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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・後半
64/88

【スライム族と竜族】

「バ・・バケモノめ!!」


ライオネルの部隊長ライモンは唸る。


ヘルハウンド掃討部隊の何隊かは都の異常に帰還した。

しかしそこで待っていたのは都に蠢く黒いスライムの洗礼であった。

既にライモン部隊もライモンと一人の兵を除いて黒いスライムに捕らわれ、連れ去られてしまっている。


「くそ!!」


黒いスライム。

通常のスライムが黒いという程度で見た目はドロドロの液体のそれであった為、油断した。

とは言え、スライムは剣では斬れないので避けるぐらいしか出来ないが。

しかし黒いスライムは普通のスライムとは違いかなり動きが速く、たかがスライムと高を括っていた兵達は次々とスライム達に飲み込まれていく。

気がつけば無事なのはライモンと兵一人だけという有様になっていた。


「くそ!!」


ライモンは歯噛みする。


それは黒いスライムという知識にはない敵の出現もあるが、何よりも冷や汗を出させられたのは目の前にいる1体のスライムに恐怖を感じているからだ。

そのスライムは同じく黒い。

しかし先程までのドロドロした液体状の形状をしたスライムではなく人型をしている点。

その姿は若い女の姿を形どっている。

しかも衣服など着ておらず全裸だ。

とはいえ肉体ではなくその体は液体であり光を浴びて宝石のようにキラキラと輝いている。

そしてそいつは何と言葉を喋った。


「フフ・・あと二匹」


「バケモノめ!!」


「剣なんか向けても通用しないわよ?」


「黙れ!!」


そう叫んだがライモンには目の前にいる敵に何らの攻撃も出来ない事に絶望の色を隠せない。



パシュッ


後ろから何かを掛けられた感触にライモンは驚いて後ろを振り向いた。


「な・・」


ライモンが振り返った先には少し離れて赤紫色のスライムがいた。

こちらも黒い人型スライムと同様、若い女の姿をしている。


「あら?、パープル

私の獲物を横取りする気?」


そう問うブラックにパープルは笑う。


「退屈よ、少しは狩りをしないと溶けてしまいそう」


「まぁ、別に構わないけれどね」


ジュアァァァァ・・・・


煙がライモンの後頭部から立ち上る。


「な・・なんだ?」


「早く兜や鎧を外さないと内部も溶けるわよ?」


「な・・に?」


ブラックの言葉にライモンはしかし事態を把握出来ていない。


ジュアァァァァァ!!!!


それは兜や鎧の後部を溶かし、やがて直接ライモンの髪や皮膚に付着した。


「う・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


しゅうしゅうと立ち上る湯気と皮膚を焦がす臭い。

後頭部や背中の激痛にライモンは転げ回る。


「うわぁぁぁ!!!、がぁぁ・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「うるさい」


ドプン!!


体を大きく膨らませたパープルはライモンの全身をその身に付けた。


「!!!!」


もはやライモンの絶叫はパープルの体に遮られ、外に漏れ出す事はない。

ライモンを取りこんだパープルはゆっくりとその体を溶かしていく。


ぷちゅっ


パープルがライモンを溶かしている間、もう一方のまだ若い兵はバイオレットの毒を受け、体を痺れさせ地面に倒れこんでいた。

そして鎧を外され下のズボンを脱がされた兵はその陰嚢を切られ、その睾丸を生きたまま食われていた。


ぷちゅんっ


精巣を口に入れたバイオレットはにこやかな笑みを浮かべる

そして精管を切り、精巣を飲み込んだ。

バイオレットの好物は精巣であり、毒で痺れさせた相手の睾丸を食するのを楽しみとしている。


もう一個。


そう言うともう一つの精巣も食した。

それのショックにより若い兵はショック死した。


「残りは貰うわよ?」


ブラックの言葉にズズズズ・・・ドロドロの黒いスライムが若い兵に覆いかぶさり兵の体を取りこんでいく。

今回のこれはあくまでも保管のための行動であり、黒いスライムに取り込み保管場所まで移動させるのを目的としている。


「完了ね」


その言葉と共にスライム達はその場から姿を消した。





「どう思います?」


ヒッポグリフの背に乗り上空からその一部始終を見ていたホイクールはもう一匹のヒッポグリフに乗るアトニーノに聞いた。


「スライムねぇ」


「スライムですねぇ」


「・・・・・」


スライムである。

そう言うしかない二人。

スライムだ、しかし今まで見た事も聞いた事もないスライム。

人語を喋り、人型になりおかしな能力を宿す恐るべきスライム。


「新種でしょうか?」


ホイクールの言葉にアトニーノは目の端をピクリと動かす。


「さぁ?、どちらにしてもライオネル異変の原因はあの趣味の悪いスライム達にあるのは間違いないんじゃない?」


「趣味の悪い・・ですか?」


「女の姿を取っているわね」


「ああ、そうですね」


ホイクールは苦笑する。

男だと美しく若い全裸の女の姿はある種歓迎出来るものだが、女性ではまた違う感想になるものだ・・と。


「それで?、どうしますか?」


「そうね、取りあえず原因は分かったわね

ただし、あのスライム達が何なのかが判らないけれど」


「接触してみますか?、言葉は通じるようですので」


「・・・・・」


少し考えてアトニーノは答えた。


「危険過ぎるわね、もし戦いになったら勝てる?」


「そうですねぇ・・・」


暫しの間を置いてホイクールは答えた。


「一対一なら勝てるでしょうが複数相手だと厳しいですねぇ」


「あら、随分と弱気ね?」


「当然ですよ?、鉄をも溶かす液を飛ばす者や毒を注入してくる相手は厄介ですからね

それに恐らく今見たアレ等だけではなくもっと違う種類のスライムがいても不思議ではありません」


「そうね」


「単なる力比べならともかくああいった特殊な力を持った相手は危険です、それに・・・」


「それに?」


「統制が取れているような規則正しい動きを感じました」


「つまりスライムのボスがいると?」


「はい、知能を持っているスライムならばリーダー格もまたスライムである可能性は高いです」


「そうね、その方が可能性は高いわね」


「はい、それを踏まえてどうしますか?」


「・・・・・」


アトニーノの頭がクルクル回転する。

現時点で原因が判った。

ただし判ったとは言ってもその原因であるあのスライム達が何なのか判らない。

正直その正体を確かめる所まで行きたいが自分とホイクールとレトルダの三人では如何ともしがたい。

何よりあのスライム達は危険なのだ。


「一旦帰りましょう」


「・・はい、ではこれでアナタ達との契約は完了という事でいいですね?」


ホイクールとリシープとの契約。

それは「大いなる賭け」関連でライオネルの異変の原因を突き止め賭けに影響するかしないか・・を確かめる為の調査であった。

アトニーノが調査を打ち切る以上、契約は終了である。

そしてホイクールはターリィナとの契約移行に移る事になる

ライオネルに行って帰ってこないターリィナの部下であるマイギ―ナの捜索だ。

見た所普通にスライムに食われたと考えられるが、保存食用に生かされている可能性も少なからずある。

その生死を確かめなくてはならない。


「そう?、ならばそのピッポグリフはサービスしておいてあげるわ」


アトニーノの言葉にホイクールは笑んだ。


「いえ、ここで降りたってピッポグリフを繋いでおいても黒いドロドロスライムにやられてしまう可能性が高いです

我々を地上に降ろしたら持って帰って下さい」


「そう?」


「はい、そして一つ頼みがあります」


「何?」


「ダークイートに帰ったら、この事をターリィナに伝えて貰えませんか?」


「分かったわ」


「頼みました」


フワッッッ


ピッポグリフ二匹はゆっくり下降し始める。

そして先程までスライムとライオネル兵達の戦いのあった地に降り立つ。


「では」


ピッポグリフの背から降りたホイクールとレトルダはアトニーノに挨拶をする。


「出来るならばまた会いましょう」


「できるならば・・ですか」


「飛べ!!」


アトニーノの乗せたピッポグリフが飛んだ。

それと共にもう一匹のピッポグリフも翼をはためかせ飛ぶ。

それを見送りながら、ホイクールはレトルダに言った。


「さて、骨の折れる仕事になりますが行きますよレトルダ」


「・・・まったくお前と一緒にいると命が幾つあっても足らんな」


レトルダのぼやきにホイクールは苦笑した。






「みーつけた」


ライオネルの都にいざ出発・・・したルセル達に立ちはだかった者達。


「げ?」


その者達の姿を見て馬上のルセルは呻いた。


「ルセル様親衛隊!!、ただ今参上です!!」


「え・・・何?・・・」


タウナやピェスラナはその少女達に呆気に取られる。

人数は10人・・・いや、11人か。

全員が美少女と呼ぶに相応しい容姿だ。

そしてライトリーは可愛らしいその子達に興奮している。


「親衛・・隊?」


呆気に取られていたタウナだったが、頭を回転させた。

そして直ぐに理解した。


竜騎士ドラゴンナイト?」


そう、竜を護る竜の騎士。

彼女達の背負っている巨大な剣はまさしく噂に聞く竜の騎士のそれではないか。

しかし、どう見てもこの子達は10代中頃~後半ぐらいにしか見えない。

いや、一人は年長者っぽい女性がいる。

多分この人がリーダーっぽい。

そしてその女性は少女達を手で制してルセルの前に出、片膝を地に付け跪いた。


「ルセル様、我ら麗竜騎士団ただ今駆けつけました」


「え・・・あ、うん」


「さて、早速ですが先程いた街まで御戻り下さい」


「え?、いやいや、これからライオネルの都に行くんだよ」


「お母様の御命令です」


「え?、母さんの?」


「はい、直にここに来られます」


「え・・ええーー!?」


驚くルセルにタウナもまた驚いた。


ルセルの母親と言えば竜界の王女にして現在竜王に次ぐNo2の地位にいる存在だ。

その人物がここに来るという。

それは一体どういう事なのか?。


「え~と、黙って人間界に来た事を母さん怒ってるとか?」


恐る恐る聞くルセルに竜騎士の女性は優しげな眼差しを向け答える。


「いえ、その事については何も

問題なのはこれから向かおうとされているライオネルです」


「もしかして、相当危険だとか?」


「はい」


きっぱりと断言する竜騎士の女性にルセルとタウナは顔を見合わせた。

そして言った。


「帰りましょう、私達の手に負える案件ではなさそうだからね」


その言葉にピェスラナは頷く。


タウナからしても竜族が乗り込んでくる程のヤバい事態になっているらしい事に戸惑っているが、逆に考えるとこれ程心強い事もないのだ。

後は竜族に任せればよいから。


「おいおい、どうなってんだ?」


ライトリーが文句をつけた。


まったくこの男は空気が読めないアホだ・・と思うタウナ。

ピェスラナはこんな男のどこが好きになったんだか・・。


「ライトリー、聞いたでしょ?

竜界が関わってきているんだから、私達の調査は中止よ」


「何だそりゃ?、スライムは?」


「そのスライムが超危険なんでしょ?」


チラリと竜騎士の女性を見るタウナ。


「はい、その通りでございますアリス様」


アリスと呼ばれてピクリと眉を動かしたタウナだっだが特に何も言わなかった。


「母さんが来るって、もしかして・・」


「はい、ダイナハーブの方々も人間界においでになられています」


「ミーナも?」


「はい、ミーナ様もおいでになられています」


「ミーナ?」


タウナは少し微妙な面持ちになる。

ミーナはアリスの友達であり、そしてルセルの婚約者・・

それは分かっている。

分かっているが今は・・今だけはルセルを独占していたい・・という想いが強い。

しかしミーナすらもが人間界に来ているという事は・・。


「もしかして竜界の戦力が集まっているの?」


「はい、その通りです」


にこやかに答える竜騎士の女性にタウナは目を瞑った。


「・・・・・」


色々な事が頭の中を錯綜する。

そして目をゆっくりと開いた。


「では引き返しましょう」


そう言うと馬を来た道の方向に向きを変えさせる。

色々頭の中でごちゃごちゃになっているが今アリスの心の中を最も大きく捕えている事は・・。


「ルセルのお母さん・・」


それはアリスの中で会いたくない半面、是非とも会ってみたい存在なのだ。

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