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竜怜のハーフ  作者: ナウ
一章・アンデッド戦争
17/88

【ガルボとポピーラ】

ルーアクシウムの外側で暴れていたフレッシュゴーレム達は一斉に燃え上がった。


ポピーラの南瓜頭灯火(ジャックオーランタン)の群れが戦場に拡散し、フレッシュゴーレムを標的に火を放ったのだ。


「火を放ったら即帰還!!」


ポピーラの命令通り、ジャックオーランタンは役割を終えるとその場で元いた世界に消え去った。


ダラダラ残っていて事情を知らないハーフエルフ達に倒されたりするのが面倒だからだ。


「呆気ないですね」


胸壁から眼下を見渡し幽霊が言う。


「確かに・・・俺達の戦いは何だったのかって感じだ」


隣で見ていたガルボが答える。


「生まれ持っての力の差よ?」


ポピーラが当然だと言わんばかりに言う。


「しかしこんな事して大丈夫だったのか?」


ガルボの問いにポピーラは怪訝な顔をする。


「ん?・・・な~に?」


「魔王軍を攻撃したって事をさ、魔王の怒りを買ったりするんじゃ・・・?」


依頼しておいて何だが、今更ながらガルボはポピーラの身を案じる。


「う~ん、確かに・・・困ったわ」


ポピーラは目を潤ませ、ガルボの目を見る。


「守って下さる?」


弱々しい声でガルボの手首に自分の手を触れさせる。


「え?・・いや・・あの・・」


ポピーラの言葉と仕草にガルボはあたふたする。


「は は は

ご心配には及びませんよ、ガルボ様

ポピーラ様自体が魔王みたいな存在なのでゼルギネスなど恐くも何ともありません」


幽霊もまた当然たと言わんばかりに言い放った。


ギロリ


手を引っ込め、余計な事を・・・という表情で幽霊を睨むポピーラ。


「ゼルギネス?」


「そうです、通常あなた方が「魔王」と呼んでいる者の名です」


ガルボの問いに答える幽霊。


「ゼルギネス それが魔王の名か・・」


ガルボが魔王の名前を呟いていると、ポピーラがガルボの手を取る。


「心配してくれてありがとう、ガルボ

でも大丈夫よ?、心配しないでね?」


「え・・・でも」


「巷では恐れられているけれど、私から言わせれば女好きな魔族にしか過ぎないから」


「正確には女体好きな御仁ですね、女の扱いは雑らしいので」


そうポピーラの言葉を訂正し、幽霊は手に持つパンプキンの提灯を揺らしながら笑った。


「そうなのか?」


魔王については何も知らないガルボは二人の会話に驚く。


「・・・さっき言っていたポピーラさんが魔王みたいな存在っていうのは?」


いつの間にか「さん」付けに格上げされているポピーラ。


「それについてはやはり私がご説明しましょう」


幽霊が張り切って答える。


「ポピーラ様はこう見えて最上位の魔女様なのです

ゼルギネスを凌ぐほどの魔力と魔術

炎を自在に操る最強の存在にあらせられます」


「・・・・え!?」


ガルボは話についていけずにポカンとしたが、目の前で見せられた炎の凄さの前に納得せざるを得ない。


「つまりポピーラさんはゼルギネスよりも強いって事か?」


「左様でございます」


「魔王の配下じゃないのか?」


「違いますよ」


「んんん!?」


ガルボは混乱した。


魔界の事については実は殆ど知らない。

ただ魔王と言うからには魔界全土を支配していて、魔界の生物は全て魔王に服していると思っている。

だから幽霊の話はガルボの常識として考えている範囲から外れていて理解が追いつかない。


「魔王は魔界全土を支配しているんだよな?」


「ああ・・・違いますよ」


「え!?」


「違います、魔界は広大で各階層に分かれている世界です」


「・・・どういう事だ?」


「まぁ簡単に言えば広いんですよ、とてつもなくね」


「広いんだな、それは分かった」


「ゼルギネスが完全支配している土地は魔界の40パーセントぐらいですね

後の20パーセントは間接支配に止まっています」


「・・・・・・」


ガルボに取っては驚きの話だが黙って幽霊の話に耳を傾ける。


「残りの40パーセントはゼルギネスが支配していない、もしくは支配できない土地ですね」


「支配できないって・・・何でだ?」


「魔界には時としてとてつもない力を持った者達が誕生します

彼らは支配しない代わりに支配もされない自由(フリー)の魔族達です

その者達が住まう土地を支配する事が出来ないのはお分かりですね?」


「・・・つまり、ポピーラさんがその一人に当たると?」


「ピンポーン!! ご正解です

何せ桁外れの力の持ち主達ですからね

ゼルギネスも手は出せず、その他の魔界の者達からもその地にいる者は畏怖の対象とされています」


「凄いな・・・」


「そうです、凄いのです

そもそもポピーラ様を召喚出来る者など最上位の魔術師でも難しい事で、今回は高位レベルのスペクター五人掛かりでやっとこさでしたからね

ジャックオーランタンを大量に呼び出したのは実はポピーラ様ですし」


「そうなのか?」


「そうなのです」


「敵にならなくて良かったな・・・」


「ですよ、正直ポピーラ様単独でもエルフ界を全滅させる事も可能・・・」


「ロ~ックス~」


ポピーラの笑顔と共に伸ばした声が飛ぶ。


「はい!!、申し訳ございません

一部不適切な発言がありました、お許し下さい・・・」


ポピーラに長年付き従っているロックスは今の笑顔が本気の怒りを含んでいる事を知っているため、シュンとなる。


そのポピーラと幽霊のやり取りを見ながらガルボは今までの話を合わせる。

そして目の前にいるこの女性はとてつもない存在なのではないかと思い肝が冷える感じがした。


「怖い?」


手に触れていたポピーラが不意に顔を近づけて囁いてきた。


「い・・いや・・別に・・」


顔を近づけてこられたガルボはやはりあたふたする。

そもそも女性にこれだけ間近に顔を近づけてこられたのは初めてだ。


「ほんとう?」


「あ・・・ああ」


「ねぇ・・・」


「な・・・なに?」


「私の名前を呼んで?」


「え・・・ポピーラさん・・・だよね?」


「『さん』はいらないわ」


「え・・と、ポ・・・ポピーラ」


「もう一度」


「・・・ポピーラ」


「うん・・・」


潤んだ瞳でガルボを見つめるポピーラ。


「ねぇ、ガルボ」


「な・・・なに?」


「キスして」


「え・・・・」


突然の事に頭が真っ白になるガルボ。

そもそもキスなどした事がない。


「えーと・・・」


ガルボが困っているとポピーラが笑みながら優しい声で言う。


「初めて?」


「えーー、あーー・・はい・・・」


それを聞いたポピーラはそっと両手をガルボの頬に添える

そして。


ゆっくり唇をガルボの唇にあてた。


「見~てない 見~てない」


幽霊はパンプキンの提灯で目を隠しニタニタした顔で呟く。

時間にすればもの凄く短い時間の中で二人は唇を合わせ・・・そして離す。


キスの瞬間、咄嗟に目を閉じたガルボだが離された時に再び目を開いた。

そこにはガルボを見つめるポピーラの顔があった。


「あ・・・・」


何かを言おうとしたが、ガルボは言葉が出てこない。

少し見つめあった二人だが、フィッとポピーラは視線を外しガルボに言う。


「ここでの戦いはもう終わりね」


「え・・・ああ、そうだな」


「じゃあ、私もそろそろ帰るね」


「・・・・え?」


ガルボが驚いた顔をしたのを見てポピーラは笑む。


「私はここの住人じゃないから」


「あ・・・ああ、そうだけど・・・」


「だけど?」


「もう少し居られないのかなって」


「いてほしい?」


「ん・・・ああ、まぁ・・・お礼も言いたいし」


「フレッシュゴーレムの件?」


「だな、君のお陰でルーアクシウムは救われた」


「うふふ、皆の力よ?」


「君の力も大きい」


「かな?、でももう帰らないと・・・いつまでもいられないから・・・」


「どうして?」


ガルボの問いに幽霊が答えた。


「召喚された場合は制限時間があるのです

制限時間内に帰還しないと大変な事になるのですぞ!!」


「そ・・・そうなのか・・・それは・・・」


「そう・・・だから・・・ね?」


「分かった・・・じゃあ無事で」


「ありがとう」


フォン・・と印を描き魔法陣を足元に出現させるポピーラ

魔法陣は光り輝きポピーラと幽霊の体を包み込む。


「あ・・・あのさ、また会えるかな?」


光りに包まれたポピーラがうっすらと笑む。


「また会いたい?」


「あ・・・ああ」


ポピーラの問いにガルボが頷く。


「多分ね・・・」


「そ・・・そうか・・・」


「それじゃ、また」


「ああ・・・また」


魔法陣はいっそう光り輝き二人を光りの中に取り込む。


パァァァァァーーーー!!


眩い光が周囲を照らし、その眩しさにガルボは目を閉じる。


・・・・・


光が収まりガルボはゆっくりと目を開く。

魔法陣は無くなっており、ポピーラも幽霊も居なくなっていた。


「・・・行っちまったな」


ポピーラの唇の感触が今だに残っている・・・。

僅かな出会いでしかなかったが、ガルボは心の中の何かが抜け落ちた感じがして力が抜けた 。





「な~んでもう少しいなかったんですか?」


幽霊はポピーラに言う。


「だってさ~、あのままいたら離れたくなくなるんだもん」


二人が今いる場所は魔界・・・ではなくルーアクシウムのレイス軍の陣営近くである。

前もって魔法陣を張り、ルーアクシウムを火の海にした後に迅速に帰ってこれるようにしていたのだ。

召喚による時間制限云々は幽霊が気を利かせた嘘であり、時間制限など元々ない。


「それに後片付けも終わっていないからね」


「後片付け・・・ですか?」


幽霊はポピーラの様子を窺いながら問う。


「奴らを血祭りにあげる」


「奴ら・・・ですか?」


「そうだ、奴らだ・・・」


そう言うとスゥ-とポピーラの顔から上気した顔が引く。


「ロックス、スペクター共を血祭りにあげるぞ

契約破棄云々を漏らされるとビジネスや私の沽券に関わる」


そう言いながら冷徹な笑みを浮かべるポピーラ。


「はいはい、と言ってもスペクターは霊体だから血なんか出ないんですけどね」


「・・・・・」


何も答えずポピーラはレイス陣営に向かって歩き出す。

幽霊のロックスは気まぐれな主人に呆れながらながらも、その後に付いていった。

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