26話 神と巫女と、喫茶店の料理人
AIのいないヒロユキの、真の力がここに(違
「花の『桜』に、山よりは低い高さの『丘』、名前はひらがななんですが……。桜丘イブキと申します。このたびは、チハヤ様が大変ご迷惑を」
カウンターテーブルに掛けた巫女が、会釈する。
「いや待つがいいわしは参拝するものたちの思いを叶えるべく異世界人をだな」
巫女の隣に座った神が、「迷惑」と言う部分に過剰に、早口で反応しているが--。
「チハヤ様は、だ ま っ て く だ さ い ね !」
「おおぅ……」
神が圧倒されている。
めちゃ強いあの神を、言葉だけでとは。
さすがは、巫女か。あの威圧感は、見た目の年齢では出せないと思う。
「? 何か失礼なことを」
「いや、失礼した。神と人という間にしては仲がいいな、と」
くっ。さすがは巫女か。こちらの意図にも感づくだと。
ええい、ヤマトの巫女はニュータ○プとでもいうのか。
「あー、そうですね。普段は駄目ですけど。いざって時には、頼れるお姉さんみたいな感じです」
照れる笑顔。
そして、言葉にはやさしさと誇りを感じる。
「……いい、家族だな」
特に、考えることもなく、感じた言葉を出す。
「……ヒロユキ殿のそういうところは凄いと思うぞ」
「何だか、うれしくなります」
何故に二人とも照れる? 顔が赤いぞ。
どう見てもいい家族だろう。
姉と妹。神と人とか関係ない。
そこには見えないけど、確かに思いやる気持ち。
つながっている絆を感じる。
オレの家族とは大違いだ。
っと、いやなものを思い出すところだった。
せっかく掃除を中断して、いい家族というか姉妹を見ているというのに。
くだらないものを思い出して、不愉快になる必要はない。
「あ、っと。そうでした。チハヤ様がとんでもなく迷惑をかけたと思うのですが……えーと」
「そういえば自己紹介してなかったか。オレは黒川。白黒の『黒』に簡単な山川の『川』で、博士の『博』に、これって書く……『之』って言う字だな。ここの喫茶店で料理担当だ」
「え? ここの店員さんなんですか?」
そういえば、自己紹介してなかったオレ。
しかし、巫女もといイブキが「あれ?」という感じに首をかしげた。
「わたし、ここの喫茶店、たまに来るんですけど……。料理作ってる人って、黒人さんですよね?」
「へ?」
気の抜けた声が、オレから漏れた。何故に黒人か?
「いえ……。黒川さんに声は似てますが、うっすらとかちらっと見えた腕とかは真っ黒でしたし」
『ユナイト』のスーツの色ですよ! 地肌じゃないですよ!
天然か? ボケ巫女なのか?
いや待て待て。正体はばれてないということだ。少なくともイブキには、だが。
「面白いのぅ! イブきちよ。ヒロユキ殿は、普段は正体を隠すために黒いスーツを着用しているのだ! それを黒人とは……プププ」
……。
あっさりバラしやがったーーーーーー!!!!!!!!!!!
駄目神どころかバ神じゃねーか!
「なあっ!!! わ、わたし……。す、すみません黒川さん」
赤面後、頭を下げるイブキ。頭が上下に高速移動して、髪がばっさばっさと揺れる。
が、そんなことはいい。
可愛いが、そんなことはどうでもいいのだ。
「チハヤ……。人の秘密はバラしちゃいけない、……バラしちゃあ、いけないよ」
「ひ、ヒロユキ殿? さっきの戦闘のときより怖いのだが」
そりゃあ、殺気が出る笑顔だからな。満面の笑みだ。
人を殺す、笑みでもあるな。
「……今後は誰にも言わないように。破ったら」
「えーと。破ったら?」
恐る恐るペナルティを聞いてくるが、チハヤよ。守る気持ちはないのか?
ならばこそ。
「『シュッティ・ノーヴァ』連発」
「委細承知。わしは口が堅い! うむ!」
青い顔をしながら胸を張る神。
そりゃあ、消滅させられる技を喰らうなら、生きるほうを選ぶだろうな。
ただ、残念ながら、『シュッティ・ノーヴァ』や『ヴィラ・コンテ』について。
本当に今後も使えるかどうかは不明なのだ。
AIも原因不明、と言い切ったし。
オレのスキルと言ったが、果たして本当に「対神」スキルなのかも不明。
「だから、あの神聖語の力だけは何卒……」
「……え? 神聖語って」
「申請後?」
チハヤが言ったシンセイゴ、って何?
オレは何もまだ申請してないんだが。
分からん。さっぱりだ。
「チハヤ様……、まさか黒川さんが神聖語を」
「間違いないのう。イブキや今までのどの者たちよりも、いや、比べ物にはならんくらい、強い」
えーと。何?
二人とも何がそんなにシリアスなの?
あ、客人にお茶も出してないな、オレ。
よし、とりあえず、お茶菓子は……。たしか、冷蔵庫に。
「そこまで、ですか」
「うむ。本来ならば神と対話するためのものなのじゃが、ヒロユキ殿は『神使い』つまり従えることも可能じゃろうな……。それ以上もできそうな気がするが」
うーん。カウンターではシリアスが続いているが。
オレは、冷蔵庫の大福(つぶあん 店に出す前の試作品)を2つ取り出して、給湯器から急須にお湯を注ぐ。
急須は、事前に暖めてあり、お茶の葉も温度湿度ともに悪くないコンディション、だと思うが。
何せ、神と巫女に出すお茶と大福だぞ。
本物の和風、いや「和」そのものに真っ向から勝負を挑む、ただの喫茶店。
やばい、逃げたほうがよかったか?
こっちもそれなりにシリアス。
「うちの家族が、スカウトどころか拉致しそうですね」
「む……。確かにやりかねんな。わしもあの人となりは好みのタイプ」
「ちょっ! チハヤ様!」
ふふふ。
この全自動給湯器、『最適温度君ユナイトカスタム』ならば! というかAIが改良したんだが。
とにかく、茶葉のコンディションに合わせて、適切な温度を選択。
また水のミネラル分などを考慮して、沸かし方も千差万別。
それ以外にも数々の便利機能搭載。
あなたのお店に一台! って言ってもいいんじゃないほどのオーバーカスタム品。
「いや、だって……ねえ。本気のわしと対等に戦うだけでもポイントなのに」
「ちょっ! え! 黒川さんが?」
「仲間を傷つける、って言葉でわしが言ったら、途端の燃え様! あれは敵のときでも目を見張った!」
「……悪役じゃないですか」
急須に湯を入れ、茶葉を蒸らす。
よし、焦るな。焦るなオレ。
焦ったら負けだ。
だが、のんびりはできない。
客は待ってくれない。
最高の味を、最適な温度で、スピーディに!
大福も、電子レンジもとい、『全ての食材のうまみにクリティカル』レンジに入れてある。
こちらと同時に、出来上がる寸法だ。
AIがいなくても、オレは。
いや、オレならば、やれる!
ご意見ご感想、ご評価お待ちしております。
ヒロイン紹介が……この1話で終わるはずが!
さすがにヒロイン。1話では終わらせてくれない、のか。
え? ヒロシ?
この時間だとまだ、研究室ですねー(酷




