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1945年に飛ばされた私、iPhoneだけ2025年と繋がってるんだけど? 〜終戦回避は無理ゲーでも、戦後復興をRTAして100歳まで君臨する〜  作者: 栗昆布
第3章 東京デフラグ ―更地をコンクリジャングルへ!編―

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パシャパシャ

銀座四丁目の交差点。朝日は残酷なほど明るく、すべてを失った焼け野原を照らし出していた。

 竹本の視線は、サオリが握りしめる板の厚みと、チタンのエッジが放つ反射光にのみ、病的なまでの鋭さで注がれている。


「ちょっと……! 近寄らないで。触らせないし、解体なんて絶対ダメだから!」


 サオリは、竹本から発せられる静かな圧迫感にたまらず一歩後退りした。だが、煤にまみれた手元が狂う。指先から滑り落ちた「未来」が、鈍い音を立てて灰の中に転がった。

「あっ……!」

 サオリが悲鳴を上げるより早く、竹本が膝を突いた。泥にまみれたその板を、奪い取るように両手で拾い上げる。その際、焦った竹本の指が、本体側面のボタンを力の限り握り込んでしまった。


 ――カチカチッ。


 板の側面で、精密なスイッチが二度、三度と押し込まれる。その瞬間、漆黒だった硝子の表面がパッと白光し、鮮明な「現実」を映し出した。


「……な、なんだなんだなんだ、これは」


 竹本の目が、歪んだメガネの奥で異様なほど大きく見開かれる。

 画面の中に、今、自分が立っている焼け野原の景色が、現実よりも鮮明な色彩で再現されていた。それだけではない。彼がなおも側面を強く握りしめ続けていたせいで、iPhoneが「連写」の命令を受け取った。


 ――パシャパシャパシャパシャパシャ!


静まり返った銀座に、乾いた、それでいて異常に速い連続音が鳴り響いた。

「うわああっ!? なんだ、今の音は!」

「勝手に触らないで!」

 工藤が飛び退き、ドスを構える。サオリも悲鳴をあげるように叫んだ。

 だが、一番動揺したのは竹本だ。彼の持つ画面の中で、**「赤い四角い枠」**が、背後にいる工藤の顔や、サオリの顔を次々と捕捉し、生き物のようにパチパチと飛び跳ねている。

「な、なんだこの赤いマークは……!? 俺たちの顔を『狙っている』のか? 」


……パシャパシャパシャパシャ!!!


「なんだ、なにがおこっている!なにかを記録しているのか!?」

 竹本は、指を離すことも忘れ、画面の中で自分の顔を追いかけてくる赤い枠に戦慄した。彼にはそれが、人間の魂を高速で抜き取っていく未知の兵器か、あるいは悪魔の測量儀に見えた。


「距離を測るどころではない……像を解析し、個体を識別し、一分の一秒の間に数百の現実を『定着』させているのか……! 一体、内部にどれほどの計算手を詰め込めば、この速度に追いつけるんだ……!」


 竹本は、ようやくガクガクと震える指を離した。連写が止まり、静寂が戻る。彼はズレたメガネを押し戻すと、画面の中で唯一、赤い枠がどうしても現れず、ピントが無限遠を彷徨い続けている「漆黒の隙間」を指差した。


「……工藤君、そこだ。この『眼』が人を拒み、焦点を合わせられずに戸惑っている場所がある。……光を投げても反射が返ってこない、物理的な実体がない深淵。あいつら占有屋が『書類』で縛っている地上の皮膜、その下に広がる『空白』が口を開けているぞ」

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