閑話 神様を追いかけてたら、え?
イブキの話です。イブキの神社は、隠れ人気なんですが……、メジャーじゃないので参拝者なんて、あまり来ません、という設定にしてあります。
わたしは桜丘イブキ。
大学生。神道を学び、実家で巫女してます。
実家は神社なので、勉強にもなります。
ちなみに由緒ある神社、ってほどでもないです。
わたしの家はそんなところ。
お父さんが禰宜、いわゆる神主さんでお母さんもそう。
ちなみに女系家族で、お父さんは入り婿。
あと、お姉ちゃんもいるけど、外で修行中。
で、わたしは、本当は神道は勉強したくない。
だって、修行が多いんだよ?
仕事も朝早いのは日常茶飯事。
夜遅いこともある。というか、たまにやるけど朝の滝修行とか寒いんだよ?
それよりも。普通に生活して、普通に結婚して、普通におばあちゃんになって。
って、そういう風に生きていきたい。
だから、継ぐ気なんてない。お姉ちゃんに任せたいけど、お姉ちゃんはわたし以上に率先して逃げるタイプ。
そもそもだ。
わたしの家は神様がみえる血統だ、というと凄いように思えるけど。
神様のほうが、姿を現して外というか町によく出て行くから、むしろ誰でも見れると思う。
その神様の名前。ソハチハヤノミコト、っていう神様なんだけど。
結構、何と言うか、威厳はあんまりなくて、俗。
神様らしくない。お酒が大好きでテレビも大好き。寝ることも好きで、
たまにというかよく外に出ては、ウインドウショッピングする。
見た目は、わたしと同じくらいの20代で、並ぶとわたしが妹とよく言われる。
清楚系スレンダー美女なんだけど、言葉遣いや行動が、雑。
髪も長いのにボサついてない。女のわたしが羨むくらい綺麗な黒髪ロング。
桜色の着物が普段着なんだけど、違和感がない。容姿が栄える。
身長もそれなりにあるから、モデルさんでもやっていいんじゃない? って思うけど。
黙っていれば、問題はない。そして、へんな行動さえしなければ、だけど。
本人というか本神というか。
「やー、ゴロゴロするとか、たまに人のお願いを聞いて叶えられるようにちょちょいとするのが、またこれがいいんじゃよ。おおっとレアアイテムゲット! っしゃあ!」
……テレビゲーム? パソコンだから違うかな? もする。
こんな神様だけど。
一応、恋愛成就とか大願成就とかの神様でもある。あと、ものを大切にする神様、のはず。
「え? でも、ほら願いは結局自分で叶えてなんぼじゃない? 手伝いはするけどさあー」
神様ぁ……。異世界人が横行しているのに、そういうところは何もしないんですか?
って聞いてみたら、この返答。神様には言って欲しくないセリフ。
あと、お願いだから、箸でポテチを食べながら、パソコンを……、あ、ネットゲームというやつですか?
それはやめてください。神様として。人に見られたら、神の威厳がもうゼロに。
「まあ、待て待てイブキち」
「もう、いつも思うんですけどなんでイブキちなんですか」
子供のときから、チハヤ様はわたしをイブキちと呼ぶことがある。
特に、内緒話とかわたしと楽しい話をするときは、そう呼ばれる。
まあ……、わたしも悪い気はしないけど。でも、子ども扱いされてるかも。
「お前さんが一番、わしに近いんじゃよ。血筋的にというか力がというか何というか」
「はいはい。それも何度も聞きましたよー」
わたしが家族の中で一番チハヤ様に近い力を持っている、とはチハヤ様の話。
実際、どんな力で、どんなことができるかなんて知らないけど。
あ、チハヤ様がどこにいるかみたいなものは、集中すれば感じられるけど。
お父さんもお母さんも、そんな力持ってないし。
お姉ちゃんは……、あんまり聞いたことないな。遠くの神社で修行中だけど。
電話で聞いたときは、「社務所でお守り作りの内職一週間フルコース。もうめんどい」って。
性格ならチハヤ様とそっくりだから。
容姿についてはお姉ちゃんは……、うん。神社にいない美人系、と。
「ここ最近、やっぱダントツで一位のお願いは、異世界人の暴れっぷり勘弁、じゃな」
「なんであんなに暴れてるんでしょうね? ヤマトだけですよ、あの人たちが暴れるの。ついさっきまで、近くで暴れてたみたいですし」
そういえば。異世界人は海外では暴れてないのだ。あくまでニュースでの情報だけど。
いや、暴れても海外では異世界人とは分からないのかもしれない。
なにせ、見た目とか言葉はヤマトと同じだから。
なんとも困った話なんだけど。
「ま、そろそろわしも動くとするか。お願い事を叶える神様として、の」
「せめてこちらの仕事を終わらせてからにしてくださいね?」
掃除。お守り作り。整頓。まだまだたくさんやれてないことはある。
神様だって自分の住まい、というか、チハヤ様の部屋はあるけどこちらはノータッチ。
神社の方の、いわゆる住まう場所というところの掃除。
うちは神様がいるので働いてもらいます。手伝いはしますけど。
猫の手も借りたいくらいなので、神様の手なんて普通に借りちゃいます。
自分のことは自分でしましょう。お小遣いももらえてるんだから。
というのがうちの方針なのです。
それを学校で言うと、とんでもない事態に発展しそうなので言いません。
色々思うことはあるけど。……神道、きらい。
「むぅ……。おおっと! そういえば、先ほどお昼時に暴れておった異世界人の残党らしき感覚をキャーッチ! 神として願われた以上、逃がすわけにはいかーん! な・の・で!」
「あ! チハヤ様!」
しまった! 気をそらしてしまった! いつもより速い!?
「倒しに行ってくるのじゃよ! チャオ!」
……逃げられたーっ! しかもチャオ、って何なんですかー!
ああ、もう! なんで面倒なことに! 毎度毎度なんで逃げるんですかっ!
はあ、……お父さんとお母さんに何て言おう。
いや、まあ、もう分かってるんだけど。
追いかけなさい。100%。うん。言われるまでもないけど。
仕方ないか。意識を集中……。チハヤ様感知……っと。
よし。あんまり遠くにはいないみたいだから、追いかけよう。
家を出る。神社の境内に出る。社務所かそれか境内のどこか。
とにかくお父さんかお母さんのどちらかはいるはず。外に行く連絡はしなきゃ。
あ、いた。社務所で店番。帳面でもつけてるのかな?
「お母さん! チハヤ様が逃げたから行ってきます!」
「はーい。ってイブキ、服そのままでいいの?」
ん? ああ、巫女服のままってこと?
着替えて行く、となると、どこに逃げるかたまったものじゃない。
前は、隣の市の商店街にある甘味処で油売ってたし! 支払いはわたし持ちで!
時間はかけるものじゃない! というのが経験則にある。
「すぐ捕まえるからいいかなって」
「……うん。いいけど、あら。……お会いする方には粗相はいけないわよ」
え? 何を感じ取ったの? お母さん。
この神社のすごいところ、その1。おみくじがめちゃくちゃ当たる。
何せ、うちのお母さんが全部手作り。
おぼろげながらではあるが、未来予知と危険察知ができるのだ。あやふやだけど。
でも、宝くじとかは無理だって。興味ないって言った。
「チハヤ様を大切にしていただける方なのだから、……あら?」
「え? まだ何か、……あるの?」
「いーえ? 道中、変な輩にからまれないようにいってらっしゃい。お父さんには伝えておきますから」
「はーい! いってきまーす!」
鳥居を抜けて、長い緩やかな砂利道、参道を一気に下る。
「さて、色々あるけど、どう伝えようかしら……。まずはお父さん、怒るかしら? それとも……。ああいけないニヤニヤが。私の予想が確かならば……ああニヤニヤが止まらないわ」
だから、よく分からない笑顔のお母さんの声が届くはずはないのだ。
そして、わたしは。
あの人に会うのだ。
強くも優しくもあるが、それ以上に、異世界人。
黒川、ヒロユキ。
20代後半に見える、36歳の、妙に喫茶店のエプロンが似合う男性。
実は、彼のおかげで神道というか、巫女もまあ、悪くないなーって思えたくらい。
何でって? それはまた、別の機会に思うことにしよう。
つまりは、だ。
逃げた神様をいつもどおり追いかけた、あの日の昼下がり。
日常が何よりも好きで。
戦うのが嫌いな、変なヒーローにわたしは、出会った。
わたしの、好きな、ヒーローに。
ちなみに余談だけど。本当にどうでもいいことかもしれないけれど。
チハヤ様が掃除していたのは、驚いた。
ご意見ご感想、ご評価などお待ちしています。
ユーナと比べて、イブキは少し猫かぶってます。
だから、書きづらいところがありました。
そして、姉がいる設定ですが、特に意味なんてないです。
むしろ母親のほうの設定が……(汗
さあ、次の日も連続投稿しますが、
我々は、深淵を見る。
その名は白衣w




