表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・後半
66/84

【それぞれの結末】

「無事に戻ったか、叔父上殿」


聖都ルーエルシオンにてメリーカと対面したマーギラン。

その顔は出発前とは違って何やらハツラツとして見える。


「うむ、疲れたわい」


「例の魔法が役に立ったとか?」


そう言うメリーカに二ヤけるマーギラン。


「おお、まさかあそこで役に立つとは思わなんだぞ」


「それは何より」


特に興味なさげに言うメリーカだったが、内心は嬉しく思っていた。

何よりも実戦データが取れそうなのは朗報だ。


マーギランが使った対スケルトン用の魔法は骸骨戦士スケルトンウォリアーにも有効であった。

それを駆使して骸骨戦士は全滅させた。

勿論、アローガンやその息子であるアリーズンとその仲間達と力を合わせてであるが。

その戦いでアリーズンを狙っていたウキャンは死亡、ザグーとやらは逃げた。

そしてリャテロの戦いは実にあっけなく終わり、一行は一路リリザルの街へ足を向ける。


そこでは竜族がいたり、ルセル達と合流したりで慌ただしかった。

何だかんだとしている内に竜の王女シルティアとアリス、この二人とライオネルに君臨していたオズというスライムの王との間で話し合いが行われた。

そしてそれは終わり、両国間での和平条約は締結され同盟もまた成立したのだ。

それにより役目を終えたマーギラン達はエルフ界へ帰ってきた。


正直骸骨戦以外は特に何もせずに帰ってきたマーギランだったが、収穫は大きかった。

墓参りも出来たし、アローガンにも何十年ぶりかに会えた

その息子アリーズンにも会った。

骸骨も倒した。

骸骨に新魔法を試し十分通用する事も確認出来た。


「・・・取りあえずこれでいいじゃろ」


マーギラン的には上々である。

正直これ以上の成果を求められても困るのだ。

とは言え結局人間界の混乱を収束する事は出来なかったが。

しかしこれ以上はマーギランの手に余る。


「寝る」


そう言うとメリーカに背を向け退室していった。



「・・・・・」


相変わらずの叔父にメリーカはこめかみを指で押さえた。

そんなメリーカに傍にいたポリー二が言う。


「人間界の混乱はネジれにネジれましたね」


「スライム族の力がどの程度のモノか知らないが、同じ西方に陣取る魔王軍との戦いは避けられまいな」


「どちらかが消えるという事ですね」


「アリス的には魔王軍に消えて貰いたい筈だが」


「・・・・・」


メリーカの言葉にポリー二は少し考え質問した。


「スライム族が勝ったとして、人間にコントロールしていけるのですか?」


「アリスがいる限りはスライム共も迂闊には条約破棄は出来まい」


「それは一体どういう事ですか?」


「くく・・いや、面白い話が一つあってな」


「何でしょう?」


「アリスの背後バックには竜界が居る事になっている」


「・・・・・」


いまいち解らない答えにポリーニは再度尋ねた。


「ああ、それはな・・・」


・・・・・


・・・・・


「という訳だ」


そのメリーカの説明にポリー二の顔は微妙なモノに変わる。


「くくく・・あははは!!」


予想通りのその反応にメリーカは大笑いした。






ルーネメシスに帰ってきたシルティアは早速ノートンを温泉に引っ張っていった。


「こ・・・混浴・・・」


顔の引きつるノートンにシルティアは笑顔で言う。


「一緒に入ろ、ノートン」


にこやかな笑顔。


「ん・・ん~・・それは・・」


言い淀むノートンにシルティアは満面の笑みで言った。


「20年待ったよ?」


「あ・・だね・・」


その言葉でノートンは観念した。

確かにあれから20年、月日が経つのは早いモノだ。


「ダメ?」


「分かったよ、行こう!!」


その言葉にシルティアの目は輝く。


「やったぁーーー!!」


そしてノートンの耳元で囁いた。


「実はね・・」


「ん?、何?」


「もう一人、欲しいなぁ~・・て」


「ん?、もう一人?」


「そう、もう一人」


「え・・ええ!?」


「駄目?」


「え・・えっと・・」


突然の事に驚いたノートンだったが、しかし・・


「うん、分かった」


そう言うノートンにシルティアは微笑んだ。





「アローガン、あの方はまだご健在なのねぇ」


家でルセルが祖母にアローガンという老エルフに会った事を話した時、しみじみと懐かしむ感じで祖母は言った。


「そそ、まだまだ元気だったよ」


「それは何より」


「んでさ、おばあちゃん

あのさ・・エルフ界旅行記で・・」


「あら、その本はこの間見たわよ

自分の名前が載ってるなんて恥ずかしいったらありゃしないわ

何か故人みたいで嫌ねぇ」


「でもおばあちゃん、凄かったんだね」


「別に凄くはないわよ、あの当時の出来る事を精一杯やった・・ただそれだけの事よ」


「ルセル~」


台所からミーナの声が聞こえる。


「あ、呼んでる」


「行っておいで」


「じゃ、また後で話を聞かせてね」


そういうと台所に慌ててかけて行くルセルにモニカは優しげな表情で送る。

そんなモニカにアリントンはニヤニヤしながら言った。


「思い出すなぁ、お前がマーギラン氏をぶん殴ってぶっ飛ばした時の事を」


そう言ったアリントンの腕をモニカは思いっきり抓った。


「いてて・・」


「アナタが30年以上前のゴブリン狩りの時に遭遇した小さな子供のゴブリンにぶっ飛ばされて崖から落ちて足を悪くした滑稽さに比べれば大した事はないわよ」


「バ・・バカお前・・それは他の誰にも言ってないんだぞ!!」


「私も言いませんよ、まったく恥ずかしい」


モニカの言葉にアリントンは口をへの字に曲げ頭を掻いた。






「無事だったとはね」


ダークイートに帰ってきたホイクールとレトルダにアトニーノは称賛の言葉を送る。


「どうも・・」


二人とも衣服は汚れているが、元気である。

しかし服は薄汚れてヨレヨレである。

けれども怪我はなく元気である。



スライム嬢達に連れられてオズというスライムの王に会ったホイクール。

いくつか質問したりされたり何とかかんとかしている間に竜族やアリスが来て交渉を始め出し、その交渉は成立した。

ホイクール的にも邪魔をする気も必要性もないのでそれは傍観する。


その間、たまに竜族に話しかけて嫌がられたり打ち解けたスライム嬢達と喋ったりしていた。


スライムと人間の和平交渉、その歴史的瞬間を目撃したホイクールは誇らしげだ。

しかしダークイートまでの帰路には苦労した。

こんな事ならヒッポグリフを置いていって貰ったほうが遥かに良かったと思うが、それはそれで打ち解ける前の黒スライム達に捕獲されてしまう危険性もあったりしたため微妙だ。



「ターリィナには?」


アトニーノの言葉にホイクールは答えた。


「会いましたよ、そして伝えました

スライムの事、竜族の事、マイギ―ナの事、そして赤い戦士の事を」


「どう言っていたの?」


「色々と整理出来ていないようでしたね

まぁ、ここまで来れば魔王軍側はスライムと戦うか魔界への撤退しかないでしょうが」


「あは、人間側が勝っちゃったのね~」


傍にいたリシープが嬉しそうに声を上げる。


「さて?、今回の賭けはどうでしょう?

人間側の勝利・・と判断されるでしょうか?」


「魔王軍撤退なら人間側の勝利じゃない?」


「まぁ、そうかも知れません

ちなみにお二人は今後どうされるのですか?」


「そうね、もう人間界こちらに居続けても殆ど意味はないわね

ターリィナが撃って出るという可能性もなさそうだし」


「まぁ、ターリィナの性格からすると無きにしも非ずという所でしょうが」


「今の人間界にある戦力じゃ多分返り討ちにあうわよ?」


アトニーノの言葉にホイクールは笑む。


「ですね、とは言えターリィナがスライムの強さを理解出来ているかどうかは判りませんが

何よりも魔界にいる魔王がどう判断するか」


「ま、そうね

それであなた達は?」


アトニーノに聞かれたホイクールは答える。


「魔界に帰ります

まぁ、最後に赤い戦士には会ってきますが」


「赤い戦士ね」


「はい、赤い戦士です」






東方の地、アリシュトロ国。

しかしその国の国旗は取り外され新しい国旗に変えられていた。

その国旗は旧アウランズの国旗。

その国名もアリシュトロ国からアウランズ国に変わった。


スライム族との交渉が終わり、最早アリスは魔王軍を恐れる必要はまったく無くなったと言っていい。

スライム国は現在ダークエクセナルを一気に落とす計画が着々と進みつつある。

スライム国と今回同盟を結んだアウランズも一部の部隊を差し向け、ダークエクセナルと戦うつもりだ。


当初恐れていたオズも話してみれば気さくで実に話の通じる奴だった。

オズは今更竜族と事を構える気はなく、西方全土の支配を認めるならばアウランズとの同盟も可能という言葉で全てが片付いてしまった。

今までが何だったのかというぐらい実にあっけない幕切れである。


とは言えその交渉は竜界を間に入れたから成立した事であり、無ければ一蹴されていたであろう事だ。

オズとしても竜界を相手にするよりも魔界を相手にした方が遥かにマシらしい。

その竜界とのパイプ役としてアウランズは重宝するという事。


実は交渉の初めはアウランズとの和平交渉を渋っていたオズ

それもその筈で、アリスと竜界との明確な繋がりが分からなかったからだ。

繋がりが希薄ならば和平も時として白紙になりかねない。

そんなオズを納得させたのはシルティアの一言であった。

それは現在それを知る人々の間で笑いの対象になってしまっているが、アリスに取ってはそれは衝撃的な一言だった。



「アウランズ国旗か・・・」


旧アウランズの国旗が上がった時、旧アウランズの老王の目から涙がはらはらと零れ落ちた。


「こんな日が再び来るとは思わなんだぞ・・・」


言葉に詰まる旧王にアリスもうっすらと涙が滲む。


「ここまで来るのに長い時間がかかった・・・

お母さん、姉さん、見てますか?

アウランズは再び蘇りました」


晴天の空を仰ぎアリスは心の中で呟く。


「ウィナ―、アウランズは立ち上がったわ

今頃魔界でもスライム国と私の生存が話題になってるでしょうけれどね、次はアナタの番よ・・」


「ようやく念願だな、タウナ」


そんなアリスにピックミーが話し掛けてきた。


「そうね、ピックミー」


「ピェスラナは精霊界か?、タウナ?」


「そうよ、ライトリーを追いかけて風精霊シルフ界に行ってしまった」


そう、ピェスラナはライトリーを追いかけていったのだ。

理知的なピェスラナとおバカ男ライトリーの組み合わせ。

男女の仲というものは本当に不可思議で分からないものだ。


パークやドートナー、ナトリ―達人間の冒険者は行方知れずだ。

今回のアリスの西方を捨てる決定に異を唱え去って行った彼等はまだどこかで戦っているのかも知れない。

そうした人間達の恨みも一身で受ける覚悟はアリスも出来ている。

ただ、パークメンバーの一員だったハーフエルフであるアダ―ジュのみはアリーズン達ハーフエルフメンバー達と共にルーヒューマンシティに行ったと聞いた。


「色々と変わるのだな、タウナ」


「そうね

そう変わる、私の名前もね」


「変わるのか?、タウナ」


「そうね、もうタウナじゃないわ」


「もうタウナではないのか?」


「そう、タウナじゃないわ

私は・・そう私はアリスよ」


フワリとした風が吹き国旗をはためかせる。

アウランズの紋章が入ったその旗を見ながらアリスはようやく本来持っていた筈の笑顔を見せた。






アリスの予想通りそれから暫くして魔界では古代のスライム族の復活が話題になっていた。

そして同時にかつて死んだとされていたアリスの生存に誰しもが驚いた。


「ウィナ―!!、アリスが!!、アリスが!!」


「ああ・・分かっている」


新聞を片手にリビングでくつろいでいたウィナに―慌てて駆け寄るレイシア。


「生きてたって!!」


「らしいね・・」


一応はそう言う。

しかしアリス生存はウィナ―自身は元々知っていた事だ。

【炎の祭典】の折り、その炎の使い手同士の壮絶な激突やルセルという少年が竜になり同じ竜同士が戦ったあの戦いにアリスもウィナ―も如何に自分達がちっぽけな存在かを嫌というほど味わった。

そして今まで自分達が固執してきた価値観が如何に無意味なモノかを認識させられた。

アリスはアウランズ復興を胸に自らを「死んだ」とする事により人間界に渡った。

そしてウィナーはアリスにはもう会う事もその名前も聞く事もないと思った。


それが五年後の今、大々的にその名前を出し再び世に出てきたのだ。

しかも古代種と呼ばれる神話のバケモノ達と手を組んで。

流石のウィナ―もそれを知った時には声を出して笑った。


あくまで簡単な速報でしかなく具体的な全容は今だ分からないが、姉がその名前を世に出したという事は古代種のスライム達は相当強力な力を持った連中であるという事だろう。

スライム国と対峙する形になったダークエクセナルはどうするか・・そして魔王ちちがどうするか・・が見物である。


「アリスが・・、アリスが・・」


涙を一杯に溜めウィナに―しがみ付いてきたレイシアをウィナ―は優しく抱きしめる。


「大丈夫だよ、アリスは生きていたんだから」


レイシアの後頭部を撫でながらウィナは―言う。


「でも、でも、軍と敵になったって・・

おかしな怪物達と手を組んだって・・」


「まぁ、どういう事なのかは詳しくは分からない

でも大丈夫だよ」


「そうかな?」


「そうだよ、だから泣かないで」


その言葉にレイシアはこくんと頷く。


「良い子だ」


そう言うとウィナ―はレイシアのおでこにキスをした。

三章後半・END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ