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一難去ってまた一難。超巨大猿の襲来

-2-

「んっ…」

僕は集落の地面に倒れていた。胸が圧迫されるような重さ。

僕の上に折り重なるようにしてニックがうつぶせに倒れている。

「ニック、しっかりして…!」

その肉厚な肩を掴む。

不意に、地面が揺れるのを感じた。

ズシン、ズシン。

「この音は…」

周囲を見渡す。

少し白んだ水平線が、集落の血だまりと倒れたままの将軍とマヌエラを照らす。

更なる地響き。

山を仰ぎ見る。

「…っ!」

僕は悲鳴を飲み込んだ。

山の中を歩く巨大な猿の頭が見えたから。

その目が僕らを捉える。

ズシン、ズシン。

木に体をこすりつけながら、ゆっくりと集落へ向かって下りてくる。

「おい、この集落は安全なんじゃないのか!?」

どうしたらいい。

再び周囲を見渡す。

こんな掘っ立て小屋の強度はたかが知れているが、遮蔽物になるのはこれしかない。

マヌエラと将軍を安全な場所に連れていく余力はない。

せめてニックだけでも!

「逃げるよ!」

僕はニックを抱えて起き上がろうとした。

いや、重いな。

全然持ち上がらない。

まさかニックの筋肉を憎む日が来るだなんて。見た目は引き締まっているのにとんでもない高密度・高重量。どうなってるんだよ。

僕はニックの下から這い出し、何とか体勢を変えて再チャレンジする。

「離せ」

急にニックに振り払われて僕は尻もちをついた。

「えっ…!?」

ニックは僕には目をくれず、魔法陣の方に向かってすたすたと歩いていく。

なんでわざわざひらけた見通しのいい方に行っちゃうんだ!

「ニック!?えっ…そ、そっちは!?」

僕も慌てて追いかけた。

地鳴りの中、ニックはマヌエラの体から投擲槍を引き抜く。

「えっ…!?」

足がすくむ。

嘘だろ。

まさかマールス?

絶望で頭がクラクラしてくる。

アレでダメならニックを取り返すすべはもう…。

ニックは槍を両手で握って深呼吸した。

その灰青色の瞳が一点、巨大猿を睨みつける。

ニックは槍を片手で構え直すと、標的に向かって駆けだした。

僕はその動きに目を奪われる。

加速と共に、魔力の流れが乗ってくる。

大きく振りかぶる。

全身の筋力、魔力、集中力がその一撃に集まる。

「うらああああ!」

気迫の雄たけびと共に放たれた槍。

勢いのあまり地面に倒れこむニック。

ニックの一投は迷いのない一文字を描く。唸りを上げて飛来した穂先は大きく見開かれた猿の目玉に食い込み、夜明けの空へと突き抜けていった。

「グギャッ!」

頭蓋骨ごと脳みそを貫かれた巨大猿は断末魔のような短い悲鳴を上げた。

ズシン。

そしてその巨体が山へと沈む。

ひときわ大きな地響きの後、悪夢のような黒い猿は二度と立ち上がることはなかった。

「す、すご…」

僕の呟きに、ニックが大きく肩で息をしながら振り向き、小さくガッツポーズを見せた。

「ニ、ニックぅ…!」

我知らず涙が溢れる。

何の涙かはわからない。

感極まるっていうのはこういうのを言うんだろうな。

ニックがギョッとしながら近づいてくる。

「そういうのは後にしろよ」

そう言って僕の頭を両手で挟み、将軍の方に向ける。

「俺はマヌエラの止血するから、お前はシザリアを何とかしろ。死なせたらマジで許さん」

「わ、わかった!」

危ない。まだ任務は終わっていなかった。

僕は慌てて将軍に駆け寄った。

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