表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜怜のハーフ  作者: ナウ
NEXT2
82/88

アリスと触手の怪物

「ただいまー」


魔界から帰ったアリスは防衛長や将軍に帰った旨を伝えた。


「・・・アリス・・・様?」


将軍達は訝しながらアリスに向き合う。


「何?、顔に何かついてる?」


そんな将軍達にアリスは腕を組んで答えた。


「い・・・いえ・・・あの・・・」


将軍は言い淀む。

代わって防衛長が答えた。


「いえ、アリス様がよりお若く見えましたもので」


「ああ・・・それね」


若返りの薬を飲んだ事をすっかり忘れていた。

確かにいつもと感じが違うなら訝しく思うのも無理はない。

というか気づいて不審に思って貰わないと軍や防衛は任せられない。


「魔界で若返りの薬を飲んだわ」


「若返りの薬・・・ですか?」


「そう、魔術を用いて作られた魔法の薬、5歳ぐらい若返っている筈よ?」


「そうでしたか、確かにそのお姿はアリス様と初めてお会いした頃を思い出します」


「でしょ?、そんな訳だから私の容姿については心配しなくてもいいわよ、入れ替わった偽物とかじゃないから」


「分かりました」


「それはそうとオランデムド行きの準備はできた?」


「はい、準備はできております、お帰りが遅いので心配しておりました」


「その日の内に帰る予定だったのが二泊三日になったからね、まぁ、色々あったわ」


「そうですか、すぐにご出発なさいますか?」


「そうね、ラージュンとピックミーは?」


「呼んで参ります」


そう言うと防衛長は退出していった。


暫くして防衛長に連れられたラージュンとピックミーが来た。


「帰ってきたんじゃぁん、おお?、何だか若返ってる感じ?」


ラージュンが相変わらずの口調で言う。


「若返ったのか?、アリス?」


それにピックミーが被せてくる。


「そうよ、若返りの薬を飲んでね」


「あれは高額だと聞いた、買ったのか?、アリス」


「違う違う、エクシーヌからプレゼントされたのよ、じゃなきゃ手に入れるのは無理」


「おお〜、アリスの妹とかいう存在っぽい子かぃ〜、めちゃ太っ腹じゃん、俺は会ってないけど〜、お〜」


「そうね、いい子だったわ」


「それですぐ行くのか?、アリス」


「そう、今からオランデムドに向かうわよ」




オランデムド王国、その国は二十年以上前に存在した。

魔王軍侵攻においてエウンジーク、アウランズと並んでオランデムドもまた魔王の攻撃を受けて滅んだ。

しかし公式な侵攻記録のある前者二つの国と違ってオランデムドは記録から抹消されている。

唯一あるのは侵攻したという一文のみだ。

アリスも魔界にいた時にこれを知り気になった。

しかし魔界にいる時には人間界のオランデムドで行く事はできず、その後は炎の祭典からの魔界離脱、人間界行きでアウランズ復興とそれによるマクシトイ王国との何年にも渡る戦争、西方の魔王軍侵攻を邪魔するための戦闘など立て続けに忙しくオランデムドなど気にしている場合ではなかった。

しかし魔王軍は壊滅しマクシトイとの戦争にも勝利した今、余裕が出来たといえる。

というかマクシトイの土地を手に入れ旧アウランズ領及び元々のマクシトイの土地も手に入れ領土を拡大したのだ、更に領土の拡大を狙うならオランデムドの土地は手に入れなければならない。


「死の土地ね・・・」


アリスは呟く。


オランデムドは現在周辺に住まう人々から死の土地と呼ばれている。

そう呼ばれてるようになったのはオランデムド王国が滅んで廃墟になってかららしい。

呼ばれている原因は死んだ人々の亡霊云々の話ではなく、何かもの凄い怪物がいるからだと人々は口を揃える。

しかしそれは何ら具体的ではない。

どんな怪物がいるのか?・・・と聞いてみても誰も答えられない。

知っている人間とやらに聞いてみても誰かから聞いたとかいう又聞きが多くを占めて詳しく話ができる者が1人もいない状況だった。

そんなモヤモヤした土地だがアウランズの土地を接収したマクシトイがオランデムドは接収しなかったのだ、怪物はいると考えた方が良い。

それでマクシトイ攻略後、その都アラジナにおいて情報収集してみた。

すると王の命令でオランデムドに調査しに行った事のある者達の話が聞けた。


「怪物です」


「どんな?」


「何というかワームをでっかくしたような怪物でして調査隊はほぼ全滅、俺たちは逃げ帰ってきました」


「ワームねぇ…」


アリスは何人かの話を聞いて纏めた。

怪物の目撃証言は微妙に異なる。

あくまで微妙なので怪物はワームを大きくしたような奴とざっくりしたイメージで良いと思えた。

それらは噛みついてくるらしい。

牙があり、その牙は尖っていて鋭いようだ。


「それで他には?」


「いえ、それだけです」


「そう、ご苦労だったわね」


「いえ・・・あっ・・・」


「どうしたの?」


「そういえば思い出しました」


「何を?」


「調査隊の中には女性スタッフもいましたが連れ去られました」


「連れ去られた?」


「はい、奴らはなぜか女は殺さなかったです」


「・・・・・」


アリスは何か嫌な予感がした。

それはまるでオークのようで。

それでマクシトイの軍関係の資料を読んだ。

そこには何度かオランデムドに軍を差し向けていた事が書かれている。


「これの関係者を呼んで」


「はっ」


そうしてその出兵の関係者を何人か呼んで話を伺う。

総合すると軍は何度かオランデムドに行き怪物と交戦したが悉く敗れたらしい。

大体は小隊規模で行ったらしく全滅、ほぼ全滅で犠牲者は多く出たらしい。

マクシトイ王は諦めてオランデムド攻略を諦めた。

そうしてオランデムドは今でも怪物が徘徊する危険な場所のままだ。


「冒険者達も挑んでる?」


「はい、そうです」


現在マクシトイの土地を管理している男が答えた。

王族は王女3人以外殺したので今は貴族だったこのバスカーラがマクシトイ代表として政務にあたっている。

アウランズ主導とはいえ統治に関してはどうしても現地の有力者達の協力が必要だ。

資料には度々冒険者も挑んでいたが、帰ってきた者は一握りで後は悉く怪物の餌食になったとか何とか。


「そこに女は含まれてた?」


「未確認ですが、いた…という話です」


「帰ってきた?」


「いえ、そこまでは…」


「そう…」


そこまで聞けば後は自分が現地に行ってみた方が早いと感じる。

そうしてアリスはオランデムドに向かう事を正式に決めた。

当然将軍達や大臣連中からは止められた。

アリスの身に何かあればアウランズは崩壊する。

王は死去し新たにその王子が王に即位したがまだ子供でありしかもただ象徴なだけの飾りだ。

今アウランズはアリス1人の力で持っているのだ。


「せめて護衛を」


「そうね」


説得されて護衛付きでの出発になった。

とはいえ人間の兵は貧弱だ、とても怪物のいる所には連れて行けない。

盾にはなるだろうが無駄に死にさせるほど今のアウランズは兵の数が豊富ではない。

それでラージュンとピックミーを連れていく事になった。

二人は魔族だ。

戦闘には向いていないが人間を連れて歩くよりは強いし頼りになる。

そうしてアリスは二人を連れてオランデムドに向かった。




オランデムドの土地に入る前に土地から最も近い村に寄る。

そこで何らかの情報を仕入れるためだ。

現地の事は現地の人間または近い場所にいる人間の方が詳しい。

そして村の長や村人達から情報を仕入れた。

分かったのは四つ。

一つは怪物の姿だ。

聞くとどうやら一定ではないらしい。

一体一体が微妙に違っているという話。

ただどれも基本的な大きさは変わらずざっくりと大まかな姿もそこまでの違いはないとの事。

二つ目は怪物はオランデムドの街や城を根城にしている事。

昼間は建物の中に潜んでいるが人間が来ると姿を現すらしい。

そして夜になると外を徘徊しだす。

ただ活動範囲はオランデムド領内だけらしくそこから出てくる事はめったにないらしい。

三つ目は怪物は女を攫っていくという事だ。

男は内部から食い破られ、女達は攫われる。

四つ目は怪物が現れ出した時期だ。

それは20年以上昔の魔王軍侵攻の後らしい。


「・・・・・」


村に泊まりアリスは二人と一緒の部屋で村人達から聞いた話を総合する。


「という訳だけど意見は?」


「恐いじゃぁぁぁんーー‼︎」


「ラージュン、うるさい、ピックミーは?」


「姿はそれぞれ若干違う、夜行性、その生物は何だ?、アリス」


「さぁ、触手を持ってるらしいから『触手』でいいんじゃない?」


「男は触手で内部から食われる・・・というのは口からか?、アリス」


「そうのようね」


「恐いじゃん、やベーじゃぁぁん‼︎」


「ラージュン、うるさいわよ」


「女は連れ去られるというのは食糧か?、アリス」


「かも知れないし、または・・・」


「オークのような感じの怪物か?、アリス」


「あり得るわね」


「おお〜すげーじゃん、エロスじゃん、エロエロじゃん‼︎」


「黙れ、殴るわよ」


「へーい・・・」


ピックミーの予想は恐らく当たっているだろう。

だとするならば怪物は女達を使って繁殖し増えているという事に・・・。

ならばオランデムドの女達は孕み袋化して生きている可能性が高い。

しかし魔王軍侵攻から20年以上経つ。

内部がどうなっているのか想像がつかない。

それと気になるのは魔王軍と怪物との関わりだ。

どう考えても魔王軍撤退後に怪物がどこからともなく現れて住み着いたなんて馬鹿な話ではあるまい。

魔界からオランデムドの記録が抹消されている事などから怪物は魔王軍が持ち込んだものだろう。

しかしアリスの知る限りワーム系統の怪物で女を繁殖の道具として利用する種はいない。


「新種?、いや・・・実験体・・・か?」


合成魔獣キマイラのように魔王軍が実験していたモンスターがいても不思議はない。

オランデムドがその実験の場にされた可能性は限りなくある。

そう考えると納得できる。

しかし同時に記録から消されたのなら実験は失敗したという事に・・・。


「キマイラのように暴走して手に負えなくなった?」


腕を組みアリスはそう考えた。

辻褄は合う。

実験に失敗しその時の魔王軍部隊が隠蔽したという事なら話は通る。

そしてオランデムドは廃棄された、怪物を放置して。


「・・・と考えたけどどう?」


アリスはラージュンとピックミーの顔を交互に見ながら言った。


「おお、それで合ってる可能性100%じゃん、やったじゃん、凄げーじゃん‼︎」


「そうかも知れないな、アリス」


二人はそう答えた。


「どのみち行ってみるしかないわね」


「触手やべーじゃん、俺死ぬじゃん、恐えーじゃん、攻撃食らったらマジ死ぬじゃん‼︎」


「そうね、男のアナタは死ぬわね」


「いや…まじやべーって感じMAXで即死endじゃん‼︎」


「そうだな、死ぬな、ラージュンは」


「おいいいいーーー‼︎」


真顔で言うピックミーに突っ込むラージュン。


「まぁ、死なないように今夜考えるわ」


男のラージュンも危険だがアリスやピックミーも別の意味で危険だ。

これは何か対策しないとならない。

とりあえず今日は寝ながら考えようと思うアリス。

明日になればオランデムド領入りになるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ