69話 バイト3日目、アドリブでいこうか
「本来ならばチハヤ様が伺う予定でしたが、計画に万が一、ということを考慮され、私と一時的ではありますが、業務を交替いたしました……と、伺っていませんでしたか?」
「一言も伺っておりませんが。で、そのヨシノさんの上司はどちらへ行きやがりましたか?」
オレは怒ってはないぞ? ほら、ですます口調だろ? 丁寧語になってるだろ?
ほら、かの悪の帝王も戦闘力の説明ではこう言っている。
私の戦闘力は53万です、っと。
……すみません。さすがにちょっとは怒ってます。10段階中の3くらい。
だから、ヨシノさん。ちょっと怖い顔してましたでしょうか?
小さく「ひっ!」とかビビらせてすみません。
「え、と。……失礼いたしました。チハヤ様はしんかい、『神の階段』と書いて神階ですが、そちらにて私の業務を行っております。と言っても、部下の指導のみですが」
おや? ヨシノさん。まさか偉い人、いや神ですか?
「私は未熟なれど、位階、つまり神格といわれる部分についてはチハヤ様、ヤクサ様の次に当たります。ヤマトでは確か……学業、商業の神として奉られております」
疑問が顔に出てたか?
それにしても、だ。
はい、偉い神キター。っておかしくね? 神の上下関係、つまり部下と上司の関係のことね。
チハヤは確か最高神の一柱で、美とか。生活とか言葉とかを無視すればいいのかもしれないが。
そして、ヤクサは美の神だったよな? ロリ巨乳なのに。
なぜにそこから学業とか商業の神?
教えて偉い……、これはマックスでは対応できない気がするので、頭のいい人でいいや。
頭のいいヤマトの人! 教えて!
……いいだろう! つまり、それは白衣! 白衣さえあればっ!
だめだ。その幻聴は頭のいい人ではなく頭の痛い人、だ。
オレの幻聴は今のところ危険すぎるな。この幻聴はぶち殺しでお願いしたい。
どこかにいないものかそんな……、いや、なんかそいつハーレム野郎な気がする。会わなくていいや。
とりあえず、現実を見よう。現実を。
ここに、学問と商業の神様という名の美人秘書巫女がいるという事実を!
ならば、やることは1つ!
「すみません。ちょっと拝ませてもらっていいですか?」
「はい?」
どうか、色々勉強が出来て、雇われ料理人としての仕事がきっちり今後もこなせますように!
ご利益ありますように。
事務所から、外へ出る。うん、いい天気だ。
祭りのときもこの天気が続くと、天気予報が言っていた。
ユーナ予報も同様だったので、天候面に不安はない。
「後は、計画通りに外へ出て、イブキさんの前で仲睦まじくおこなえばよい、というわけですね」
「ああ、って、距離が近くないか? というかさりげなく今、手つなごうとしたよね?」
「……仲睦まじく、とはそれくらいは当然では?」
む。むむ。むむむむむ。
ちょっと待て。ちょっとだ。ちょっと。ちょっとちょっと。じゃなくて、待て。
そこまでいくと、仲が進展しすぎてておかしくないか?
仲睦まじく、だから、会話が弾むとかじゃないか?
どうなんだ? ヤマトでは普通なのか? いや、一般的に普通といわれるものなのか?
教えて、って今日そればっかだな。
やめよう。
世の中、聞いて教えてくれる、ということに甘えていては自分の成長につながらない。
というか、聞けば何でも教えてくれるという世の中があると思うな。
そう、グーグ○博士に聞いても分からないことはたくさんあるんだ!
「とりあえずスキンシップは節度ありまくりの方向でお願いしたい。つまりあんまり近づきすぎてもどうかと思う。あくまで人から見て『オレの知り合いもしくは友人』となるくらいでいい」
「ふむ……。ではこの計画書からは多少外れてしまうのですが大丈夫ですか? ここに『肉食系女子であるの
で隙あらば、全ての神々に感謝して本気で頂きますというかゲットだぜ!』と」
……なるほどな。よし、バ神どもよ。デザートとか没収な。
あと、ユーナはユナイトのシステム関連を強制的に見直し、性能向上をしてもらう。強制的に。
遊びなんぞ入れさせんぞ。徹底的圧倒的絶望的にやってもらうからな。
と、そっちの処置は追々煮詰めるとして。
「その計画書、破棄しろ」
まずは、目の前の問題を駆逐するのみ。
「はあ。いえ、……いいのでしょうか? チハヤ様から、この計画書に沿って、行動せよとのお達しをいただいたのですが」
「燃やせ消せ証拠隠滅むしろこの世からどころかどの世からもデリートを」
時によっては上司にすら背かなければならないのだ。
世界の平和のために。そう、平和のために!
具体的にはオレの世界というか心理的な平和のために。
いいでしょうか? というかいいですね? はい、破ってください。
あ、懐に入れるんですね?
それだと破るとか出来ませんし、オレ、手出しできませんけど。
まあ、いいですけど。
「私の好みなんですけどね……って、おっと聞かれたでしょうか……、大丈夫みたいですね」
聞こえなかったぞ聞こえてないぞ聞いてないからな? いいな? オレ。
今の小声には反応するな。
とりあえず、これからミッション、スタートだ!




