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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・前半
51/88

【カトプラン村の戦い】

ドウンッ!!


戦いの火蓋が切って落とされたのはまだ乱交が続いている深夜の1:00頃。


冒険者達が一斉にオーガの野営地を襲ったのだ。

慌てたのはオーガやオーグリスは最初何が起こったのが理解出来ていなかった。


「敵襲ダ!!」


混乱する部隊にオーガの隊長ギークは一声し、オーガ達を一喝する


ギークの声にオーガやオーグリス達は現状を把握し、近くに置いていた武器を手に取る。

そうして冒険者達とオーガの戦いが始まった。



「凄いな」


ルセルは篝火の中で慌てふためくオーガ達を遠目で見て呟いた。

タウナから話は聞いたが実際に見るとその筋肉隆々の異様な体格と威圧感に感嘆する。

人間と違って夜目が利く分、その容姿はハッキリと見える。


しかしルセル達の目的はオーガ達ではない。

タウナ、マーギラン、ピェスラナ、そして何故か付いて来たライトリー。

このメンバーで敵の本拠地に乗り込む事。

それが今回の計画である。

勿論、オーガ軍を引き止める役目を持った者達もいる。


ルセル的にはオーガと戦いたかったが、計画的にタウナのサポートという重要な役割があるためそこは諦めた。

しかしそれはカトプラン村に入って直ぐに予定を狂わされる事になる。


「スケルトンか!!」


それは父のノートンがよく言っていたスケルトンであった。

そのスケルトンの人間型ヒューマンタイプ数十体と動物型ビーストタイプ2体が同時にルセル達に襲いかかる。


人間型は弱い。

それも父から聞かされていた。

強いのは動物型だと。

そしてその動物型と戦う事になった。


「や!!」


ピェスラナの白い炎がスケルトンの何体かを飲み込み溶かした。

しかし動物型は俊敏な動きで炎の攻撃を難なく交わした。


「速いな」


剣を構えライトリーが吠える。


「気をつけて下さい、こいつ等はかなり強いですよ」


同じく剣を構えながらルセルは眉を寄せた。

本来ならスケルトンとの戦いは嬉しくにやけたい気持ちがあるのだが、戦闘開始時タウナは戦いをルセル達に任せて一人で敵の隊長暗殺に向かったからだ。

タウナが心配だ。

それ故にじっくりと戦ってはいられない。

しかし動物型は聞いた通り俊敏で動きを捉えられない。

心配、その焦りが返って動きを鈍らせる。

そして何より敵はそれだけではない。

他の冒険者達も何名かカトプラン村に入り、正規兵と戦っているとはいえ、ルセル達が一際目立つ為正規兵達も寄ってくる。

マーギランは攻撃魔法で戦っているが、多勢のためにかなり手こずっていた。

周囲にいた骸骨人間型を倒したピェスラナはマーギランの支援に付く。

必然的にルセルとライトリーが動物型と戦う事になった。

しかしそれだけではない。


「中々に面白い連中だ」


魔術師の格好をした男がルセルとライトリーに話しかけた。


「何だお前は?」


ライトリーが男を睨む。


「フフフ・・・私はザーバ、骸骨使師スケルトンマスターだ」


「何?、てこたぁコイツらの親玉か!!」


ライトリーの言葉にザーバは片手を挙げる。

すると二体の動物型は跳躍しザーバの横左右に着々した。


「フフフ、この村の村人達の骸程度を倒した所でいい気になるな山賊ども、いや・・冒険者だったかな?」


「あぁん?、村人達の骸って・・まさか!!」


「そう、骸骨兵士スケルトンソルジャー

この村の村人達の骸骨だ」


「ちっ、胸糞悪ぃ」


ライトリーの悪態にルセルはスッと剣の切っ先をザーバに向ける。


「アナタを倒します」


「フフフ・・・その尖った耳

君はエルフかな?、やってみたまえ」


そう言うと動物型二体がルセルに襲いかかった。





「状況はどうなっている!!」


気分良く酒を飲んでいたドバネ隊長は、作戦室として使用している家から飛び出し近くにいた部下に怒鳴った。

怒鳴られた部下は動揺しながらも答える。


「は、村のあちこちから山賊が侵入!!

目下、各地で我が隊と交戦中です!!」


それを聞き、ドバネは更に怒鳴る。


「オーガは!?、オーガ共はどうした!!、何をしている!!」


「は、どうやらオーガ達も攻撃を受けて応戦しているようですが・・突然の事なので体制が整わず混乱しているようです」


「う---」


唸るとドバネは煙草を取り出し火を付ける。

苛つく時は一服すると落ち着く。

こういう時はまず落ち着く事だ。


「ふぅ--」


吸って、吐く。


丁度その時にフォルテスがドバネの所まで走ってきた。


「隊長、夜襲です」


「分かっとる!!」


ドバネはフォルテスの言葉に機嫌悪く答えたが、普段冷静沈着なフォルテスが多少なりとも動揺している様子に却って冷静になれた。


「敵は何人か分からんが・・オーガの所にも攻撃を掛けている以上、結構な人数な筈だ」


ドバネの言葉にフォルテスは頷く。


バズンッ!!


遠くで冒険者が射た矢がドバネを掠め、後方の建物の板壁に突き刺さった。


「・・・ぐぬぬ、山賊ゴミの分際で生意気な!!」


ドバネは持っていた剣を引き抜き周囲を見渡した。

一部で火が放たれ家屋が赤々と燃えている。

あちこちから聞こえる兵の絶叫と剣の打ち合う音。

女達の悲鳴。

遠くから聞こえてくるオーガ達の咆哮。


「ぬーー」


ドバネは呻く。


こういった奇襲で既にあちこちで戦闘が始まっている状況では全体の状況把握が難しい。

少し落ち着けば部下達がこの作戦室の家に集まってこようが、それまでが長い。



しゃりしゃりしゃり、しゃりしゃり・・


真っ赤なローブを着て顔をスッポリとフードで覆い隠し、サンダルで砂を踏みならしながらドバネ達に近寄ってくる者がいた。


「・・・!、何だ貴様は?!」


ドバネの怒声にも怯まず赤いローブを着た者は近寄ってくる。


スッ・・


ドバネの前に出たフォルテスは魔法の杖を構える。


一定の距離まで来た赤いローブの者はそこでピタリと足を止め、口を開いた。


「銀髪の魔法使いフォルテス・・とドバネ隊長・・ね」


「・・・女か!」


その女の声にドバネは吐き捨てるように言う。


「そうよ?、初めまして、そして死になさい!」


ファン!

・・・という音と共にフォルテスとドバネの視界が暗くなる

そして直ぐに目の前は真っ暗になり何も見えなくなった。


「!!」


ドバネは何が起こったのか理解出来ず叫んだが、フォルテスは即座に理解した。


暗闇魔法ダークネス!!」


その時、シュッという音と何かが吹き出す音と共に人が倒れる音が聞こえた。


「しまった!!、まさか・・」


そう思ったが、目が使えない以上確認のしようがない。


「ねぇ・・」


不意に近くから先程の女の声が聞こえた。


「大人しくすれば殺しはしないわ、暴れれば死ぬ事になるれど」


「・・・・・」


フォルテスは女の言葉を頭に並べながら、現状況下において最も適切な行動は何かを考えた。

しかし、出てきた答えは大人しくする・・である。


「・・・分かった」


そう答えたフォルテスに女は笑む。


「素直な男は好きよ、ここじゃアレだから、建物に入るわ」


「・・・分かった」


背中に刃物の感触を感じ、その刃物の感触の誘導によって目の見えないフォルテスは建物の中に入った。

そして入口のドアが閉まる音がする。


「これでうるさくないわね」


「・・・私をどうするつもりだ?」


「単刀直入に言うわ、兵を連れてダークジェギスに帰りなさい」


「・・・?、意味が判らない」


「ドバネ隊長は死んだわ、隊長が死んだ以上一旦兵は引くモノよ」


「なるほど、やはり先程の・・・」


「隊長が死ねばアナタが兵を率い戦う事になるわよね?

でも、この状況でそれを言えば殺すわよ?」


「・・・どの道、兵を引けば私が責任を取らされ総督に殺される」


その言葉に女はフォルテスの耳元で囁く。


「ターリィナはアナタを殺さないわよ?、理由は判るわよね?」


「何を言っている?」


「アナタとターリィナの関係、知らないとでも?」


「何の事だ?」


「うふふ、しらばっくれても無駄よ

さぁ、撤退する?しない?」


フォルテスの首筋に刃を当てターリィナは笑む


「ああ、そう言えば一つ交換条件らしい話があるわ

名前は何だったかしら、ええーと・・・

そう、ウキャンだったかしら?知ってる?」


「ああ、知っている・・」


「撤退するなら返すわ、言わば人質と交換よ」


「・・・・・」


タウナの条件にフォルテスは考えた。

指揮官たるドバネ隊長が死に、現在自分も命の危険に晒されている。

そして撤退とウキャンとの交換条件が提示されている。

生死不明だったウキャンが捕虜として生きているのはある意味朗報だ。

一応生きているならばその救出も兼ねての今回の軍事行動。

ならば今、撤退が最善の方法ではないか?・・と。


そもそも山賊討伐戦は余興であり、真の戦いではない。

フォルテスもターリィナからは危険と判断した場合、撤退せよと言われていた。

耳元で甘い吐息と共に。

ならば・・・。


「わ・・分かった・・撤退する・・」


それを聞いてタウナは刃を首筋から離す。


「賢いわね、頭の回転の早い男は好きよ」


「・・あ・・ああ

さぁ、早くダークネスを解いてくれ」


「・・・私の顔は見せられないわ、敵に素顔を晒す馬鹿はいないからね

私がここから出ていったら解いてあげる」


「ん・・了解だ・・」


「じゃあ交渉成立ね、約束は守ってね?

朝方にはウキャンをこっちに寄越すから、じゃあね」


「待て、お前は何者だ?」


「赤い戦士よ」


そう言うとタウナはドアを開け入口から出て行く。


バタンッ


扉が閉まった音と共にフォルテスのダークネスは解かれ目が見えるようになった。


「あれが赤い戦士か・・」


女である事はターリィナから聞いて知っていた。

しかし実際に接してみてフォルテスが今まで出会った事がないタイプの恐ろしい女である事が分かった。

もしフォルテスが交渉拒否や余計な事を言おうものなら即座に首は掻き切られていたであろう。


「恐ろしいな・・・」


その今し方の恐怖感と助かったという安心感はフォルテスにターリィナの匂いと柔らかい肌の感触を思い出させた。

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