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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・後半
63/88

【アリーズンVSウキャン】

アトニーノとの話はザ―バに取って非常にためになった。


リャテロに赴いたアトニーノ達。

ホイクールが虐殺現場をウキャンの案内で見に行っている間、ザ―バはアトニーノと会話していた。


アトニーノは20年前に起きたエルフと魔王軍が戦ったアンデッド戦争においてゾンビ軍団の副長を務めた人物である。

ザ―バの敬愛する骸骨使師スケルトンマスターワグーもまたアンデッド戦争において魔王軍の骸骨軍団を指揮しエルフと戦った人物であり、ワグーを知る人物として是非とも話を聞きたかったからだ。

勿論ワグーの弟子であったザ―バの師からも話は色々聞いたが、師と弟子という関係上の話しか得られなかった。

それ故にかつての同僚に近い立ち位置にいるアトニーノが偶然とはいえ立ち寄った機会に話を是非とも聞いてみたかったのだ。


ただ、聞いた話の内容は知っているモノもあればなったく知らない内容も含まれていた。

何よりも偉大なる師ワグーが童貞で亡くなったという話は実に興味深かった。

いや、衝撃を受けた。

そしてザ―バは考察した。

「何故なのか」・・・と?


そう考えた時、一つの結論が導き出された。

つまるところ女色を絶ち魔術の研究・研鑽のみに没頭したからこそ、骸骨使師スケルトンマスターとしての高みに師は到達し得たのではないか?・・・と。

そう考えれば全て合点がいく。

それに気付いたザ―バは絶句した。


「何と言う事だ!!、偉大なる師ワグーはやはり偉大だったのだ!!」


女に耽る現在の自分が如何に堕落している存在か・・・

その事をはっきりと自覚出来た。


今のままでは魔術師としての高みなど到底無理である。

その事を今回のアトニーノとの会話で師ワグーに教えられた。


「偉大なる師ワグー・・・」


ザ―バは泣いた。

とめどなく涙が零れ落ちる。


「なんという事だ・・・我が偉大なる師ワグー・・・貴方は・・・」


そんなザ―バに事情を知らないウキャンは顔を引きつらせたが構うものではない。

今はただその感動に胸を震わせるだけだ。


アトニーノ達がライオネルに出立した時、ザ―バの心は決まった。

それは三つだ。


女を絶つ、改名する、そして魔界に帰る。

この三つだ。


そう決めたザ―バは自らの名前をザグーと改める事にした。

ザグーとはザ―バのザとワグーのグを合わせた名前。

つまり自分こそがワグーの正当後継者であるとはっきりと自覚し、それを内外に示す為である。

そしてザ―バ改めザグーは連れて来ていたアーネを絞殺した。

相性が良かったためもったいないという気持ちもあったが、魔道を極める為には必要な犠牲といえる。

これにより女を絶ち、生涯を魔道に捧げる決意とするため。

そして道を得た今、もはや人間界に留まる理由は何一つ存在していない。

勿論、ウキャンともこれで終わりである。


「はぁ?、おいおい冗談じゃねーぞ」


魔界に帰る旨をウキャンに伝えた所、ウキャンは渋い顔になった。


「別に帰るなとはいわねーけどさぁ・・俺の復讐はどうなるんだ?、アリーズンって奴を始末するまでは手を貸してくれよ」


「まぁ・・そうだな、仕方がない

ではアリーズンを片付けたら私は魔界に帰る」


「ああ、それまでは頼む」


ウキャンに取っても復讐するにはザグーの骸骨戦士スケルトンウォリアーの力が何としてでもいる。

ここで離脱されれば復讐は叶わない。

とは言え、現時点でもアリーズンなる冒険者の足取りは掴めていないため、かなり長期戦になるだろう。


ザグーは今すぐにでも魔界に帰り研究に没頭したいのだが、思うようにはいかないものだと少々イラついた。

もはや人間界で単なる通常の骸骨スケルトンをちんたら作っているには時間が惜しい。

いっその事、アリーズンなる者が向こうから来てくれれば言う事はないのだが・・と思う。


「・・・!」


そう考えていた矢先、街の入り口付近に配置させていた骸骨戦士からシグナルが届いた。




ギィン!!


剣から火花が飛び散る。

骸骨戦士スケルトンウォリアーと交戦する五人の者達。

リャテロに侵入したこの五人は街を調査中に骸骨戦士と遭遇し戦闘に入った。


その騒動にウキャンとザグーは現場に急行する。


「なんだぁ?」


現場に着いたウキャンは口をへの字に曲げた。

骸骨戦士と戦っている五人は冒険者の様な出で立ちで・・・というか冒険者だろう。

五人が五人共剣で戦っている。

しかし残念な事に全員野郎だ。

女がいればひっ捕まえて楽しめる所だが、野郎では何の楽しみもない


サッとザグーは手を上げた。


途端に骸骨戦士達は少し手を緩めザグーの方に引き下がる。

それを見て冒険者達は怪訝な顔を見せた。


ザシュッ


骸骨戦士が自分の傍に全員並んだ事を確認し、ザグーは切り出した。


「さて、我がしもべであるスケルトンウォリアーと対等にやりあっている君たちは何者かな?」


そのザグーの言葉に冒険者達は互いに顔を見合わせた。

そしてその中のリーダーらしき一人が前に進み出る。


「お前たちはダークジェギスの魔王軍か?」


「・・・・・」


ザグーは顎に手をやり答えた。


「確かに魔王軍と言えば魔王軍だな

それがどうしたと言うのかね?」


「そうか、ならば倒すまで」


そう言った男はスラリと手に持っている剣をザ―バに向ける

その行為にザグーは冷笑した。


「倒す?、我々を?

言っておくが骸骨戦士の力はこんなものではないぞ?、まだまだ力を出していないのだからな」


「そうか、だがそれはこちらも一緒だ」


「・・ふむ」


男の言葉にザグーはどうしたものかと考えた。

殺すのは容易いがそれでは何の芸もない。

まぁ、とりあえずこちらからも質問してみるかと考えた。


「私の名はザグー、君たちは山賊・・・冒険者かな?」


「そうだ」


「君の名は?」


「・・・名乗るほどの者じゃないが、俺の名はアリーズンだ」


「!」


その名前にウキャンの顔色が変わった。


「アリーズン・・・だとぉ?」


ウキャンの言葉にアリーズンは眉を寄せる。


「てめーが・・・いや、待て待て」


「てめーがロッチを殺りやがった野郎か!!」・・・と言いかけたが言葉を飲み込む

何故なら名前が一緒なだけの赤の他人である可能性もあるからだ。


「おいお前、この前魔界から来た魔王軍の一団を襲った事はあるか?

イート付近でだ」


「・・・・・」


アリーズンは少し考え口にした。


「キマイラとかいう奴を運んでいた一団か・・・

確かに襲撃したのは俺達だが?」


その瞬間ウキャンは怒りで顔を真っ赤にする。


「ははは、てめーがアリーズンか!!

やっと見つけたぜ糞ったれ野郎が!!!!

ぶち殺してやる、このど畜生め!!!!」


「・・・お前もしかしてウキャンとかいう奴か?」


「あぁ?」


自分の名前を言われてウキャンは顔を歪ませる。


「何だテメ―?、何で俺の名前を知ってんだ?」


「簡単な事だ、お前この間冒険者達に捕まっただろ?

そのリーダーだったシダンダードから聞いた

俺を捜しているガキがいるってな」


「あ?シダンダード?、誰だ?

いや、まてよ・・

ああ、あのムカツクおっさんか

はは、くたばったんだってな

ざまぁねーぜ」


「お前の目的は友人の復讐・・・だったか?」


「そうだ、ロッチは俺の親友だった

殺しやがったテメ―は許さねぇ、ぶっ殺してやる!!」


そう言うとザグーに向いて言う。


「ザグー、骸骨戦士で奴らをぶっ殺せ!!」


「・・・・・」


ウキャンの言葉に頷くザグー。

しかし少し間を置いてアリーズンに訊ねた。


「一つ訊く、君達がここに来たのは何故だ?

たまたまか?、それとも・・・」


ザグーは不思議に思った事を口にする。

わざわざ滅ぼされた街にノコノコやって来た者がどういった理由で来たのか。

単に滅ぼされた真偽を確かめる為の調査目的かそれとも・・・。


ザグーの問いにアリーズンはニヤリとして答えた。


「ある者達がここに魔王軍の一隊がいると教えてくれたんだ」


「ほぅ、ならば最初から我々の存在は知っていたという事か」


「そうなるな、今の俺達じゃ少人数の部隊と戦う事ぐらいしか出来ないからな

だから少しでも魔王軍の数を削る為にここに来た」


「・・・なるほど、しかし・・君たちにそれを教えた者達とは?」


「それは教えられないな、訊きたければ力ずくで訊き出してみろ」


スラリと剣を構えるアリーズンに他の仲間もそれぞれ武器を構えた。


「・・・ん?」


それにウキャンは違和感を感じた。

違和感の元はアリーズン達の持つ剣だ。

先程から目にはしていたが改めて見るとその剣は何か変だ。


「人間界の剣じゃあねーな

あれはエルフの剣・・・か?」


この言葉にアリーズン達は笑む。

そして全員が被っていた帽子を脱いだ。


「・・・・・!」


帽子で隠されていたエルフ特有の尖った耳が露わになる。


「全員エルフか!、てめぇ等は!!」


「エルフはエルフでもハーフだがね」


「ハーフエルフ・・ヒューマンエルフか・・・」


ウキャンとアリーズンのやりとりにザグーは息をついた。


「厄介だな・・」


そう呟く。

弱小の人間と違ってエルフは厄介なのだ。

だから極力は戦いたくない。

何せあの偉大なる師ワグーが敗北した相手なのだから。


「ははは、ふざけろ!!

エルフの剣だぁ?

エルフの剣なんざ実戦じゃ糞の役にも立たねーだろ!!」


ウキャンの嘲笑にアリーズンは口元を上げる。


「ほぅ?、ダ―グジェギスの魔族様はモノ知りだな」


「ぷ、エルフ界旅行記も知らねーのか?

あれにはアンデッド戦争においてエルフ製の武器がすぐ折れたり切れ味が無くなったりで使い物にならなくて犠牲者が多く出たと書かれてあるぜ?

それによぉ~、ダ―グジェギスじゃねーよ

今はダークエクセナルだ!!、バカが

情報が古ぇーんだよ、このカス野郎」


「なる程、国の名を変えたのか・・それは知らなかったな」


「ま、どーでもいいけどよぉ~そんな事は

糞エルフ共、うぜーからとっとと死ね

ザグー、さっさとやれよ!!」


そのウキャンの言葉にザグーは手を翳す。

その途端、骸骨戦士の一体がアリーズンに襲いかかった。


キィン!!


剣と剣がぶつかり合う。

何度かの打ち合いの末、骸骨戦士の剣が折れ地面に突き刺さった。


「んん!?」


ウキャンもザグーもその事に驚きの表情を浮かべる。

現状骸骨戦士達に持たせている剣は高級ではないがかなりに強度を持つ剣を持たせてある。

人間界の武器は勿論、エルフのひ弱で脆弱な武器など比較にならない程の剣。

その剣が折られる、これは・・・


「なんだぁ!?」


驚くウキャンにザグーは改めてアリーズンの剣を見た。


エルフの優雅でスマートなデザイン・・

旅行記に描かれているエルフの剣の絵とは何かが違うデザイン性。

無骨というか何というか、極めて泥臭いフォルムを併せ持つ変な剣。


「何だ?」


剣に関しては素人なザグーやウキャンでも旅行記に描かれた通常のエルフの剣のそれとは違う事は何となく分かった。


「その剣は・・エルフの剣・・か?」


ザグーの言葉にアリーズンはニヤリと笑む。


「エルフの剣だ、ただし新たなるエルフの剣」


「何?」


「エルフ界の新技術さ

そこのガキ、さっきこう言っていたな?

エルフ界旅行記がどうたらと?

そんな20年前の情報なぞ古いんじゃないかな?」


アリーズンの言葉にウキャンは顔を歪ませる。




エルフ界においてアンデッド戦争の悲劇の一部に武器の切れ味や強度、防具の耐久性の弱さが戦後議論された。

結論としてはエルフの女王メリーカはドワーフ界にエルフ用の武器防具の作製を依頼。

とはいえ急に別種族であるエルフの武器や防具が作製できるわけでもなく、取りあえず何とか出来た物もエルフが使いこなすにはかなり使いづらい代物であった。。

しかし魔王軍敗退とはいえ直ぐにまた進撃してくる危険性もあった為、急場の補強にはなった。


ただそれだけに留まらずメリーカはドワーフ製並みに実戦に耐えうる武器防具をエルフ達自身が独自に作り出せる必要が有ると考え、ドワーフ界に赴きその鍛冶の技を得る計画を打ち出した。

アンデッド戦争前ならばエルフがドワーフに教えを請うなど・・という声が出て頓挫した筈の計画だが、アンデッド戦争後それらの反対派は口を噤んだ。


こうして複数のエルフ達をドワーフ界に修行に出したのだ

それは希望者を募っての計画であり、やる気のあるエルフなら誰でも参加可能な計画であった。

しかし実際に募集をかけた所、応募者はルーアクシウム出身者・ルービアンカ出身者・ルーネメシス出身者・・すなわち魔王軍と実際に戦ったエルフ達が多数を占めるという結果になった。


こうしてドワーフ界に行き何年にも渡って修行を積んだエルフ達は一人また一人とエルフ界に帰ってきたのだ。

そして学んだ技を持ってエルフの新たな武器防具を生み出す作業にかかった。

しかしこれが相当困難を極めた。

エルフが持ったり着用したり出来るモノになるために、かなりの研究と試作が繰り返されたが中々上手くはいかない。

そうしてその試行錯誤にかなりの時間が費やされる事になった。

だが長年の努力の甲斐があり、最近ようやくドワーフ製に匹敵する程のエルフ専用武器防具が生み出されたのだ。



「それじゃぁ、そろそろこちらから行くぞ」


剣を構えたアリーズンがウキャンとザグーを睨む。


ピィィィィィン


それに呼応するかのようにアリーズンの持つ剣の刀身の一部分に輝くエルフ文字で『アルン』という名前が浮かび上がった。

それはその剣の製作者の名前だ。

アルンは長い間ドワーフの剣匠ドンバクの元で鍛冶の技術を学んだルーアクシウム出身のエルフで、最近頭角を現してきた腕の良い剣の鍛冶師である。



「いくぞ!!」


そう言うとアリーズンとその仲間達は一斉に動いた。


「ちっ、構うこたーねぇ

たかが剣が少しばかり新しくなった程度だ

相手は五人、やっちまえ!!」


ウキャンの言葉にザグーが指を鳴らす。

それと同時に骸骨剣士もまた一斉に動きだした。


ヒュオン!!


どこからとなく拳大の火球が飛んで骸骨戦士の一体にぶち当たる。


ボウン!!


火球に当たった一体のローブが激しく燃え上がった。


「!?」


ザグーは飛んできたであろう方を見た。

そこには灰のローブと薄茶の色のローブを来た老人二人が少し離れた半壊しかかった建物の屋上からこちらを見下げていた。


「何だぁ!?、あのジジィ共は?

あいつらもこいつらの仲間か?」


歯をむき出しにして敵愾心を剥き出しにするウキャンに少しは落ち着けと思うザグー。


「魔法使いか、しかし・・」


今の火球は大した威力ではない。

しかしあの距離から正確に当ててきたのはかなりの腕前だ。


「厄介だな・・」


そう思う。



「やったぞ!!」


骸骨戦士に火球を当てた当の本人は年甲斐もなく喜んだ。


「見よ、アローガン

儂もまだまだ現役だぞい」


はしゃくマーギランにアローガンは呆れ顔で言う。


「まるで子供のようなはしゃぎぶりだな

それで?、アレ等には勝てそうか?」


「ん?・・うむ、骸骨スケルトンかのぅ

ただの骸骨共ではなさそうだが、新しい魔法を試してみる価値はある」


「新しい魔法?」


「そうだ、よもや姪が指示を出して研究させた対スケルトン用の魔法がここで役に立つとはの」


「・・メリーカちゃんか、対スケルトン用の魔法とは?」


「アンデッド戦争後、若いハイエルフの子らが生み出した魔法があっての」


「なるほど、再び戦争になった時用の対策はしてあったと?」


「そういう所は抜かりがないからのぅ、姪は」


「ははは、メリーカちゃんらしい

で、それは効きそうか?」


「さて?、実戦では初めてだからな

やってみなければ分からん」


「そうか、期待しておく

では我らも行くぞ」


「うむ」


骸骨達を眼下に見下ろし、アローガンとマーギランは遠のいていたいつぞやの戦い以来の戦闘に気を張った。

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