んでいたストレートを、頬の肉がはじけ飛ぶ程度で受け止めてみせる。
そのままカウンターを放とうとするも、シヴァの攻撃の威力が高すぎるせいで体勢を維持できずそのまま後方へ吹っ飛んでいく。
二度目の攻防でもアルフレッドは何もできず、再び彼の身体を光が包み込み新たなラウンドが始まる。
「我の不死の秘密が気になるようであるな」
「ん、まあ正直な。教えてくれるのか?」
「我のスキルは、別に知られたからといって対応ができる類いの能力ではないからな。固有スキル、我思う、故に我在り……自分のことを信じている限り、我という存在は消滅しない。自信を持つ我は、死ぬことなくここに居続けるという、そういうスキルだ」
スキルには色々な種類があるが、基本的にどんな強力なスキルにもなんらかのデメリットや制約はついているものだ。
固有スキルであり取得条件が厳しいということを加味すれば、その効果のほどについては納得ができる。
シヴァが手に握っていた砂をかければ、散弾となってアルフレッドの肉体にいくつもの穴を穿っていく。
既に殺した数は十を超えているはずだが、それでもアルフレッドは先ほどまでと変わらずにまた新たに十全な状態で降り立った。
「こんだけ倒しまくってるのに、どうして自信が持てるんだよ。いい加減自分が雑魚だってことを理解した方がいいんじゃないか?」
アルフレッドのスキルはおそらく、精神によって効果が左右されるもの。
彼が自分への自信がなくなればそれだけで不死性は失われ、倒しきることが可能となる。
だがシヴァの揺さぶりはまったく効く様子はなく、アルフレッドは今度はシヴァの攻撃を三発ほどかわしてから四肢をもがれてやられ、復活した。
「わははははっ! 我は自分を生み出してくれたミツル様を信じている! 我のことを信じられなくなったところで、我がミツル様のことを信じられなくなることは未来永劫存在しない。我の忠義が不滅の者であり、我は唯、我で在り続ける……『唯我』のアルフレッドは、どれだけ倒されようが立ち上がるのだ!」
「……ちっ、厄介だな」
目の前の魔物の不死性は自信だけではなく、ダンジョンに根ざしたものなのだ。
であればここでどれだけ戦いを続けたところで、このアルフレッドを倒すことはできないだろう。
だが永遠に倒せない相手ではないということもわかった。
要は彼のその自信の根幹となっている混沌迷宮自体を攻略しダンジョンマスターのミツルを倒せば、アルフレッドの不死性は消えるのだから。
「そうなれば……うん、これ以上戦う必要はないな」
既に戦場には右腕のカランも到着しており、彼女が参戦することで戦場はこちらに優位に傾いている。
不毛な戦いを続ける意味も無いし、ここは一旦お開きにしておくことにしよう。
シヴァは近づいてアルフレッドの腕を掴み、思い切り彼のことを遠くの山へとぶん投げた。
「おおおおおおおっっ!?」
死んでも即座に復活するというのであれば、死なない形で時間稼ぎをすればいいだけのこと。
山に激突しながらも致命傷は受けずにいたアルフレッドを見たシヴァは、そのまま行きがけの駄賃とばかりに暴れ回っている大量の魔物達を殺していきながら、その場を離脱することにした。
「このまま混沌迷宮に行くぞ、カラン」
「しょっ、承知しました!」
そしてなんとか体勢を立て直し反撃を命じたカランを引き連れ、彼は聖戦の情報から得た第二の混沌迷宮の入り口へと向かうのであった……。
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