50話 36歳、期待に気合の1日終わり
本編50話。皆様のご愛読あって続けられました。ありがとうございます。
「「「「「いただきます」」」」」
丸いちゃぶ台に5人というか4人と1柱が座布団に座って食事を取る。
どこぞのバラエティの食卓みたいな感じだが、実際にやってみるといいものだ。
それに、夕飯を他の人が作ったものを頂く、ということを日本のときから通算すれば、一体どれくらい久しぶりだろうか。外食やレトルト、カップめん系統は除いてだが。
彼女いない暦=年齢としては。どうだろうか。おおよそ10年くらいになるかもしれない。
つまりは久しぶりすぎて、心の中では泣けてくる感じがする。
家庭の味って、うまいなあ。
何せ実家にはそんなに帰ってないというか。実家とあんまり折り合いはよくないから。
例え近場に寄ったとしても、スルーしてしまっていたのだ。
もし。もしもだが、日本に戻れたら、一回だけ顔を出そうとは思う。
ただ、戻った途端に無職である可能性が高いんだよな。
なんてったって長期無断欠勤だろうし。
仕方ないとは分かってる。
むしろそれでいいとも思ってる。
なぜかというと言い訳がましいが、あの職場にいても年齢的に体力・精神力が衰えてきたオレにとってはもう、やりにくくなってきていた。
そう思えば、辞めるにいい機会をくれたと思うのだ。
ありがとう、いきなりのヤマトへの転移。
っと、久しぶりの人が作った家庭料理を前に、変な考えを。
「異世界の人に味は合うかしら」
「……ん、うまいですよ。白米も肉じゃがも。鯖の塩焼きもいけます」
がっつりいきたいが、マナーがよろしくないかもしれない。
数回の咀嚼後、イブキ母に返答する。
献立は、白米に肉じゃが、ほうれん草? のおひたしに鯖の塩焼き。
なお、デザートのアイスは食後に配布予定。
本来なら、このうまさを伝説レベルの早食いと瞬時の咀嚼そしてお代わりという、うまさを行動で示す、いわば「うまいの行動三連コンボ」で示したいが、マナー違反になるので、ここは断念。
あるいは「いただ、おかわり」という瞬時お代わりという荒業もあるが、それこそマナー違反。
だが、マナーを無視してよいならば、それくらいうまいのだ。
オレが作る料理は、家庭という一個人向けの食べ物ではなく、ある程度の人間およそ8割ないしは9割に受ける食べ物の提供だから、家庭らしさはないのだ。
なお、オレの考えとしては、残りの数割については取りこぼしても問題ない客層だ。
何事も万人受けするものというのは存在しない。
接客でも医療でも食物でも乗り物でも、とにかくなんでも、だ。
そういう考えが根本にないと、その少数をも獲得しないと、と躍起になり。
結論として、全てを失う。欲に目がくらむ、という言葉通りに。
っと、つい食べ物がらみになると、今の仕事と絡ませたくなるのは悪い癖だな。
純粋にうまいものは、うまい。
今日は、それを楽しもう。感じよう。
「ヒロユキくんは酒はいけるのかい?」
「飲んだら吐いて寝るタイプの下戸なのでご勘弁を」
「なら、ぼくと同じだねぇ。お酒を飲むのはチハヤ様くらいだけど」
対面に座っていたイブキ父が、ちらりと隣にいるイブキ母のさらに隣にいるチハヤを見る。
「なんじゃシュウイチよ。わしの酒癖はいいほうじゃろ」
「……絡みと笑いと泣きと変ないびきなどの悪酔いがなければいい酒癖ですよチハヤ様は。しかも弱いのに」
「いや、それとてつもなく悪い酒癖」
さらりと文句言ったなイブキ父。一応突っ込みを入れておくが、チハヤよ。
酒はほどほど、な。どこぞの偉い召喚学者先生も仰っている事をあえて思う。
何事も、過ぎたるは及ばざるが如し。
日本の神の場合、祭りと酒はどんちゃん騒ぎするくらい大好きという一説がどこかにあるが、どうやらチハヤは祭り好きだが、酒は好きだが悪い騒ぎしか起こさないってところか。
イブキ母もイブキも酒は無理、ってことか。
喫茶店のメニューには酒類は使ってないが、気に留めておこう。
もし、使うとしてもせいぜい香り付け程度、かな。
ラムレーズンのアイスとかは……、それくらいはお許しください。
店が喫茶店である以上、ある程度の客層向けは用意しないといけないのです。
うちのような喫茶店は、朝・昼・おやつから弊店までの3時間帯でメニューが微妙に異なるのだから。
普通の喫茶店ではできないだろうが、ヒロシ・アヤ、そして『ユナイト』がいれば、そんなのは無茶ではなく。
むしろ余裕でお釣りがダンボールにのし付けて返ってくるくらい。
とまあ、店自慢も置いといて。
「はっ! 酒は心の膿を吐かせるための薬じゃから仕方あるまい!」
「あ、そういえばデザートなんですが。オレから店の新商品でバニラプリンアイスって言うのを作ったんですが……。チハヤ、お前は酒があるからいらないよな?」
今朝、厨房で最後の掃除ついでに作っていたものだが、今のところ『ユナイト』の収納空間に空間時間凍結状態で保存中。
トイレに行ってから、サプライズで出そうと思ったが。
「……みんなの迷惑になる酒はよくないからのぅ! ピロユキ殿、わしにも!」
「はいよ……ちょいと持ってくるから待っててな」
悪酒飲みを止めるにはいい方法だ。
ごちそうさまでした、と箸を置いて。茶碗やお椀を流し台へ。
お客さんにそんなこと、とイブキに言われたが、住み込みバイトなのでそれくらいは、と返した。
雇い主の娘さんに気を使われる身分ではないんだ、オレは。
気を使われる年齢かもしれないが……、いや、年齢は無視しよう。
と、外へ出る。
『ではでは……夜のお仕事行きましょ!』
空には星があれど、月がなく。新月か。
そうか。今日は、仕事をするにはいい夜だ……って違う!
デザートを取り出して戻ろうとしてただけじゃないか。
『えー! 近くの街中で古めの暴走族がパラリラーってうるさいって苦情を!』
そんなの警察や特務のリア充にやらせとけ。まさかだが、組織の奴じゃないだろ?
『まあ、そうなんですけどね。いやだぅて暇で暇で』
ほほう。オレの『ユナイト』強化案はもう全部出来たのかな?
『舐めないでくださいよマスター! あれくらい……情報があればできるんですよ! そう! 情報が!』
熱弁すばらしいが、つまるところこういう意味だろ?
情報がないので、できません。なので暇状態ですが、何か?
『マスター……ツーカーの間柄って夫婦っぽいですよね? むしろ夫婦ですよね! わーい』
よし、いい喧嘩の売り方だ。しばらくユナイドライバーはイブキに預けよう。どうせ活躍しないし。 何かあったらイブキに頼れ。オレはバイトるから。
おっ。適当に思ったけど、これ、よくないか?
『え゛え゛え゛……。頑張るのでおそばにおいてください』
じゃあ、これからも。
あ そ ば ず に よ ろ し く な !
「ヒロユキさーん! デザート食べますよー!」
「ああ! 待ってろ!」
家の中のイブキの大きな声に、負けじと声を張る。、
星明りから、家の明かりの中へ戻る。その片手に、少し大きめのケーキを入れるような洒落た箱。
家の中で待つ家族に、サプライズを。
なんて。まるでそれは、赤い不法侵入者じゃなくてサンタクロースみたいだな。
という微妙なことが浮かびながらも。
オレの足取りを軽くするのは、こんな感じのフレーズだ。
桜丘家に入ったオレを待ち受けるバイトとは!
そして祭りの準備とは何なのか!
押し寄せる変態のいない普通の日々!
戦いなんて蚊帳の外! ああすばらしき一般人!
乞うご期待!
だれが期待してるかって、オレだけがかなり期待してる! 何これ! この胸アツ展開!
特に後半2行! 最高じゃないか! さいっこうっ! マックスにイケてる!
特務でリア充のマックスは、この1週間にはいらないけどな! 組織の奴らも不要だぞ!
あー! 1週間楽しみだー!
ご意見ご感想、ご評価お待ちしております。
50話にようやく到達しました。
実のところ、まだ、話としてはどれだけだろう……。
このバイト編→とある少女と邂逅→オペレーションコメット→フェイクスタイル&モード
→これぞマックス大変身(ぇ →第三の選択肢にきみを→元気兄貴無敵→ダブルエックス→何でオレが
というオーソドックスにあらすじ立てるとこんな感じですね。
多分どこかでずれが生じるかもしれませんが、お許しください。と先に謝罪しておく。よし完璧。(ぇ
……そういえば、作者にしか分からない開発コードでのあらすじになってますね。
まあ、これで100話は超えてしまう予定です。当初は100話ピッタシに終わって、今の仮面ライダーより早く終わらせてやるんだーと思ってましたが。
というわけで、まだまだ長いこの話ですが、お付き合いいただけれると幸いです。
あ、閑話を入れると150になっても仕方ないのか(滝汗




