25話 神がいるなら、巫女もいる
これ以上なく、濃密な一日だった。
ってまだ終わってない。まだ夕方だ。
何せ連続で戦闘したっていうのが、心身ともに堪えた。
まずは戦術面での苦労。
スタイルチェンジの『ガンナー』自体、訓練に訓練を重ねた『スラッシャー』と比較すると、全く使いこなせてない。そもそも行き当たりばったりで、よく使えたな、と自画自賛。
それに、『デュエルバスター』。
あんまり使う機会ないよな。超長距離攻撃、狙撃くらいなもので。
ヒロシとアヤに、何で作ったのか聞きたいくらい。
神のときについては、あれは……やけくそだな。使うものは何でも使う、って感じ。
課題は、中・近距離用の攻撃武装を作ることになると思う。
だが、全てに対してオーソドックスに行かない気がするから注意しよう。
もちろん、ヒロシとアヤに。
大鑑巨砲主義を掲げていそうな気がするんだよな。
というのが、午前中についての反省。
午後については、そりゃあ、多い。
というか思い出すと恥ずかしい。
誰だよ、仲間を守るとか、それくらいの理由で戦うには十分、みたいなセリフを言ったのは。
オレなんだが、駄目だ。あれはオレじゃない。中二病だ。
あれは空気感染だから……、よし、そうだ病気だったんだ。
「おーい。ヒロユキ殿よ」
「……掃除の手が止まってるぞ、神様」
「いや、わしはチハヤでよい、と……ではなく」
ソハチハヤノミコト。
桜色の着物の女神。
願い事を叶える神にして、有機物無機物など、いわゆるものを愛する神。
と、復活させてから自己紹介されたが。
ほうきでごみを集めるどころか、どこかへ散らす。
テーブルを吹けばベタベタ。
さすがに外の掃除を容姿的にもやらせるわけにはいかず。
今は床拭きだが、濡れモップなど持たせてはいけない。
テーブルの二の舞になる。
ということで、乾いたモップで拭かせている。
今のところ、器物損壊もなく順調だが……。
アヤの場合、転んで、テーブルと椅子が大惨事! ってのがあったな。
神がアヤレベルのドジではないことを、祈ろう。
「他の者達への紹介はいいのか?」
「仕事が終わってからでいい。それに、あいつらになんて説明すればいいか」
説明しないといけないことは多い。
神と戦いました。
勝ちました。
仕事させてます。
『ユナイト』破損しました。
AIが今、別空間にて応急補修中。
午後7時くらいに戻ってくるので、直してください。
オレのスキル分かりました。
多分、『対神』にて発揮できるスキル、かな? と思います。
以上が、大きな項目で、細かいのを挙げればきりがない。
変な説明文つけるな、とか。
まともな武器が欲しいとか。
これをどう説明しようか。
オレ:実は、かくかくしかじかで。
ヒロシ:おお、まるまるうまうまというわけだな!
そんな便利な言葉があれば、全部解決だな!
とにかく、『ユナイト』がないので、オレは普段着で仕事をしている。
だから、仕事が遅々として進まない。戦闘による疲労というのもあるんだろう。
さらに神、いやチハヤが色々聞いてくるので、仕事が遅くなる。
美人に聞かれて、悪くはない……と思ったか? オレに関しては、いやなものはいやだ。
だがそういう意味ではない。
チハヤは、アヤよりは仕事の飲み込みは早い。あくまで掃除の単調作業の範囲ではあるが。
こっちも聞くと、しっかりまともに反応する。訳の分からない反応は、今のところない。
反応に関して、まともに、っていうのが、なんか。なんというか。
すごく、ありがたいと思うのだ。
久しぶりにまともに人と話した感じがする。
言葉は雑だが。
そして人ではなく神だが。
それに、きちんと話すと、理解もする。
特にオレが、異世界人、というか日本人と戦っている、というか悪い行いを止めていることを説明すると、最初は疑っていたが、そこは神様。
話の合間に調べたらしく、自転車爆破のことについて話していると。
「あれはお主か! よくやった! いやー、あそこの東口からすぐの甘味処が大好きでなー? あの日も食べに行ったんじゃが、なんと封鎖してて! あれはこの世の絶望が来たかと思ったぞ!」
……外に出ている神って、どうなんだ? この世の絶望は甘味処に行けるかどうかが決めるのか?
いや、突っ込みどころが多すぎて、流したほうがいいな。
とにかく、とてつもなく感謝された。
挙句の果てには。
「よし! 主はわしの同胞として、今度の大神会議にて主神どもに報告し、第一級……、いわば神の代行役として認定させよう! そうしよう! まあ、半分くらい人間ではなくなるが、わしと結婚することになるからいっか」
返事? やったら、消す。で終了。
諦めんぞ! とか言っていたが、残念ながら36になると、精神的に落ち着けるようで。
特に結婚については20歳くらいだったら、二つ返事だったかもな。
そういうやり取りを含め、オレがコミュニケーションに感動しているから、遅いのだ。
悪いのはオレだが、ヒロシとアヤがもう少しまともならば。
ないものねだりとは分かっていても、つい。
「む……。ヒロユキ殿よ。まずい気配だ……、この速度は」
なんだよ……。もう、敵とは戦えないぞ?
『ユナイト』のないオレは、36歳の事務職、じゃなくて喫茶店の店員だ。
「いや、まずい……。いつもの3倍の速度じゃと!?」
神であるチハヤに、まずいとまで言わせ、ガクブルさせる存在か。
……おい、待て。速度からして、もしやどこぞのシャ○大佐か? サイン貰いたいな。
「えーっと、ここだよね」
喫茶店のドアつきの来客のベルが鳴り響く。
聞こえた女性の声は、どこかチハヤによく似て。
「ごめんくださーい」
少なくとも、礼儀正しい。
『閉店中』の看板を見たうえで、開けているのだから。
少なくとも、こっそりと店の一番奥のテーブルの下にガクブルしている神と比べても、礼儀はある。
「いらっしゃい、ってまだ店……、ああ」
見てすぐに分かった。間違いなく、チハヤの知り合いというか関係者。
美人というか美少女と言うかその中間だ。
20代前半だろうが、10代後半でもいける童顔。
スレンダーだが、出るところはそれなりに出ている、と思う。
黒髪は肩より少し長めにストレート。
チハヤによく似た、だがかわいい系の美人だ……が。
「チハヤ、巫女さんがお迎えに来たぞ」
巫女服。
白と赤の、あの着物だ。
顔とか問題なく、神の関係者だろう。
「キター、じゃなくてわしはここにはおらんぞ!」
「チハヤ様! 何してるんですか!」
掃除させてるんだが、神に掃除はさすがにまずいかな……。
目の前でまるで妹が姉に説教しているような、そんな場面を見て。
オレは、神が掃除をするための言い訳を考えることにした。
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ようやく、ヒロイン登場。
名前が出てないけど、それは次回。
そして、久しぶりに白衣の変態が復活(ぉぃ




