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竜怜のハーフ  作者: ナウ
二章・炎の祭典
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【炎の祭典、開幕】

「そうですか、ルセルは無事に封解の儀を終えたのですね」


竜界にある王宮の一室。

ふわっふわ素材の台座の上に白銀の美しい身体を横たえたワイバーンが若い竜騎士に言った。


精霊界から竜界に帰ってきた竜騎士団は火竜ファイヤードレイクのグラードルが封じられた宝石と竜界へ連行してきた暗黒竜騎士ダークドラゴンナイトを竜界の機関に引き渡した。


そして暫くして二人の若い騎士もまたエルフ界から竜界に帰ってきた。

シルティアはその二人の報告によって、ルセルが無事竜の力を取り戻した事に安堵する。


「それで、テストの方はどうでしたか?」


シルティアに聞かれ、若い竜騎士の一人であるカループが答えた。


「はい、エルナー様とミーナ様がそれぞれお試しになられて大丈夫であると確認が取れております」


「そうですか、安心しました」


それは懸案事項の一つであったからだ。

ルセルを竜界に入らさなかったのは竜の特性である『甘い匂いの体臭』があったからである。


竜の甘い匂いは他の生物の神経を著しく刺激するようで、言わば心身共にかなり良くない。

竜の体臭だけではなく、竜界の空気もまた甘い。


生粋の竜ではないルセルは果たしてどうなのか?。

・・・と悩んだノートンとシルティアはルセルが成長するまではエルフ界で育てる事にした。


今回の解封の儀のついでに、そのテストも兼ねて行うようにシルティアがエルナーに指示を出したのだ。

テストと言っても簡単なモノで、薄めていた甘い匂いの濃度を上げていき本来の匂いまで上昇させルセルが平気な様なら合格である。


結果はルセルに甘い匂いの耐性がある事が明らかになった

これによってダイナハーブ家との縁組みも、それについては何ら問題は無くなった。

何よりもルセルが竜界に来れる様になった事は非常に重要な事柄である。



「それで、夫・・・ノートンはダイナハーブ家との事はどう言っていましたか?」


甘い匂いの件はクリアしたが、ルセルの結婚についてはノートンの同意がいる。

そして何よりもルセルの意思はどうなのか?・・という点。

シルティアの心配事であるその案件についてカループは口を開く。


「はい、その件についてはノートン様からお手紙を預かっております」


そう言うと持っていたカバンの中から封に入れられた手紙を取り出した。


「・・・・・」


目を輝かせシルティアはカループの持っていた手紙を手から浮かせ、目の前に持ってくる。


パラリ


宙に浮かんだ封の中からノートンの手紙を取り出し目を走らせた。

一通り目を通しシルティアはフフッと微笑む。


「ノートンは相変わらずだ・・・と、そしてルセルに早く会いたい・・・と」






おおゆみの照準を巨大な亀もどきに定める。


「一弾目撃て!!」


号令と共に弩から発射された弓が亀もどきに刺さる。


「二弾目撃て!!」


一発目を撃ったグループとは違うグループが二弾目を発射し、亀もどきに弓の嵐を食らわせる。


しかし、亀もどきは弓を受けながらもビクともせずに前進してくる。


「三弾目・・うわ!?」


号令をかけていたドワーフの肩にガシリと何かが掴んだ

そして持ち上げられ、空高く上がっていく。


「鳥だ!!」

「あっちは龍だ!!」


ドワーフの重装弓兵の頭上を鳥と龍が舞う。


「虎も来たぞ!!」


盾を構えた重装歩兵が吹き飛ばされる。

虎は地上を駆け回り歩兵達を次々と攻撃した。

巨大亀は地をゆっくりと前進し、ドワーフ軍に近寄ってくる。

それを迎え撃つのは重装騎兵隊。


亀、龍、虎、鳥


四つのゴーレムを操るのはフレイムゴーレムマスターのネイラムだ。


ドワーフ界に攻撃をかけたネイラムは四大ゴーレムを使って地上にあるドワーフの村々を攻撃し落としていった。

しかしドワーフの都市たる地下都市類は堅固な要塞のため、攻め入るどころか城門すら破壊出来ず時間だけが過ぎていく。


そうこうしている内に各氏族からの救援軍が到着。

野戦の運びになったが、穴蔵から出てきたモグラなどネイラムに取っては恐れずに足らずである。


ボゥッ!!


タートルゴーレムの全身が炎に包まれる。


「うお!?」


正面から対峙していた騎兵の乗っている馬は炎に驚き暴れ出す。

中には馬から振り落とされる騎兵もいた。


ボゥッ、ボゥッ、ボゥッ


バードゴーレム、ドラゴンゴーレム、タイガーゴーレムも全身から火を放ち完全なる戦闘体制に入る。


「くそ!!、何て奴らだ!!」


兵団の総指揮を取っているドワーフが叫んだ。


タートルゴーレムの先端が蛇の頭をした長い尻尾がうなり、横一文字に騎兵達を凪払う。

強力な一撃を受けた騎兵達は吹き飛ばされた。


一方バードゴーレムとドラゴンゴーレムは上空から急降下し、弓兵や歩兵を掴んで上昇し手を離して落下させる。

ドワーフ兵が上に気を取られている隙に地上からはタイガーゴーレムが疾走し攻撃をかけてきた。


「いかん・・このままでは・・」


ドワーフの総指揮官は崩れつつある状況に焦りをみせたが、打破できる方法が思いつかない。


「いかん!!、真にいかんぞ!!」


ピィィィーーーッ

空に赤い閃光が走った。


ボムッ!!


と思った瞬間、爆発音が轟きバードゴーレムが煙を吐く。

そしてそのまま地に落下してきた。


「な・・・なんだ!?」


総指揮官もドワーフ兵達も何が起こったのか分からない。

それはネイラムも同じであった。


メラメラメラ・・・


炎と煙を巻き上げながらゆっくりと落下してくるバードゴーレム。


「な・・・なんだ!?、どうしたのだ!?」


ネイラムは自分の自慢であるゴーレムが煙を吐きながら墜落してくる光景に目を見開いた。



「久し振りだな、ズシュウ!!」


総指揮官の元に来た1人のドワーフが話しかける。

話しかけられたズシュウは鳥から目を離し、そのドワーフを見た。


どこがで見た事がある顔だ・・というか・・。


「ノルモンド!?、ノルモンドじゃないか!!」


同郷のドワーフであるノルモンドの顔を思い出し、素っ頓狂な声を上げた。


「おおよ!!、それにしても大ピンチだな」


「え!?、お・・ああ、そうだ

手強いぞ!!、あいつ等は!!」


突然どこからともなく現れたノルモンドにズシュウは驚いたが、今はそれどころではない。

そんなズシュウにノルモンドは答える。


「心配するな、援軍を連れてきた」


「ん・・・援軍だと!!」


ノルモンドの言葉にズシュウは周囲を見渡す。

しかしそれらしき部隊の影は辺りにはない。


「ど・・どこにいるんだ!!、いないじゃないか!!」


「ははは、おるとも」


ズシュウのその言葉にノルモンドは指を上に向けた。


ドオォォォン!!


ゆったりと落下してきたバードゴーレムは地面に激突しバラバラに砕け散る。

そして破片類は燃え上がった。


そしてその上空。

鳥が飛んでいた辺りにもう一羽、巨大な鳥。


「な・・なんだあれは!?」


人口の鳥ではない。

本物の鳥・・・というか炎を纏った巨鳥。


「ば・・バカな・・あれは・・」

「あれは・・・まさか・・・」

火鳥フェニックスだぁーーーー!!!!」


ズシュウもドワーフ兵もネイラムも叫ぶ。


「どうだ、強力な援軍だろ?」


驚愕するズシュウの顔を見てノルモンドはニヤリとした。



しゅうううう・・・


上空に静止する炎の鳥は、鳥の姿から人の形に変わる。

変わったその姿は少女というよりはまだ幼い幼女という年齢に近い。

空に浮かぶその幼女は目を細め口を開いた。


「不死の鳥の姿を模した所で不死の鳥になれる訳ではあるまい」


破壊したバードゴーレムを一瞥し呟く。


「さてあと三体か、いや・・まだ術者もおるのぅ

やれやれ、祭典は始まったばかりじゃと言うのに骨の折れる事よ」


幼女は空から迫り来るドラゴンゴーレムを見ながらそう呟いた。






ギィン!!


亡霊騎士ゴーストナイトの剣の一撃をクレイモアで受け止めたガルボはそのまま押し返す。

よろけた亡霊騎士は後ずさるが、ガルボは剣を腹に突き刺した。


「キイィィィィーーーーーー!!」


叫び声というか、金切り声というか。

不快な音を発して亡霊騎士は消滅する。


「これで12体目、一体何体いるんだよ!!」


悪態をつくガルボに幽霊のロックスが答える。


「恐らく100体以上おりますね、残り数はまだまだおりますよ

もっともガルボ殿ならばお一人でも戦えると思われますが、中々に難しいモノがあるかもとも思われます」


「どっちだよ!!」


ガルボの声に近くにいた水精霊アクアティックエルフ達は驚いてガルボを見る。

ガルボはハッとなってアクアティックエルフを見た。


「ああ、悪い・・独り言だ」


アクアティックエルフ達に幽霊のロックスは見えていないし声も聞こえていないからだ。


ウォーターシェリーと亡霊騎士達が水界にて水精霊ウンディーネ達に危害を加え始め、ウンディーネの女王は交流のあるアクアティックエルフに助けを求めた。

ルーアクアシティの長キィー・ン・ルは亡霊討伐の部隊を編成し水界に送り込む。


同じ頃ガルボは前に知り合ったウンディーネの乙女アン・トゥ・ラの救援要請で水精霊界に赴き、四天王の一人であるウォーターシェリーのヴィリア率いる亡霊騎士達と戦う事になった。

クレイモアに再び対アンデット用の魔法を帯びさせて。



「しかし、さすがは伝説の戦士ガルボ様ですわね」


アクアティックエルフ部隊の第三討伐隊隊長であるリナ・ミスラ・ロは亡霊騎士をあっさり倒しているガルボに言った。


「いや・・・別に・・・」


目を輝かせて言うリナの言葉にガルボは頭を掻く。


リナ部隊と接触してから一緒に戦っているが、絶えずこの調子である。

ガルボの名前は15年前のアンデット戦争の英雄としてルーアクアシティにも知られているようだ。

しかもかなり話は盛られて伝わっている感じだ。


見れば他の隊員達も尊敬の眼差しでガルボを見ていた。

ちなみにリナ部隊は女性から構成されている部隊であり、男はいない。

ガルボに取っては女性ばかりというのは困る。

何せざっくばらんに話が出来る相手がいないからだ。

しかも女性隊員達から尊敬の眼差しで見られる・・そんな状況が続く中で居心地の悪さは半端ない。

「勘弁してくれ」・・と心の中で叫ぶガルボ。


しかし戦いはまた始まったばかりだ。

そう、炎の祭典は始まったばかりである。

二章・END

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