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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・後半
65/88

【スライム族と竜族2】

「雷撃!!」


ホイクールの手から放たれた黄色い閃光がドロドロした黒いスライムにぶち当たる。


・・・・・


パチパチ・・シュウゥゥゥゥゥ・・


黒いスライムの表面に迸ったスパークはしかしスライムを貫く事はなく萎んで消えた。


・・・・・


電撃を発したホイクールは眉を寄せた。


「効かないですね」


ホイクールの言葉にレトルダは苦々しく言う。


「アレの体・・電撃を通さない体・・か?」


「でしょうね、しかしこれは厄介ですね」


ぐじゅるぐじゅる。

黒いドロドロしたスライムは何事もなかったかのようにゆっくりと近づいてくる。


「どうする?、ホイクール?

お前の十八番オハコが効かないが?」


「ですね・・しかし・・炎は通じるでしょう」


そういうとホイクールは手に意識を集中した。


パチパチパチ・・・


手が光り黄色い光の中に赤い光が混じる。

   

「・・雷炎撃!!」


バチチチチチィィィィィィィ!!!!


先程の黄色い閃光とは違って今度は赤い閃光がスライムに命中した。


バチ!!ジュアァァァァァァァァーーーー!!!!


それが当たった黒いスライムは跡形もなく消し飛ぶ。

それを見てホイクールは口元をニッと上げた。


「どうやら炎は有効のようですね」


「だな」


そう言うとホイクールとレトルダは城に向けて駆けだした。


「さて、行きますよ!!」


建物の蔭から次々と現れる黒スライムにホイクールは手を翳す。


「雷炎撃!!、雷炎撃!!、雷炎撃!!」


次々と掌から放出される赤い閃光。

それに当たった黒スライム達は蒸発していく。


「有効打にはなりますが・・あのスライム達にはどうですかね?」


「あのスライム達?」


ホイクールの言うあのスライムとは先程上空から見ていた時に現れた人型のスライムだ。


「あれか、早速出たぞ!!」


レトルダの声にホイクールは横の建物から這い出してくる黒いスライム達から視線を外し真正面に立つ人型のスライムを見た。


「三体?」


そこには並んで立つ人型の黒いスライム三体。


「黒だけでも三体いたようですね」


そのホイクールの言葉をレトルダは否定した。


「いや、あれは・・先程の奴等とは違う」


「違う?・・とは?」


「輝きだ・・前の奴等は宝石のようにキラキラ光り輝いていたが、あれらはくすんでいる

そして人型の形が安定していない」


「・・・そう言われればそうですね」


変な所で細かく見ているレトルダにホイクールは苦笑した。


「雷炎撃!!」


しかしやる事は一つ。

雷炎撃の攻撃人型のくすんだ黒いスライムに命中した。


ぐちゃっ


雷炎撃は命中した。

した・・が半身を溶かしたにしか過ぎない。


フォッ!!


半身が溶けた人型黒スライムが素早く動きホイクールに触れ・・てくる手を交わし、ホイクールは掌を黒スライムに向け攻撃を繰り出す。


「雷炎撃!!」


もう一撃が半溶解したスライムに命中しその人型スライムは消滅した。


「耐久力がありますね、人型は」


「それだけじゃなく、動きもかなり速いぞ」


「ふむ、黒スライム2と言った所ですか」


尚も襲いかかってくる他の二体の人型黒スライムにホイクールも流石に雷炎撃を多発させ過ぎな感を感じる。


ホイクールの得意とする魔法は雷撃魔法だ。

基本的には黄色い電撃を繰り出し敵を倒すのが常だが、黄色い通常の電撃以外にもいくつかの種類を持っている。

この雷炎撃もその一つで、雷撃魔法に火炎魔法を付加させて撃ちだす一種の合体魔法だ。

しかし合体魔法は名前こそ勇ましいが威力は個々の魔法に劣る為、基本的には使わない。

威力も黄色よりも劣るし、魔力の消費量も半端ではないからだ。

だが、今回のように電撃が弾かれる場合や他の理由で電撃が有効に働かない場合には使いようがある。



ライオネルの都に降り立ったホイクールとレトルダ。

最初ホイクールは見つからないように城に忍び込むつもりでいたが、あまりに監視役たるドロドロ黒スライムの数が多いため諦め正面突破を選んだ。

そしてあっさり見つかり戦闘が開始された。


人型スライム二体を倒したホイクール達は更に走る。


「・・・ちっ」


「囲まれましたね」


もうじき城という段階で前横に黒い人型スライム10体以上とドロドロスライムが・・何十体か現れた。

後ろからも続々とこちらに追いつきつつある。


「さて?、どうします?、レトルダ?」


「嬉しそうだな」


「勿論ですよ、私は絶体絶命の危機ピンチが好きなので」


「変態の域だな」


「まぁ、そうですね・・出ましたよ」


その言葉にレトルダはホイクールが向ける視線の先を見た。

そこにはキラキラ輝く黒い軆を晒した黒い人型スライムがこちらに進んでくる。


「お前達は誰?」


少し感情を抑えた声でホイクール達に訊ねるブラック。


「初めまして、私は魔族のホイクール

こちらは同じく魔族のレトルダです」


「魔族?」


ピクリと口元を上げ、ブラックは二人を見る。


「何の用?」


「はい、この間魔族の女性がこちらに来たと思います

何か知りませんか?」


「・・それはマイギ―ナという名前?」


「その通りです」


「ならば残念ね、彼女は死んだわ」


「死んだ?、食料にされて食べられたのですか?」


ホイクールの問いにもう一人建物の影から現れる。


「違うわよ」


「?、あなたはマイギ―ナ!」


出てきたのは魔族の女、それはマイギ―ナだ。

ホイクールは一度ダークイートで見かけた事がある。


「私はオレンジ、彼女の体を乗っ取ったのよ」


「オレンジ?、乗っ取った?、それは一体?」


「私はオレンジのスライム、私の能力は相手に寄生する能力

それだじゃなくて相手を完全に乗っ取っる事も出来るの」


「つまり、マイギ―ナの体を乗っ取ったと?

マイギ―ナ自身はどうなったのですか?」


「彼女の意識は既にないわ、死んだの」


「・・なるほど、そうですか」


そう言うとホイクールは溜息をつく。


「まぁ、それならそれでいいでしょう

私の目的はマイギ―ナの生死の確認でしたから、死んだ事が判ったらもうここに居る意味はありません

騒がせましたね」


「娘達を殺しておいて無事に帰れるとでも?」


ブラックの言葉にホイクールは怪訝な顔になる。


「娘・・とは?」


「人の形をした複数の黒色スライム、それがブラックの娘達よ」


オレンジの説明にホイクールは納得する。


「なる程、それはすみませんでしたね

そういう事は一切知りませんでしたので」


「きゃはははは」


おかしな笑い声と共にその黄色いスライムは姿を現す。

隣には赤いスライムもいる。


「ねぇ~あなたさぁ~、電撃を武器にするんでしょ?」


「まぁ・・そうですね」


「なら私と戦りましょう、どっちが強いか勝負よぉ~」


「勝負?」


「電撃勝負よぉ~」


「と、言う事はアナタは?」


「そうよぉ~、雷撃系スライムよぉ~」


「なる程、色々いますね

ちなみに君達のリーダーは誰ですか?」


「リーダー?、オズ様の事?」


レッドの言葉にホイクールはニヤリとした。


「そう、オズというのですか?」


「オズ様よ」


「オズ様ですか・・どうでしょう?、もし可能なら私をオズ様の元に連れていってくれませんか?」


「何の為に?」


「少し話があるのです」


「・・・・・」


スライム嬢達は互いに顔を見合わせた。

ややあってレッドが言う。


「・・・ついて来て」


そう言うと他のスライム達も城に向けて動き出す。


「・・・・・」


最初のイメージと違い随分と与し易い相手であると感じるホイクール。

レトルダと目で合図を取りながら無言でスライム嬢達の後をついて行った。






リリザルの街に再び戻ったルセル達。

そして暫くしてルセルの母であるシルティアが到着した。

つき従うのは何十という竜。

その中にはダイナハーブ家の当主であるエルナー、夫のケイヤ。

そして娘のミーナもいる。

竜とはいえ本来の姿ではなく全て人型を仮の姿としリリザルに来たため、街の住人達の混乱はない。

もしそのままの姿で乗り込んでいたら都異変どころの騒ぎではないだろう。


「まぁ、お座りなさい」


大きい宿泊施設を借りたシルティア達はその宿で一番大きい部屋にルセルとアリスを呼んだ。


「ほーい」


「失礼致します」


二人が座った事を確認し、竜の一人がテーブルに紅茶を並べる。

そして並べ終わり、その竜が退室したのを見計らってシルティアが口を開いた。


「まずはルセル、何か言う事は?」


「あ、ごめんなさい」


「そうね、冒険は程々にね」


「う・・うん」


「ルセル、話はそれだけよ

ミーナさんと一緒に買い物に行っていなさい」


「え?、タウ・・アリスは?」


「私はアリスさんと話があります」


「え・・と」


心配そうに見るルセルにアリスは笑んで言った。


「大丈夫よルセル、ミーナと行ってきて」


「あ・・うん、じゃあ」


ルセルは何か言いたげだったが、部屋を出た。

バタンと部屋の扉が閉まるとシルティアはアリスの方に向く。


「貴女がアリスさんね」


「は・・はい!!」


シルティアに話しかけられアリスはアガッてしまう。

何せルセルの母親にして竜界No2の存在だ。

緊張するなと言う方が無理な話である。


「綺麗な方・・・」


というのがシルティアを見たアリスの率直な意見だ。

しかしそれだけではない威厳のようなモノもあり、それもまたアリスを緊張させる。


「貴女の事は息子ルセルから聞いていたわ」


「はい・・」


「現在東方の一国を取り仕切っているようね?」


「はい、小国ですがアリシュトロ国と言います」


「アウランズではなく?」


「私の存在は魔界に知られると危険なので国の名前は別にしています

私の名前もアリスではなく現在はタウナと名乗っています」


「そうなの、苦労しているわね」


「あ・・いえ・・」


実際の所アリスの事をどこまでルセルが喋っているかは分からないが、基本的な事はシルティアさんが知っているという事を前提に話をしている。

しかしやりにくい事には違いなく会話の中で何とか手探りで当てていくしかない。


・・・・・


・・・・・


僅かな時間、じぃーとアリスの目を見つめるシルティアにアリスは少なからず動揺した。


「あの・・シルティア様?」


「ああ、そうね

少し政治的な話をしてもいいかしら?」


「はい」


「この西方の状況についてどう思っているの?」


「ええっと・・本来は魔王軍を撃退して魔界に追い払うのを目的としています」


「それで?」


「ただ、今回のライオネル騒動で一旦その活動を停止させていますが」


「それで?」


「この騒動が終わればまた魔王軍との戦いになります」


「・・・・・」


アリスの言葉にシルティアは頬に手を置く


「人間界に魔王軍と戦える戦力が?」


「いえ・・・残念ながら」


「ならば息子ルセルが人間界にいる意味がないのではないかしら?

それとも少人数でいつ終わるとも知れない戦いを延々と続けるつもり?」


そのシルティアの言葉にアリスはテーブルの下で手をぎゅっと握る。


「・・・言葉もありません、しかし私にはこの手しか今はありません」


シルティアの言葉は的を射ている、このまま続けても魔王軍は倒せないのは明らかだ。

それどころかダークエクセナルは更に拡大し、少人数など殲滅されてしまうだろう。

そんなアリスの様子にシルティアは少し表情を堅くし続ける。


「アリスさん、貴女の希望は東方の国の運営であって西方がどうであろうと基本的には関係ないという事でいいかしら?」


「え・・と、そうですね

魔王軍の脅威がなければ私も西方には興味はありません」


「そう?、例えば西方地域がスライム国になったとしても?」


「え・・それは一体?」


「交渉よ、スライムとのね

彼らに西方地域全域を明け渡すという条件を提示すれば彼等は邪魔なダークエクセナルを滅ぼすでしょうね」


「それは・・」


それはアリスも考えていた事だった。

スライム達を牽制に使えるかも知れないという。

しかしそんな提案をルセルの母親から聞くとは思わなかったが」


「西方はスライム達に・・東方・中央・北方・南方への不可侵の条約を結ぶ・・という事ですね?」


「そうなるわね、ただしこの条約には基本的に他の人間界の国々は承認しないでしょうからアリスさんの国とスライム国の条約になるわね」


「私の国が人間代表・・という事ですか?」


「そう、それと西方を完全に捨てるという決断がいるわよ?」


「現在住まう西方の人々を全て見捨てるという事・・ですか・・」


「人間の血を引く貴女にその決断が出来て?」


シルティアの言葉は人間が聞けば非常に残酷な言葉に聞こえるだろう。

しかし残念ながらシルティアは人間ではない。

基本的には人間界の事に関与するつもりはないのだ。

今回の件は竜界とスライム族との遥か昔の因縁の決着の為に来た。

勿論人間界に来ているルセルを守る為もある。

魔王軍などそもそも眼中にない。

人間界の事は人間達で何とかする事が当たり前でありシルティアはその事に手を貸す気はまったくない。


しかし仮にもルセルと関わりがあり、ルセルが手を貸そうとしているアリスという女性には少し興味があったので今回会う選択を選んだのはシルティアの優しさである。

でなければスライム達を殲滅しルセルをエルフ界に連れ戻すだけに終わっていただろう。

短期決戦ならともかく、いつまででもルセルに冒険ごっこさせておく訳にもいかないからだ。


「一つ聞いて宜しいですか?」


アリスの問いにシルティアは「どうぞ」と返した。


「スライム・・ですか?

私は実際に見た訳ではないのですが、そのスライム達は元々何なのでしょう?」


「古代種・・とでも言えばいいかしら?

遥か昔、邪竜が世界を滅ぼそうとした時代に存在したスライムの王オズと11匹のスライム達

竜族は邪竜に与したスライム族と戦い打ち破りました

ただ、如何なる理由かは記録には残っていませんがスライムの王オズはこの地に封印されました

今回、たまたま封印が破られ復活した・・という事です」


「なるほど、そうだったんですね」


「私達竜族に取っては因縁のある相手です

とは言ってもそれは遥か過去の時代の話であって今ではないけれど」


そのシルティアの言葉にアリスが恐る恐る尋ねる。


「例えば・・ですけれどオズですか?

彼が竜族を恨んでいて攻撃をしてくる・・という可能性はあるのではないでしょうか?」


「そうですね、私達からすれば遠い遥か昔の出来事でも彼からすればついこの間の出来事ですから可能性は大いにあり得ますね

その時は滅ぼせばよいです

その場合、魔王軍は人間達が何とかしなければなりませんが」


「・・・・・」


シルティアの言葉にアリスは何かとても親近感が沸いた。

その合理的な思考は尊敬出来る。

何よりもそのシャープな思考はアリスに近いのだ。


「分かりました、現時点ではスライムとの交渉次第という事ですね」


「そうね」


「オズは話に乗ってくるでしょうか?」


「生物は支配領域テリトリーの確保と生存欲求及び遺伝情報を残すという欲求に支配されています

それらの要件を満たすならオズは話に乗ってくるでしょうね

ただ実際に私も会った事がありませんし、どのような者かも不確かなため断言は出来かねます

しかし彼にとってはデメリットは無いはず」


「そうですね、巧くいけば・・ですね

私にとってはスライムが西方を支配した方が東方運営はやり易いと思えます」


「なら決まりね、西方を捨てる覚悟は本当にあるのね?」


「・・・はい」


「ならば私達竜族も交渉を優先させて動きましょう」


「はい、お願い致します」


そう言うと堅かったシルティアの表情が和らぎ笑顔を見せた。


「流石はメリーカさんが褒めていただけの事はあるわね」


「え?」


「人間界に来る前にエルフ界に寄って貴女の話を聞いたのよ?、どういう子なのかって」


「メリーカさんは何と?」


「頭のキレなら若い頃の自分並だろうって」


「それは・・言い過ぎです!!」


「いいえ、指導者は時として非情なる選択を迫られる時があるわ

それを飲めるか飲めないか・・で大きく変わってくる」


「・・でも私は残酷です」


やや泣きそうになるアリス。

人前でそういう姿を見せるのは久しぶりだ。


「ルセルは友達?」


「え?、あ・・はい」


突然の言葉にアリスは驚いた。


「信頼出来る大切な友達・・と思っています」


「そう、なら良かった

これからも仲良くしてあげてね」


「はい・・」


そのアリスの最後のやや下がり気味な声のトーンにシルティアは少し考え、アリスの顔を見た。

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