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異世界で、変身ヒーローやりました。  作者: ヤガミタケト
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52話 バイト1日目、朝に滝を見た

2月ももう終わりですね。

……ああ、仕事さえなければもっと書けるのに! ああ悔しいったらありゃしない!

オレの朝は早い。

朝5時。

太陽よりも少し速めに起きて、真っ先にやること。


というかあんまり寝れなかった。

枕も違えば布団も違う。

場所さえも違う。


バイトの子の実家にバイトしに来るってのも何だか不思議なんだが。

しかも住み込みだぞ。おかしい展開だとはオレも思う。

あれか。事実は小説よりも奇なり、ってやつか。

それともこれがヤマトでは普通スタイルなのか?


ヤマトの常識を知らないオレにとっては、未知だ。


それにしても、だ。

昨日やったことは黒歴史だ。

墨で真っ黒にして何があったか分かりません歴史だ。


よし、忘れようそれが一番だ、うん。


と、小さいが足音がこちらに……、過ぎ去っていく。

『イブキも結構早起きですね』

あ、おはようユーナ。そうか、イブキもか。ってオレよりも早くないか?

『おはようですマスター。禊ぎ……、というか水垢離じゃないですか? 確か聞いたことあるし』

禊ぎ? 水垢離? 残念ながらそういう知識はないので、イメージで想像してみようか。

連想キーワード。巫女、水、早朝と聞いてオレが思いついたのはただ一つ。


「つまるところ滝修行?」

『はい?』


白い着物かなんか着て、岩の上に立ってでかい滝に打たれる、あれのことじゃないの?

一説によると肩こりも治るとか何とか。

よし、ではやろうではないか! せっかくの神社のバイトだし、非日常を味わうのもいいな!

朝飯前にやあってやるぜ!


そうと決まれば、善は急げ。


布団を三つ折、押入れに片付ける。枕はその天辺に。

そして『ユナイト』の日常体操。ストレッチと簡単な運動を兼ねるため、目覚めにちょうどいい。

さあ、みんなもご一緒に。


手を太ももから大きくゆっくり伸ばして肩の位置まで伸ばしTの体勢。

そこからさらにVの体勢へ。

最後に伸ばしきった腕で、頭の上で手を合わせてIの体制。


ここで爪先立ち。

Tの体勢にゆっくり戻して、爪先立ちもゆっくり解除。

そこからさらにゆっくり最初に戻して、そこから膝の屈伸運動……って。


みんなって誰だよ!

と1人体操しながらツッコミを入れる。



1人ボケツッコミも、実は頭の体操になるんだよ!

そんなこんなで10分経過。


では空間転移。イメージとしてはちょっと失礼しますよ……って感じで。


さあ滝だ! いざ滝だ! もし想像通りの滝ならば。やりたいことがある。それはオレにとって夢。

やりたい叶えたい夢がある。それは、男ならばやりたいことかどうかは知らないがオレにとっては、夢!


それを人は男のロマン、いや、漢の浪漫と呼ぶ……のかもしれないが。

期待して、さあ行こう。


『まさかスケスケとかエッチでやらしいこと……だったら怒りますよ』

「はあ?」

思考停止して、再起動。うん。……いや、それはないだろ。そんなんだったらイブキはたちまち露出ズキーさんと勘違いされるだろうし。少なくともそんなキャラじゃない、よな?

ここらへんの治安はいいだろうけど、もしそんなんだったら変な男に絡まれたり覗きとかもありえるだろう。そんなのはないだろう。もしあれば、神社としては由々しき事態だろうし。


つまり、ありえない、と思うわけで。


『マスターのよく思ってるセリフを言わせてもらいましょうか。ありえない、なんてことは』

「……ありえないのか? いやいや洗剤化学的にはありエー○か?」

めっちゃ不安になってきた。

まあ待て落ち着けオレ。理論的に考えろ。感情に飲まれるな。

イブキだって勝手知ったる自分の修行場というか滝だろうし。神であるチハヤも近くにいるし。

一安心じゃないか! ほら不安解消。問題なんてナッシング! モーマンタイ!


ただ、ちょっと気持ちを落ち着かせるために、『ユナイト』のままで、いつでもダスクプラウザーを使えるように意識しておくのは、あれだよあれ。


心の清涼剤としてというか不安を取り除くための備えというか、うん。そう思ってる。


さあ、行こう! 焦らず急げ1000キロで!

『その時点で焦って……、いやなんでもないです』

いや、ユーナの転移座標の確認と空間跳躍のための座標位置固定まではしっかり待ったから焦ってないよ?

うん、焦ってないよ? 気にはしてるけどね!




というわけで、、その空間跳躍の向こうには。


うるさすぎる水の落下音と、目の前に瀑布。湿気酷いな! 精密機械は防水加工必須!

ちなみに「ばくふ」と聞いて、「征夷大将軍とか。もしくは鎌倉とか室町とか江戸とか」。って思った人。そっちは幕府な! 漢字が違うからな!

歴史に造詣があるのは認めよう。日本史、好きですか? って。

オレ? それなりに好きです。昔、縄文土器とか作ってました。

では、これからその作り方を紹介しましょう。まずは粘土を。


ってそうじゃなくて。

人が並んで3人くらい入りそうな滝幅に、白い和装の女性が1人。思いっきり滝修行のイメージそのまんま。ってあれはイブキか。なんとか女性とは分かるが、美女とか艶やかとかそんなんとは程遠いな。

むしろ、視界には「メインが滝! あ、下のほうに人もいるのね」程度。


そんな思考とは別に現在位置確認。

同時に、周辺に不審者および不審物のサーチ。あれば速攻デストロイ。


不審物などなし。現在位置は……神社から徒歩約30分程度って、あれ?

イブキ、まさか空間跳躍でもできるのか? チハヤの力を使ってとか?

『ユナイト体操が20分かかってますし、空間跳躍に5分程度かかりましたので』

イブキが速いだけじゃなくて、オレが遅いのもあるのか。よし、納得。

イブキに被害なし。よし、一安心。


じゃあ、何しようかな。

滝に打たれてみたいが、イブキのいるあのスペースは一人用だろうし。

仕方ない、ダスクプラウザーの素振りでもするか。

『syou-ka』

「いや、サイレントモードは継続を」

『……だすくぷらうざああ』

イブキには滝の音がうるさくて聞こえないだろうけど、一応念のため。


10分後。

「あれ、ヒロユキさん? なんでここに」

滝から出てきた、見ようによっては「井戸からのくーるー、きっとくるー」のあの怖いものに見えなくもないが、すぐにタオルで髪を拭くイブキに見つかる。

そりゃあ、水辺の端っこに、ロングソードを剣道の素振りのように振る黒いパワードスーツがいれば見つかるか。

第一、そんな奴は不審者だ。って、違う! えーと、あえて言うなら。

オレは不審者を倒すためにいる不審者? 無免許医師免許とか持ってる感じで。まあ、そんな感じだ。

よく分からなくなってきたので、この考えはやめだやめ。ダスクプラウザーはしまっておこう。


『朝からなんてハレンチな! スケスケで誘惑なんて! ユーナはそんな女じゃないもんね!』

「え? 禊は……って。ああ、この服の下は水着着てるからね! 透けるとか思ったの? ユーナ」

『ちいいっ! 小賢しいまねを!』


朝から微妙なえちいトーク止めてくれます? 止めてくれませんか?

「まあ、ユーナには分かんないかもね! ヤマトの女性は慎ましやかでかつ密やかに艶やかなの!」

『はっ! 私が体を得るなら、女性らしさ! 巨乳! そしてありとあらゆる嗜好に』

……よし、もうこうなったらこうしよう。


強制的にオレのターン! 発動! 漢字の漢と書いて、オトコの、浪漫!

『え? あ、ちょ! マスター! まだ戦いは!』

「あ、ヒロユキさん?」

滝の前に立つ。イブキの立っていた場所から少し離れる。正面に滝。

手を伸ばして、それでも届かない程度の距離。

滝飛沫が『ユナイト』にかかり視界を邪魔するが、今回必要なのは視界ではない。


手に改めて召喚したダスクプラウザーを握る。

『何をするん』


ユーナの声をオレには聞こえないように一時的にオフ。


『で――、まさか!』


「一献、一閃……、斬る!」

逆袈裟切りというよりは逆唐竹割りとでも言うのか。

いや、斬る目標が、目の前ではあるが目の前ではなく。


滝に流れる水に逆らうように、滝の最後から最初までを、昇り斬る!


滝が真ん中で二股に分かれるのを視界に納めた。

瞬時に、パン、という破裂音が滝の一番上で聞こえた。


そして、視界に広がる水飛沫。

斬った滝の分が戻ってきたのだろう、いつもの滝から落ちる水よりも多い水が、滝底を打つ。


「まずはこんなもんだけど、まだまだか」

増えた水圧に、負けることなくダスクプラウザーを手に、オレは滝のさらに向こう――天を仰いだ。


鯉は滝を昇り、龍と成る。

いわゆる登竜門の云われなのだが。

ほら、男ってそういうかっこいいのには憧れるんだよ!

ご意見ご感想、ご評価お待ちしております。


このバイト生活はヒロユキが自分を見つめなおすところもあるので、

多少表現が暗喩表現だったりと分かりにくい点が多々ございますが安心してください。


バイト生活が終わるころには、周りにまた変態たちが集まりますので(笑


ちなみにその頃のチハヤさん。


ネトゲで寝落ち中。

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