70話 バイト3日目、作戦は実行されるもの
あー、そろそろまともに変身して戦ってほしい(作者)
あー、それ無理 戦いたいなんてどこぞの戦闘狂よ?(主人公)
実家から白菜送ってきたから鍋だぜー!(どこかのマックスさん)
人の喧騒というのは、ざわ、では表現できないものだということだ。
ざわざわ、って感じではないのだ。実際。
がやひそやいえマジで半端ない、とか、そんな言葉が聞こえてしまうのが現状なのだ。
だから頼む。学生たちよ。
仕事をしような? 仕事を。
オレとヨシノさんを見て、言いたいことはそりゃああるだろう。
オレも言いたい。山ほど言いたい。事務所の山積みの処理済書類のように言いたい。
未処理の書類? 急ぎではないのでスルー。
という思いもあるが、そんなものよりも非常によろしくないのが、隣、というかそこから2歩下がって付き従うクール系美女巫女。
中身は多分肉食ですよこの人というか、実際は神。
演技とはいえ、いい仲をアピールとは一体どうしてこうなった?
いや、変にアピールしようものなら、食われる。この美女巫女に。
言葉にも出すことは出来ないが。
ほら、美女巫女、って言いにくくないか? オレは言いにくい。
東京特許許可局みたいに。
と、くだらないことも考えているのは、落ち着いているからだ。
ユナイトに変身して戦うよりは、まだマシだからな。
何たって、これはフィクションですから! ええ、虚構ですからね!
ちなみに虚構のはずなのに、こっそり狙われているのを知っているオレのこの心境はノンフィクションですけどね!
「今日は学生さんたちがお手伝いでいらっしゃるのですね、ヒロユキさん」
「ああ、ヨシノさん、って隣で話してくださいよ」
「いえ、ヤマトの女性なれば、お慕いする殿方のほんの少し後ろを歩くのが当然なので」
大和撫子か!? いや、事実、大和撫子なのか。ヤマトの女性だからな。
って、うまいことを思ったつもりもないが。
学生たちのテント設営やら掃除やらを遠目に、本殿に足を進める。
計画書では3つのポイントがある。
・本殿へ参る
・イブキの両親と会う
・鳥居前までお見送り
計画書は捨てろ、とは言ったが、そのポイントは外すことはしない。
健全な計画書ではその流れだからだ。
ヨシノさんが持っていた不健全な計画書は、見ないですすめていきましょう。
不健全なところに片付けているのですから取り出すことのないように。
お願いします。
「まあ、及第点と言ったところでしょうか」
本殿に着き、さっと見渡して一言。学生たちもここにはいない。
外の学生たちの騒がしさとは無縁の静寂が、そこにはあった。
だが、周囲を確認するヨシノさんの鋭い眼光が、オレには怖い。
まるで、小姑のようだ。とは言ってはいけない。そんなことは言えない。思ってるだけだ。
「綺麗にしているのは分かるのですが、どうしてもチハヤ様がいらっしゃる雰囲気があまりにも希薄、というかむしろないので」
「あー、とそれは……」
それは何というかチハヤが悪い。
ここにいたらネトゲできないからな。
多分ここに、冷暖房完備で、ネット環境を完璧にして、飲食物も置いておけば雰囲気が現れるようになると思うが。
おや、まるでニート? もしくは引きこもり? とは言ってはいけない。
言ったらチハヤの神としての尊厳が直滑降。
いや、ヤマトのニートや引きこもりに崇められるかもしれない。ニート神もしくは引きこもり神。
ありがたみはないな! 全く!
「では、この社の管理人に会う際に確認しましょうか」
「ま、まあチハヤにも私情というかプライベートとかあるから部下に詮索されるのはよしとしないんじゃないかなあ? と思ったりするわけなので、そういう確認は本人にしような? いえ、しましょうそうしてください是非に」
このセリフで場所移動。一息に一気呵成。
チハヤをかばうつもりはなかったのだが、ここでそんなくだらない神々の争いを起こさせるわけには行かない。
学生たちの身にもなれ。
崇めている神々がそんな理由で争うとかだったら、どうなると思う。
いやだろ?
というわけで、次のステップへゴー。
「しかし日が照るな」
ピーカンとはまさにこのこと。雲ひとつない。
ふと頭上を見ると、太陽と空の青しかない。
オレの気持ちは暗雲がかなりあるのだが、何でこうなんだろうか?
ふう。
「ため息は幸せが逃げると申します」
赤がオレの視界を遮る。
ヨシノさんの日傘だ。緋色の傘の日傘。……おもしろくないが、これが事実。
「どうなされたのですか?」
隣に来たヨシノさんに、って寄り添ってきたよこの人。
原因のひとつはあんただ! そう、犯人はあんただ!
って言いませんよ? 言ったらそれアウトな。
「いや、思えば遠くへ来たもんだなあ、と」
改めて空を見て、目を細める。
タバコでもあれば一服しそうだが、オレは吸えない。
それに、敷地内は禁煙です。守ろう、喫煙マナー。
「え? 出身はこの辺りではないのですか?」
「いや、なんと言えばいいのか。極めて近く果てしなく遠い世界というか、世界と世界の間からというか、地球という車窓から身を乗り出してたらぶっ飛ばされたというか」
言っててなんだが、どこぞの鋼の救世主の物語にそんなキャッチフレーズがあった気が。
色んなロボが出てくる奴。あれな。
あるいはオーラでロードが出てきちゃうあれ。ハイパーになれちゃうあれ。
確か最新作は鈴木君が出てくるあれ。
ヨシノさんは首をかしげているが、オレはそういう世界から来たということで納得していただいた。
さ、それよりも次だ次。
70話になりましたが、ヒロユキさんは戦いが苦手なようです。
多分どこぞの主人公みたいにやさぐれてしまえば戦ってくれると思うのですが。
まあ、おっさんなので温かい目で見てやってくださいw




