全力
確かめるために、シヴァは先ほどと同様もう一度自分から攻めることにした。
ダッシュをして、そしてアルフレッドへと向かう。
フォームも何もあったもののない普通の疾走だが、その速度は何人にも知覚が不可能なほどに速い。
シヴァの再度の一撃は、今度はアルフレッドの首の動脈を掻き切り、その半ばほどを断ち切ってみせた。
首から血が噴き出し、白い神経がむき出しになるほどの致命の一撃。
アルフレッドはその場でバタリと倒れ……そして光ったかと思うと次の瞬間には、傷一つ無い状態でその場に立っていた。
「うーむ……速いな。少しばかり目が慣れてきたが……やはりまだ身体が追いつかん」
「マジかよ……めちゃくちゃだな、お前」
魔物の中には高い再生能力を持つ個体も多い。
たとえばトロルは首を斬られてもそのまま下半身を動かすことができるし、サイクロプスの上位種などは多少の怪我であれば戦闘の最中に治すことができるほどの回復能力を持っている。
だがシヴァの目の前にいるその魔物の回復力は、それらとは文字通り桁が違った。
致命傷を食らってからの即座の全回復……いくらそれがスキルであろうと、あまりにもめちゃくちゃな回復性能だ。
たとえ一級ポーションを服用しても、戦えるようになるまでにはある程度の時間がかかる。ここまで即座に回復は行われないはずだ。
「それを言うなら貴殿もだろう。強く、そして速い……うーむ、シンプルすぎるが故にどう倒せばいいのか、皆目見当もつかんぞ」
アルフレッドはジッと自分の方を見ながら、首を捻って唸り声を上げていた。
彼はこちらを観察しながら、どうやって倒すべきかと思案している。
「――っ!!」
その様子を見たシヴァは……年甲斐もなく、興奮してしまった。
この世界の人間にとって、シヴァとは歩く災害そのものであった。
彼と戦った者達は皆一様に戦闘意欲をなくし、すぐさまその場から逃げ出そうとするかこちらが勧告するよりも速く降伏を行ってしまう。
シヴァを対等な相手としてみなし倒そうとする……そんな目を向けられるのは、彼がここまでの強さへと至ってからは、初めてのことであった。
「……ははっ!」
自分を騙す、いつもの空虚な笑みではない。
彼は久しぶりに、本当に何年ぶりかもわからないほど久しぶりに、心からの笑みを浮かべた。
これが混沌迷宮の魔物の強さだとするのなら……。
「俺が戦う、価値があるっ!!」
未だ、本気を出すほどには至っていない。
だが目の前のアルフレッドは数体いるという軍団長のうちの一体に過ぎない。
もし彼らが力を合わせてこちらへ戦いを挑んでくるのであれば……自分にも、できるかもしれない。
100%の全力を出して戦う、正真正銘の真剣勝負が――。
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