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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・前半
48/88

【動くオーガ軍とアトニーノの忠告】

「オーガが動き出したか・・・」


パークの言葉にナトリー達は顔を曇らせた。


タガノロン村に近隣各地から集まった冒険者達さんぞくは約100名ほど。

基本的にひそれぞれのチームを1グループとし、21グループを結成して骸骨軍団を迎え撃つ作戦を決行した。

3グループは万が一の為にタガノロン村の守りに。

後はタガノロン村とヤクリラン村を繋ぐ森林道に潜伏し敵を待つ。


しかし余りにも単純に道を素直にやってきた骸骨軍団だったが、潜伏場所に差し掛かる直前に異変を察知したらしく骸骨動物型スケルトンビーストタイプを様子見に放ちその近くに潜んでいた冒険者達と交戦。

それを皮切りに戦闘の火蓋は切って落とされ、パーク達のメンバーもまた骸骨動物型と戦闘に入った。


動物型の戦闘能力はパーク達の想像よりも遥かに高く、たった一体相手するだけでも相当手こずった。


戦士であるパークとドートナーが剣での接近戦を展開する中、盗賊のラグドンが小剣ショートソードでの攻撃補助として接近戦に参加。

魔法使いのアダージュ、ナトリーは魔法での攻撃補助として殆ど効果のない魔法攻撃で援助するというフォーメーションである。


と言っても、余りにも魔法攻撃の効果が薄いためアダージュは途中から小剣に切り替え接近戦に参加した。

動物型も途中から一体から二体に増え、危機的状況ながらも一体を倒し、もう一体は駆けつけてきた他の冒険者メンバーの加勢で倒す事が出来た。

しかし、この戦いでラグドンは命を落とした。


そしてパーク達の戦いはこれで終わった。

他の動物型は別の冒険者達がそれぞれ倒したからだ。

動物型を操っていた骸骨使士達スケルトンマスターも他の何グループかの冒険者達が戦いの末、一部を除き倒した。


倒さず捕縛したのは骸骨軍団を指揮していたウキャンと一部の骸骨使士達スケルトンマスターだ。



「お前みたいなガキが指揮官だとはな」


シダンダートはウキャンを見て言い放った。


「だったらどうだってんだ?、おっさん」


その言葉にシダンダートはウキャンの腹に蹴りを入れる。


「ぐはぁっ!!」


溜まらずに倒れ込もうとするウキャンに男達がウキャンの腕を左右から持ち無理やり起きあがらせた。


「言葉遣いに気をつけろよ小僧、お前がカトプラン村でやらかした事は俺も頭にきてるんだからな」


ぐいっとウキャンの髪を掴み、上に引き上げるシダンダート。


「テ・・テメェ・・殺すぞ、コラ!!」


そのウキャンの言葉にシダンダートはもう一発腹に蹴りを入れた。


「ぐぎゃ!!」


ウキャンは潰れた声を発し、ぐったりとする。

しかし地に倒れ込める訳でもなく、先程と同じく男達に無理やり立たされた。


「殺す?、殺してみろ小僧」


再び髪を掴み上に引っ張り上げたシダンダートはウキャンの頬をひっぱたいた。


「おら、どうした?

俺を殺すんだろ?、殺してみろ遠慮すんな」


言いながら頬を叩き続けるシダンダート。


「い・・痛ぇ・・痛えっ・・や・・止めろバカ・・」


絞り出すウキャンの声にシダンダートは手を止めた。


「は、やはりただの餓鬼か

痛いよ~、痛いよ~ってか」


冷笑するシダンダートや周囲の男達を睨みつけウキャンはべっと血の混じった唾を吐いた。

どうやら口の中が切れたようだ。



シダンダートは元冒険者だ。

実際に冒険者として活躍していたのは20年くらい前の話。

シダンダートのチームは西方でそこそこに名を知られるチームにまでなり、東方最大級の戦争と言われたエウンジーク奪還戦争にもかなりの遠方ながら駆けつけ参加した強者である。

もっともその頃は今と違って冒険者ギルドも活気と権威があった。

東方西方北方南方関係なくエウンジーク奪還戦争の参加者を高額で募り、それに掛かる一切の費用は全てギルドが負担するという気骨を見せたものである。


戦争後暫くしてシダンダートは引退し、国に属さない村で一生を終える筈だったが、今回の騒動で再び剣を取った。

歴戦の戦士という事で各地から集まった元冒険者達や後輩の現冒険者達からリーダーとして推され指揮を取っているが、正直柄ではないのはシダンダート自体も判っている。


歴戦の戦士と言っても冒険者として大した実績は残してはいないし、エウンジーク奪還戦争もメンバーと一緒に参加したがコボルトの群れと戦ったにしか過ぎない。

魔王軍の要塞と化していたエウンジークに乗り込んだ当時最強と言われた冒険者達とは顔を合わせただけで、特に深い繋がりがあった訳ではない。

しかし後輩達は今や伝説となっている最強の冒険者達と一緒に戦ったというシダンダートの実績は「凄い」らしい。

何が凄いのかはシダンダート自体は分からないが。



「お前、何しにここに来たんだ?」


シダンダートの問いにウキャンは答える。


友達ダチの仇討ちだ」


「仇討ち?」


「この間、魔界から来た一団をお前ら襲っただろ」


「・・・・・」


シダンダートは少し考え、近くにいた男に聞く。


「あったか?、そんな事?」


男はチラリとウキャンを見て答えた。


「多分・・・アリーズン達だな、何かとんでもないモン運んでいるらしくて取りあえず攻撃した・・みたいな話をしていた」


それを聞いたウキャンはニヤリとした。


「アリーズンか・・・その名は覚えたからな」


シダンダートと男は顔を見合わせ吹き出した。


「おい、復讐劇夢見てるらしいがアリーズン達は強いぞ

それに生きてここから出られると思うな小僧」


「ああ!?」


そう凄むウキャンにシダンダートはもう一度腹に蹴りを入れる。


「げはぁ!!・・うう・・げほっ・・げほっ・・」


咳き込むウキャンを見ながらシダンダートは言う。


「お前にはまだ聞きたい事がある、全部吐くまで容赦しねえから覚悟しとけよ!」


その言葉にウキャンはギリッと歯を噛んだ。



バタン!!


その時、部屋の扉が開き冒険者の1人が入ってきてシダンダートに近づき耳打ちした。


「・・・・・」


耳打ちされたシダンダートは眉をひそめ険悪な顔になる。


「ゼクス!!」


「はい」


ゼクスと呼ばれた男はシダンダートの言葉に返事する。


「オーガ軍が動いたみたいだ!、こっちに来るぞ!!」


「・・・敵の数は?」


「およそ200、この数はオーガだけだ

魔獣使士ダークビーストマスター入れれば250~300ぐらいか、およそ5日後ぐらいにはここに雪崩れ込んでくるだろう」


シダンダートの言葉に勝利に浸っていた男達は顔色を変えた。


「・・・・それで?、どうします?シダンダートさん」


「ああ、遠方の冒険者達に使いを出してくれ

今回は間に合わないから来れなかった連中にな

後、近距離で来なかった連中にも今一度使いを出してくれ」


「分かりました、では早速・・・」


そう言うとゼクスは部屋から出て行く。


「は・・ははは・・」


ウキャンは乾いた笑いを零す。


「何だ、何が面白い?」


そんなウキャンにシダンダートは低い声で唸る。


「ははは・・・テメーらはもう終わりだ

直接俺の手でブチ殺したかったが、オーガが動いた以上お前等に勝ち目はねーよ!」


「ちっ・・・餓鬼が!、牢に入れておけ!」


シダンダートは歯軋りしウキャンを捕まえている男達に命じた。






コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ


辺りが静けさに包まれている深夜

ダークジェギスの一角にある建物の内部通路にブーツの音が響き渡る。

そしてその音は一つの部屋の前に辿り着いた。


コンコンッ


部屋のドアをノックする。

暫くして木製の比較的分厚いドアが三分の一開いた。


中から顔を覗かせたのはレリーナである。

レリーナはブーツの音の主を見ると驚いた表情で扉を全開に開く。


「アトニーノ様!、どうしてここに!?」


レリーナの信じられないという顔にアトニーノは笑む。


「デルロイは居る?」


「あ!・・はい・・暫くお待ちを!、あ・・いえ・・お入り下さいませ」


慌てるレリーナにアトニーノは笑む。


応接室に通されたアトニーノはソファーに座りくつろいだ。

暫くして主のデルロイが慌てて応接室に入ってきた。


「ア・・アトニーノさん、お久しぶりです!」


まるで少年のような表情と瞳でアトニーノを見るデルロイ。


「久し振りね、お邪魔だったかしら?」


「いえいえ、とんでもない!」


「そう?、良かった」


デルロイは顔が綻ぶ。

そこにいたのはデルロイが愛してやまない当時のアトニーノそのままだったからだ。

そう、アトニーノの容姿はデルロイが度々夢に見る当時の若い頃そのままなのだ。


「しかし・・ですが・・なぜ人間界に?」



現在デルロイやレリーナがいる場所は人間界のダークジェギスである。

新たなるビジネスの為に部下を引き連れデルロイはダークジェギスに事務所を設立し、その近辺に家やマンションを建てさせそこを居住地として生活していた。

そんな中にあって、魔界の深部にいる筈のアトニーノが訪ねて来たのだから驚かない訳がない。


スゥー・・とアトニーノはカバンの中から小瓶を取り出す。


「これを渡しにきたのよ」


静かな動作で瓶を持っていない方の手を伸ばしデルロイの手を取り、小瓶を渡す。

手を取られたデルロイは年甲斐もなくドキドキした。

アトニーノは初恋の女性であり、尊敬出来る唯一の存在だからだ。

それは今も昔も変わっていない。


アトニーノが渡した小瓶の中には液体が入っている。

その瓶の中身は老化を防ぐ魔法の飲み薬だ。


アンデッド戦争終結後、不老の妙薬の研究を再開したアトニーノはリシープの協力もあって遂に不老の薬を完成させる事に成功した。


原液を稀釈して商品化した「不老の妙薬」は老化を抑える薬として特権階級層や超富裕層から絶大な支持を受け今に至る。


なぜ特権階級層や超富裕層だけかと言うと、金額的に上級層以外には手が出せる代物ではないからだ。

当然レリーナには手が出せないが、喉から手が出るほど欲しがったレリーナは一度デルロイに相談した事があった。

デルロイはアトニーノにコンタクトを取った結果、特別に超破格の格安価格で購入する事が出来るようになった。


一応の条件としては王族や貴族・富裕層への宣伝を口伝えで行って欲しいと提示したが、アトニーノ自体はそんな宣伝効果には特に期待はしていない。

あくまで格安で提供する上での建前だ。


スゥー・・・


アトニーノはデルロイの手を離す。


「あ・・・」


思わずそう声に出してしまいそうになる言葉をデルロイは飲み込む。


「帰るわ」


「え!?、もうですか???」


呆気に取られるデルロイにアトニーノはデルロイの瞳をじぃーと見つめ言った。


「一つだけ忠告しておくわ」


「え・・何ですか?」


「人間界には長くいない事、今度のビジネスがどんなモノかは知らないけれど長期滞在するのならいつでも逃げられる準備はしておく事ね」


「・・・魔王軍が敗北する・・・と?」


「パライアル・アリ-ナの占いよ

私も思うわ、このざわつく感覚・・エルフ界での戦争に似ている」


「エルフ界の戦争・・・」


それはデルロイのトラウマでもある。


「わ・・分かりました・・いつでも逃げられる準備はしておきます・・」


その言葉に頷き、アトニーノは応接室から出て行った。

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