58話 バイト2日目、俗な神様との話し方
ようやく試験が終わった……。
結論から言うと、失敗しましたけどね!
「では、すめら、いえ、ひろ、でもなく。今回は黒川先生がみえますので、今までの講義の総おさらいしましょう!」
フンス、と鼻息が荒いモモちゃん先生もとい倉敷先生が、黒板にチョークを走らせる。
一番上から一番下まで一気に書き殴って。待て、あまりのスピードの速さで書き終わったが。
物理法則を無視したぞ! どれだけ頑張っても越えられない壁。
それは、モモの身長と教壇の高さを足したところで、黒板の上には届かない!
まさか空中浮遊、ホバリングというやつか?
それか『ユナイト』みたく空間固定を?
ま、そんなわけがないだろうな。強いてあげればシークレットブーツとか?
正解は。
踏み台。
しかも滑車ついてる。
あ、でも壁固定はしてあるな。壁にレールが打ち付けてあるから。
そして、折りたたみ式か。それなら下まで書くときも邪魔にならずにすむ、と。
……先生ってのも大変だな。
「というわけで、『古代ヤマト語』、神職では『神聖語』と呼称しますが、なぜ神職に限り『神聖語』と呼称するか? 矢那さん」
「はい! ヤマトの最古書の一つ『呱々伝来記』にて神様と神聖語にて対話を図った、という内容の記述があり、そこから神職においては『神聖語』と呼称することになりました」
凄いな巫女。瞬時に応えたよ。
日本人なら必ずと言っても出てくる「あー」とか「えー」とかないぞ! ヤマトの巫女は化け物か?
あ、そうなるとイブキもか? いや、バイト中には結構言ってたような気がする。
よし、多分矢那さんがハイレベルなだけだ!
「では、黒川先生! 質問をどうぞ」
このモモ野郎! なんでオレが質問しないといけないんだっ!
……野郎じゃない? ええい! そういうツッコミは後ほど受け入れて一般廃棄物します。
って、そんなオレをよそににっこり笑いやがって! その笑顔に「お願いします」って書いてあるのはもろバレだ!
「いや、特、には……な、いや」
モモを一睨みしてから、矢那さんと呼ばれた巫女学生に顔を向けると。
何でも答えますので! みたいな気迫というか……オーラというか力というか。
どこぞの聖戦士? と突っ込みたくなるような力を感じるが気のせいだろう。
ここで質問しないと、どうやらいけないらしい。
「じゃ、じゃあ、えーと。具体的にどのような記述があったか聞かせてくれないかな?」
「はい! 『お酒は濁酒じゃなくて清酒が好みだ』というミツルギハエノミコトの」
「全然神聖じゃないよね! どう考えても貢物への注文じゃねーか! 俗すぎる!」
矢那さんの回答の早さにもびっくりだけど、オレの突っ込みも今回は早かった。
そのミツルギとかなんとかも、そんな言葉残されるんじゃないって!
歴史に残るだろうが! センター試験とかに出たらやだよ! どこぞの谷のキャラクターの話とかじゃあるまいし! あ、歴史に残ってるからもう駄目か。
「いえ、さらにその後『お酒のつまみは塩だけだと足りない』と」
「完璧に貢物への文句だけじゃねーか! 自分で肉とか魚とか獲れって!」
「……。さすがですね。古代ヤマト人はその指摘を行なったことで、供物の取り方を伝授されたのがミツルギハエノミコト様とされております」
なんで矢那さんに「凄いよこの人」みたいな顔されて、答えられているのかが不思議。
誰でも突っ込むわそれくらい! もし突っ込まないんだったらどれだけ思慮深いんだ古代ヤマト人、ってことになるぞ! どう指摘したかは気にはなるけどね!
「はい、矢那さんお見事! 黒川先生も質問ありがとうございます、でーすーがー! まだ確認したいことがあるんじゃないでしょうか?」
何? そのもっともっと! の表情。手招きジェスチャーもやめい。
「まあ、なあ……。挙げるとしたらどうやって神様と直接会話できたのかってところか? まさかチハヤ……、ええと、ソハチハヤノミコトか? みたいに顕現したわけでもあるまいし。もしそうだとしたら、どこにでも神が姿を現せる世の中になるんだが」
チハヤもそういえば、顕現できる稀有な神となっているからな。
そう、あの今もネトゲ廃神になっているあれ。
顕現しているからこそネトゲ、いやネトゲがあるから顕現している、というか。
そう考えたら、ありがたみが薄っぺらいというかゼロキログラム?
「うっほ! 何で一足飛びにそこに到達しちゃいますかね! やっぱスメラギさ」
「いや素朴に出た疑問だからな普通に! しかも驚き方が女性らしくないというか……いや、ある意味女性らしいんだが」
小説とか漫画のいわゆる同性愛的なやつのキャラクターのセリフぽかったのでつい。
もう少し女性らしいというか教授らしい驚き方ってのが欲しかったよ。
「いえいえ、すみませんこちらこそ。ちょっと高めのテンションが予想を超えた回答にてボルテージストライクって感じにクリティカルヒットしたので、ヒートドライブかましましたのでつい」
「……ああ、ハイパーハイテンションって感じか」
「それ! そうそれ!」
瞬時に接近するモモちゃん先生。というかひっつくな!
もう、オレに、揺れる何かの圧倒的圧力があっても効かん!
今なら悟りでも聖者にでもなれる、そんな気がする。
そういう気持ちを持って、恐る恐るちょっとだけイブキのほうを見る。
じとーっ。
半目で見られてる。
やばい、あれはやばいぞ。チハヤを本格的に怒る目つきに似ている!
我、危険! 直ちに方向修正せよ!
「話の続きをお願いしますね倉敷先生」
瞬時に離れる。
「ちっ。……。そこで、古代ヤマト人は、神と対話するために行なったのが『神卸し』です」
ほう。多分、神卸しというのは神憑き、言い換えればシャーマニズムなのかな?
一説では邪馬台国の卑弥呼がそれに該当するだろうが。
漫画でいうなら憑依して合体するとか、ものに憑依させて戦うあのふんばりバトルかな。
それにしてもさっき。
まだ圧力が足りませんので次は抱きつきます、ええ完璧です……って小声。
オレの耳はチハヤのこっそりつまみ食いの音でさえも逃さないレベルだから、それくらいは聞き取るが。
黒いし怖いよ倉敷モモ! 恐るべし!
ご意見ご感想、ご指摘お待ちしております。
一週間以上更新なく申し訳ありませんでした。
・牡蠣食べ放題でたぶんヒット
・試験の勉強と課題作成で前日にデータが吹っ飛ぶ
・第三の仕事(小説ではなく、今やっている現業でもない)が一気にオファーが来る
って感じで、どうにかやってみましたが、なんとか今日から復帰。
次にようやく新キャラ登場! モモちゃん先生がすごいのはここからだ!




