【フレッシュゴーレム暴走】
ルーアクシウムの外で混戦状態になっていた魔王軍とハーフエルフ軍の戦いだったが、アクアエルフの持つ聖水を利用した攻撃と、ヒューマンエルフの魔法攻撃により徐々に魔王軍は押され始め、今は敗走し始めていた。
「戦況はどうなっている?」
ゴドウィンは弟子に訪ねる。
「は、スケルトン軍団の長ワグー様、敵の矢を頭に受け戦死なされました」
「ふん、口だけジジイが」
ゴドウィンの言葉に構わずそのまま弟子は戦況を述べる。
「ヴァンパイア軍団のマリージュ様、ゾンビ軍団のアトニーノ様それぞれ戦場を離脱されました」
「そうか・・・まぁ、オカマはともかくアトニーノが無事ならそれでいい」
「グール軍団のパピリコ様、敵に包囲され討ち死になされました」
「奴らはどうでもいいわ、死体食いの気持ち悪りぃ連中だったし」
「ダグバルド殿の腹心五人衆はルーアクシウムを火の海にすべく全魔力を使い南瓜頭灯火を大量に召喚
目下カボチャ共はルーアクシウムに向けて進撃中です」
「て事はいよいよ最後だな、ルーアクシウムを焼き払うか
これでエルフ軍も拠点として使えん・・か
まぁ、何だ・・さぁて、おれ達も撤退するか・・・」
その言葉に弟子たちの顔から安堵の色が浮かぶ。
「・・・な、訳ねーだろ!!」
ゴドウィンは立ち上がり弟子達に命じる。
「お前らは逃げろ、俺に付き合う必要はねぇ」
「マ・・・マスターはどうされるのですか?」
弟子の一人がゴドウィンに聞いた。
「俺か・・・くそったれの混血野郎どもに舐められて、このままおめおめと引き下がってられっか
奴らはもう勝った気で油断してやがるだろうから、そこを叩く」
「し・・・しかしフレッシュゴーレムも半数が機能停止しています、これ以上は・・・」
弟子の言葉にゴドウィンは邪悪な笑みを浮かべた。
「・・・狂戦士モードを発動させるぜ」
「!!」
その言葉に弟子たちは青ざめた。
『クレイジーモード』
通常、核の力は制限している状態だがその制限を取っ払い力を最大限にフル稼働させるモードである。
しかしフル稼働させた場合は核の寿命を著しく消耗させるため、すぐに壊れてしまうデメリットがある。
何より制御出来ないため、同じ核を埋め込まれた者以外の識別が出来なくなり暴走し始め敵味方の区別なく殺戮しまくるのだ。
「ここまで来たら出し惜しみしても仕方ないだろ
味方も撤退しているし丁度いい、アトニーノも撤退したしな」
アトニーノのスタイルを思い出し、にやけるゴドウィン。
そんなゴドウィンは「あれ?」・・・と思う
「おかしいな?、俺は10代後半のガキには興味なかった筈なんだが・・・」
確かにアトニーノの事を考える事はあったが、ここまで気持ちが高まるの初めてだ。
「ん~? なんだろうな?」
首を捻るゴドウィンだったが、アトニーノの顔や肢体や胸や尻や匂い・・・そして声や動作や髪の毛のサラサラな感じ。
それら一つ一つを思い出すだけでニヤけてきてしまう。
接する時間は余り無かったし、会話も大してしてはいないのだが・・・。
「まいったな」
ゴドウィンはそんな自分自身に困惑し頭を掻いた。
ドゴオォォォォォォン!!
巨大な棍棒が人間エルフを襲う。
横から棍棒で叩かれたヒューマンエルフは近くにいた味方共々吹っ飛ばされる。
「くそ!!、どうなっている!!」
ヒューマンエルフを率いるゼナンドルはフレッシュゴーレムの突然の豹変ぶりに驚いた。
先ほどまでは規則的な動きで次にどう動くのかある程度読めたが、今はまるで荒れ狂う暴風雨である。
さっきまでのフレッシュゴーレムは魔法の攻撃にたじろいでいたり、ある程度攻撃を受けると機能停止したが今は関係なく突進してきて棍棒を振り回し暴れ回る。
正直手がつけられない。
最初の犠牲は動きを止めたフレッシュゴーレムを観察する為に近寄った百戦錬磨のクテイシだった。
再び起動したフレッシュゴーレムは立ち上がり、頭上から振り下ろされた棍棒の一撃を受けて即死した。
「騎魔隊前に!!」
魔法の杖を持ち騎上から魔法で戦う魔術隊。
先程までは彼らのつかず離れずの戦いでフレッシュゴーレム達は沈黙したが、今は違った。
炎が当たり肉が焦げても構わずに突進してくるフレッシュゴーレム達に騎魔隊は蹴散らされる。
「騎弓隊、攻撃だ!!」
ゼナンドルは剣を引き抜く。
騎弓隊から一斉に矢が放たれる。
しかし矢はフレッシュゴーレム達の肉体に刺さるが余り効果はない。
「騎兵!!、隊列を整えろ!!
狙いは奴らの足だ、足を斬って動きを止めるぞ!!」
「おおーーー-----!!」
騎兵隊は鼓舞の叫び声を上げ一斉に剣を引き抜いた。
「かかれーーーー!!」
馬をフレッシュゴーレム目掛けて突進させる。
ブオォォォォォォン
棍棒を横に振るフレッシュゴーレムの攻撃を避ける騎兵。
だが、避けた先に別のフレッシュゴーレムの棍棒が繰り出される。
ドグシャァァァァッッッ!!
馬もろとも吹き飛ばされる騎兵達。
あちこちから騎兵の叫び声や馬の鳴き声が聞こえる。
「くそ!!、連携攻撃か!」
ゼナンドルは棍棒の攻撃を避けながらも剣を振り一体のフレッシュゴーレムの片足を斬り飛ばす。
ドズウゥゥゥゥーーンン!!
「ギイェェェェ---!!!!」
さすがにたまらず大きな声で叫ぶフレッシュゴーレム。
「痛みはやはりあるのか、死体の癖に・・・ん?」
ドガァァァ!!!
一瞬の油断から棍棒の一撃を真正面に受けたゼナンドルは馬と一緒に吹き飛んだ。
そして吹き飛んだゼナンドルはそのまま地面に激突し気を失う。
スケルトン軍団と戦っていた水精霊エルフ達だったが、南瓜頭灯火がルーアクシウムに向かって進んでいる事を戦いの最中目撃する。
「まさか、ルーアクシウムに火を放つつもりか?」
水の守手たる水精霊エルフを率いるリーダー、キィー・ン・ルは魔王軍の企みに目を伏せる。
「弓兵隊、ジャックオーランタンを狙え」
静かに命令を下すも、アクアティックエルフとスケルトンの戦いに割って入ってきたフレッシュゴーレムによって遮られた。
棍棒を振り回しアクアティックの剣兵はおろかスケルトンも殴り倒していくフレッシュゴーレムにキィーは何が何だか分からないという表情を見せたが、弓兵に命ずる。
「ランタンは後だ、あれらを先に倒せ」
しかし・・とキィーは考える。
フレッシュゴーレムは核を破壊しなければ完全に倒したとは言えない。
しかし、恐らく核は何か特殊な素材で防御され剣や弓は核に届く前に遮られ破壊は困難だろう。
倒す・・・というより機能を完全停止させるなら術者を探し出して倒すしかない。
「さて?、その術者はどこにいるのだろう・・か?」
指を顎に当て、キィーはフレッシュゴーレムを操っている主がどこにいるのか考えた。
気を失っていたゼナンドルは意識が戻ってきた。
「しまった!!」
まだ朦朧とする頭とふらつく体を起こして周囲を見渡す。
見るとヒューマンエルフは健在で、騎兵・騎弓・騎魔隊がフレッシュゴーレムと戦っている最中だ。
どうやら数分ぐらいしか気は失っていなかった感じである。
見れば自分の着ている鎧はヘコんでいるものの、命に別状はない。
「頑丈な鎧だな、流石はドワーフ製だ・・・」
安堵したのも束の間、一体のフレッシュゴーレムがゼナンドル目掛けて突進してきた。
「くそ!!」
剣を持とうとしたが剣は周りにない。
どうやら飛ばされた時に別の方向に飛んでいったようだ。
「・・・・死ぬ」
そうゼナンドルが覚悟した瞬間。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン!!
数十本の矢がフレッシュゴーレムの頭上から降り注ぐ。
たまらず倒れ込むフレッシュゴーレム。
矢が放たれた方角を見てゼナンドルは思わず口元を緩ます。
その目の先には空中に浮遊するフェアリーエルフ達の姿があった。
一方、フレッシュゴーレムは一体だけだがルーアクシウムにも侵入してきていた。
エルフの鎧を着ていたバーナードだったが棍棒の一撃を受け鎧は砕け、飛ばされた先の壁に叩きつけられ全身の骨が砕けて絶命した。
しかしその鎧すら着ていないガルボだが逃げる訳にはいかない。
「かかってきやがれデカブツ!!」
クレイモアを構えフレッシュゴーレムに挑むも体格差が有りすぎる敵を前に流石に撃って出られない。
棍棒を避けながらも何とか懐に飛び込むチャンスを窺う。
弓兵の矢がフレッシュゴーレムを貫く。
しかし、ビクともしない。
「くそ!!、僅か・・・ホンの僅かな一瞬の隙があれば!!」
「ふ~ん、隙を作って欲しいの?、お兄さん」
ガルボの呟きに間の抜けた声で答える少年がいた。
「・・・・え!?」
子供がこんな所にいる事に驚くガルボ。
「何でこんな所に子供が!?」
「えっと・・・僕は小人エルフだよ」
「え?・・・あ・・・ああ、そうか」
一瞬何の事か頭が働かなかったガルボだが、少し考えて適当に納得し答えておく。
「じゃあさ、僕が囮になるんでお兄さんはその凄そうな剣でやっつけちゃってよね!」
リトルエルフは腰に巻いて掛けていた鞭を手に取りビシッ!!と張って鳴らす。
「え!?、あ・・・ああ」
呆気に取られているガルボを尻目にリトルエルフは軽い足取りでフレッシュゴーレムに近づいていく。
「じゃあ、いっくよ~」
トルンの鞭が暴れているフレッシュゴーレムに踊りかかった。




