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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・前半
52/88

【戦いの後】

カトプラン村の戦いから一週間。


銀髪の魔法使いフォルテス率いるドバネ隊とウキャン、オーガ軍は無事カトプラン村から撤退しダークジェギスに帰還していた。

山賊の襲撃時も正規兵やオーガ軍に軽傷者は複数出たが、重傷者及び死者は誰も出なかった。

要はドバネ隊長暗殺の為の撹乱であり、本気で挑んできてはいない証拠だ。


ダークジェギスに着いたフォルテスはその足でターリィナに今回の事に関する一連の報告をする。

山賊の襲撃、赤い戦士のドバネ隊長殺害、ウキャンと撤退の取引。


ターリィナから今回の件に関しての責任問題を追求されるかと思っていたフォルテスだが、特にそういった事はなかった。

そういう意味では赤い戦士の言った事は正しい。

ただ、最近は二つの事柄に怒りを見せ非常に不機嫌だ。


一つはドバネ隊長殺害を赤い戦士が行った事。

山賊とは繋がっていないと思われていたが、結局は繋がっていたか・・・とターリィナ苛立つ。


もう一つはリゴーシュ国王の裏切り。

降伏文書をこの間寄越してきた筈が、山賊との戦いに魔王軍が敗走したと各地に話が広まった瞬間掌を返してきた。

そして今度は此方に宣戦布告の文書を送ってきた事だ。


「・・・どういう事ですか?」


そんなリゴーシュ国王の裏切りにターリィナは金髪の戦士に聞く。


「はい、どうやら掌を返すのが得意な性格の人物のようです」


金髪の戦士はターリィナの顔色を見ながら言いづらそうに答えた。


「僅かな時間にこれほどコロコロ変われるものですか?」


「恐れながら・・・強い者には諂い弱い者には唾を吐く

そういった下劣な屑の部類ではないかと」


「なる程、しかし曲がりなりにも一国の王がこれとは・・・」


ターリィナ的にはリゴーシュ国の降伏自体も何か鬱陶しいと思える感覚を感じていたが、対ライオネル戦を控えている今、リゴーシュ国への降伏はメリットがあった。

しかし敵対するとなれば、ライオネルの前にまずリゴーシュを潰さねばならない。


「・・・仕方がありませんね、余り無駄な出兵費用は掛けたくありませんが・・・

将軍に伝えなさい、リゴーシュ国への侵攻を開始せよと」


「は!!」


そう言うと金髪の戦士は部屋から出て行った。


金髪の戦士が部屋から出て行った後、同じく近くに控えていたフォルテスにターリィナは聞く。


「赤い戦士はまた出てくると思いますか?」


「分かりません、しかし可能性はあります」


「そうね・・・」


そう言うとターリィナはフォルテスをすぐ側まで招き寄せる。


「よくぞ無事に戻ってきました」


そうフォルテスの耳元で囁き僅かに笑んだ。





取引によってドバネ隊の元に返されたウキャンはそのまま構わず山賊を追撃して殲滅すべきとフォルテスに主張したが、フォルテスはダークジェギスに一旦帰還すると主張。

隊の決定権はフォルテスにある為、結局ウキャンは渋々従った。


ダークジェギスに帰ったウキャンは一連の流れと山賊殲滅の失敗の報をバルダムに送る。

とは言え諦める訳ではない。

確かにウキャンの連れてきた骸骨使士スケルトンマスターはほぼ全員が死んだ。

しかしここで引き下がっては仇討ちは出来ないし、何よりウキャンのプライドが許さない。


しかし戦力がなくては戦えない。

そこでウキャンは、ザーバと共に新しい兵を擁してアリーズンなる冒険者がいるチームを探し出し殺す計画を現在立てている。

そして今、新しい兵が誕生した。



骸骨2体がゆっくり立ち上がり、ザーバを見る。


「これは凄いなぁ」


ウキャンは思わず唸った。

骸骨達はウキャンの声に反応しウキャンの方を向く。

骸骨と言ってもただの骸骨ではない。

骸骨スケルトンの強化型である骸骨戦士スケルトンウォリアーだ。


ダークジェギスの城下町の一角にある部屋を与えられたウキャンとザーバはそこを研究室にして、骸骨戦士スケルトンウォリアーの製作に掛かっていた。

骸骨戦士スケルトンウォリアーとは文字通り骸骨の戦士であり、通常の骸骨よりも遥かに強化された骸骨の中位種たる存在である。

しかし、過去において完成させた者はたった1人しかいない。

ザーバはその人物の残していた研究所や資料を師から譲り受け、骸骨戦士を作製し起動させる事に成功した。

その人物とは20年以上前に生きていたワグーという骸骨使師スケルトンマスターである。


ザーバの師はかつてそのワグーの弟子だったが、ワグー死後は独自の研究所を立ち上げた。

しかし、ワグーの技は継承出来ず動物型ビーストタイプの複数起動や骸骨戦士スケルトンウォーリアーの作成を行う事は出来なかった。

諦めた師は以後は弟子を募り魔法を教え始める。


しかしそれはザーバの師だけではなく、ワグーの弟子だった者達に共通する事であり、ザーバの師が無能だったという事ではない。

そんな誰からも存在すら忘れられていたワグーの研究所を名目上管理者として所有していた師から鍵を貰い、入ったザーバはワグーという偉大なるスケルトンマスターが残した研究資料を元に瞬く間に技を修得。

現在では骸骨戦士を作れる者としてその道の第一人者となり、ワグーの後継者としてその研究所を受け継いでいる

研究所の地下にかつてワグーが極秘に開発していたまま眠る未完のアノ存在と共に。



「凄えーな、ザーバ

コイツ等は今日からアンタの守護戦士ガードだ」


そう言うウキャンにザーバは苦笑する。


「しかし、この2人を使うのは思い入れでもあったのか?」


そう言うウキャンにザーバは答えた。


「骨格かな?、生きている時に見た印象はセクシーで可愛いらしいスケルトンになると思った」


「・・・え?」


その答えにウキャンは引く。


「で、こいつ等を?」


「そう、そして思った通りの可愛ささ」


目を輝かせて姉妹達を見るザーバにウキャンはどん引きした。



ザーバはウキャンがカトプラン村から出発した後、村の中では唯一死んだ姉妹達を骸骨戦士スケルトンウォリアーとして復活させる事を思いついた。

勿論、ただの骸骨兵士スケルトンソルジャーならいざ知らず骸骨戦士スケルトンウォリアー製作となるとそれなりの設備がいる。

それ故に取りあえず解体して骨だけにしてダークジェギスに持ち帰り、現在骸骨戦士として姉妹を復活させた。


「骨の何が可愛くてセクシーなんだよ」


ウキャンはそう言いぽんぽんっと姉だった骸骨戦士の頭を叩く。


「おや?、美しいとは思わないかい?

僕は彼女達のセクシーさに心を奪われているよ?」


「・・・・・」


そう言われてウキャンは顔が引き吊る。


「ま・・まぁ・・格好いいとは思うけど・・」


そう言いながら姉妹達を見た。


姉妹達は黒色のローブを纏っている。

フードを深々と被り、その顔はよく見えない。

しかし死神を思わせるその出で立ちはカッコ良く見えなくもない。

しかもその元の姿が可愛い容姿の姉妹達ならば、オドロオドロしさも薄れる。


・・・しかし、いくら何でも骸骨をセクシーとは思えない。



コンコンッ


研究室の扉をノックする音が聞こえ、ザーバの「入りなさい」の声と共にアーネがコーヒーカップの乗ったお盆を手に持って入ってきた。

その首には青い首輪が付けられている。


カトプラン村撤退時にカトプラン村の女達は全員部隊と一緒にダークジェギスに連れてきた。

その中から選んだ12人の若い女達を使って骸骨戦士を作りたい旨をターリィナに希望し、その許可は下りた。

それによってこの姉妹以外にも他に12体の骸骨戦士を現在製作中でありそれは完成間近だ。


ちなみにアーネについてはカトプラン村からのザーバのお気に入りの娘であり、ザーバの身の回りの世話をさせている。


「これならば遅れは取るまい」


そう呟くザーバ。


カトプラン村での戦いで骸骨兵士スケルトンソルジャー骸骨動物型スケルトンビーストをエルフやシルフや人間の若者によって破壊されたザーバは彼らが再び立ちはだかってくる事に期待するのだ。







玉座の間にて小躍りしている男がいた。


まさに絢爛豪華・・という言葉が似合う程にゴージャスな王宮に相応しい煌びやかな色の上質な衣服を着ている。

同じく派手なドレスを着た妃たる王妃とその娘である王女。


「あははははは、どうだ!お前!

今頃はターリィナ総督も・・いや、ターリィナも悔しがっておるだろう!」


「素晴らしいわ、あなた!

高慢ちきなあの女もさぞや反省したでしょう!」


妃の言葉に王は更に笑う。


「そもそも山賊に負けるような弱小軍に恐れをなしていたのが間違いだったのだ!

魔王軍などこの際、我らが攻め入り討伐してくれん!」


「素晴らしいですわ!、お父様!」


王女は目を輝かせながら更に言う。


「お父様~~~

もし・・もしよ?、もしもの事なんだけれど~~」


「ん?、何だマライア?」


「はぁい、お父様!

その時はダークジェギスでしたっけ?

そこにある宝石類をマライアに下さい!

きゃ!、言っちゃった♡」


「おお・・構わん構わん

全てマライアにプレゼントしよう!」


「やった~~~~♡

お父様~~~~大好き♡♡♡」


そう言うと父の右のほっぺにキスする王女。


「おお・・ほ・ほ・ほ・」


娘にキスされて大喜びの王に妃の一言が飛ぶ。


「あ・な・た~、わ・た・し・に・は~?」


その言葉と同時に妃の甘い視線が飛んだ。


「ん?・・おお・・え~と

そ・・そうじゃな・・それじゃあ・・金銀財貨を・・」


「やった~~~~♡

あ・な・た、大好き~~~♡」


そう言うと王妃は王の左の頬にキスをした。


「ほほほ・・・任せておきなさい!!、お前たち!」



「・・・・・」


そのバカ騒ぎを諦めの表情で見つめているのは、この国の内政大臣である。

また始まった・・・という顔で胃の痛みを和らげる薬を飲む。


この王はかのリゴーシュ国王。

本人達の妄想を余所に、こうして魔王軍のリゴーシュ侵攻が始まった。

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