第47話 換金所と王将の餃子定食
土曜日。昼前に、駅前の換金所へ寄った。
次の私的転移の分と少しを残して、あとは日本円に換金する。戸倉さんのようにゴールドで貯めることも検討したけれど、考えてもメリットがわからないので変えてしまおう。
「こんにちは〜。これ、お願いします」
「はい、こんにちは」
トレーに金貨を出すと、おじさんはいつものように数え始めた。
「……そういえば、昨日、スキミーの運営に行ったんです」
「ああ、面談?そうか、昇格したのか、おめでとう」
「あ、ありがとうございます。久世さんっていう方でした」
「よく喋っただろ、あいつ」
あいつ。ずいぶん親しそうな呼び方だ。
「知ってるんですね」
「そりゃ、仕事で付き合いがあるからね」
そうか。ここで往復券まで売っているのだから、運営と無関係なわけがない。
「結構長い付き合いなんですか?」
「長いような、短いような。……はい、昇格祝い」
おじさんが、少し笑いながら日本円を渡してくれた。昇格祝いとして少し多めに入っている。こういうの、ここの一存で増やしていいのだろうか。やはりまだまだ謎がいっぱいある。
「ありがとうございました。また来ます」
「はい、どうも」
いつもと同じ挨拶をして店を後にした。そういえば、三浦さんはちゃんと換金できただろうか。
* * *
せっかく外へ出たので、お昼を食べて帰ることにした。ガッツリ食べたい気分だったので、一人で王将に入る。たまに持ち帰りの餃子を買っているけど、店で食べるとなるとやはりテンションが上がる。悩みに悩んで、餃子定食とジャストサイズのエビチリを頼んだ。
店に飛び交うオーダーの声を聞いて待っていると、スマホに高野さんの名前が表示される。
『お久しぶり〜。無事に産まれました!女の子で〜す』
産まれたんだ!続いて、写真が一枚届く。白い布にくるまれた赤ちゃんを、少し髪が乱れた高野さんが抱っこしている。
「……わぁ」
思わず声が出た。写真を拡大してみる。生まれたての赤ちゃんの布から出た小さな手には、ちゃんと爪があった。ちっちゃい、かわいい。二十代のころは赤ちゃんの写真を見てもこんな尊い気持ちにはならなかったのに、お姉ちゃんの子供が生まれて自分が三十を超えてからは、ただただ、可愛い。
『おめでとうございます!! かわいい! 本当にお疲れ様でした』
送ってから、写真をもう一度見る。年末に花束を渡したときは、高野さんのお腹の中にいた子だ。あのとき一緒に会社を出たと思うと、なんだか不思議な感じがする。
『ありがとう! ひとまずご報告。一ヶ月後ぐらいには実家からそっちのほうに帰るつもりだから、そしたら会いにきて〜』
『絶対に行きます!』
気持ちが昂ったところで餃子定食が運ばれてきた。スマホをおいてアツアツの餃子を一口食べて、ご飯も食べる。一口食べたらさらにお腹がすいてきた。このセットのスープが、好きなんだよね。
* * *
デパートの本屋によるついでに、子供服コーナーを覗いてみることにした。
服のサイズが、六十センチ、七十センチ……小さい。靴下なんて、一度洗濯したらどこかに消えてしまいそうだ。カラカラと音がなるおもちゃを手にとったところで、久世さんのことを思い出した。赤ちゃんとして生まれ変わって、記憶はそのまま……。私には想像もできない戸惑いがあったんだろうな。
結局、何を買うかは決められないまま、店を後にした。




